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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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終焉の地の先にある世界へ進むために


 今度こそ全てを出し切った――。

 息が苦しい――。

 ぼんやりとする意識の中、蓮見が思う。


「はぁ、はぁ、はぁ、……」


 心臓の鼓動がいつもより速い。

 身体中を駆け巡る血がいつもより熱い。

 まるで血が訴えかけてくるような感覚。


 ”俺は生きているぞ” と。


 そんな風に感じられるのは、過去の自分を超え今できる正真正銘の全力を出し切ったからだろう。


「終わったのか……俺は……勝ったのか? それとも負けたのか?」


 答えは返ってこない。

 ゴッドフェニックスの姿で力を使い果たした蓮見は人間の姿に戻っていた。

 大爆発が起きたために荒れ狂う水に身を任せていた蓮見がぼんやりと意識を取り戻し目を開ける。


「…………あぁ」


 SF映画で見かける世界感のような空にただ納得する蓮見。

 噴火の影響で太陽の陽が閉ざされた薄暗い世界はどこまでも続いている。

 それは今回の超新星爆発の規模がそれだけ大きかったこと証明しているとも言える。

 視線を周りに飛ばすも誰もいない。

 だけど身体は重いし痛い。

 HPゲージは一。

 蓮見はゴッドフェニックスの効果でHPゲージを満タンまで回復していた為に不屈者の効果で運よく生還した。と自己解釈した。

 それと今の実力では制御が効かないぐらいに究極全力シリーズは強力かつ使えばたった一回の攻撃で戦況を大きく変えてしまう程の絶対の力を持っていることがわかり「あはは……これは想像以上だ……」と小さく笑って喜ぶ。

 それに反応してか心臓の鼓動が強くなった。


「ふふふっ、あはは~、全てを出し切ったとは言え……これで俺の優勝間違いなしだろう、たぶん……な」


 周りに誰もいないことから全てのプレイヤーを倒したと思う蓮見。

 可能性の問題として多少の懸念はあるが。

 仮に世界が悲鳴をあげるレベルの攻撃を受けて生きているプレイヤーがいたとしたら最早それは人間ではない。

 人間でありながら人間を止めた者しかいない。

 なぜならスキルは全て発動しなかったからだ。

 自動発動スキルだけは処理の都合上発動した。

 本当に俺は運が良いと心の中で勝利の美酒に酔う蓮見は普段なら気付いているはずの《《違和感》》にまだ気付かない。


「いてて、お兄ちゃん……大丈夫?」


 一瞬ゾッとし血の気が一気に引いた蓮見。

 まさかあの爆発の中生きているプレイヤーがいるのかと思ったからだ。

 だけど声から敵ではなくメールだとすぐにわかった蓮見は心の中で安堵する。


「あぁ……なんとかな。てかよく生きてたな」


「うん、なんとかね。一応ダメージ処理が終わるまではお兄ちゃんと一緒だったからお兄ちゃんが死なない限りは私も死なないの」


 こちらもかなり消耗しているのか疲労困憊の姿でメールが蓮見の元にやって来ては身体をくっつけて離れ離れにならないようにする。

 幾ら海の女王とは言え疲弊した身体でこの荒ぶる水の中を泳ぐのは一苦労するためである。


「そうか……」


 これを遠くから観察していた|腕に自身のあるプレイヤー《参加者》たちの多くは巻き沿いこそ喰らわなかったがほぼ全員が戦意喪失をしたことは最早言うまでもない。

 今までとは全てが違うからだ。

【神紅の神炎者】となった男に生半可な戦力と戦略を武器にして手を出せばどうなるかを三強ギルドが教えてくれたからだ。

 絶対の破壊こそが正義と名乗っても可笑しくない男が作りだした光景はきっと――。


「――今度こそ見えたわね。ダーリンの本気と底が」


 全身を襲う痛みに耐え、気合いで立ち上がり水中から脱出した女が小さい声で呟いた。

 ずっと見たかった限界点。

 娘たちを預けて大丈夫か?

 預けた先に娘たちの未来はあるのか?

 そのほか多数の疑問が一気に解決した最強プロは蓮見と同じくHPゲージを一にして死の果てを乗り越えて有り余る殺気を纏い復活する。

 蓮見の究極全力シリーズを受けても死なない切り札――すなわち蓮見と同じスキルを使い耐えた女は「これ以上は一緒にいても意味がないわね。底が見えた以上対策は容易だし」と今までの態度とは打って変わって呆れた声を出した。

 

 底が見えてしまえば後は――倒せる。

 やはり【神紅の神炎者】たる異名を持ってしてもプロ相手には攻略されるのは時間の問題だったと言うわけだ。

 そしてなにもそれはプロだけに限らない。

 ずっと蓮見を観察しどうやったら攻略できるかどうやったら最後まで隣に立っていられるかを考えていた者たちは蓮見と同じ力もしくは類似した力を手に入れることでやはり対抗策をしっかりと持っていた。

 神災と呼ばれる事象が今まで刻んできた歴史は過去の産物と化す。


「あー、死ぬかと思った」


 朱音に続き黒煙の中からゲホッ、ゲホッ、と咳をしながら天高く吹き飛ばれた美紀が戦場の空まで高度を落としてやってくる。


「残念だ。一発芸は今の俺に効かない」


「危なかった。念の為に手に入れていた不屈者が役に立つとはな」


「同感だ」


 続いてルフランとソフィとリューク。


「お姉ちゃん大丈夫?」


「なんとかね。ルナは?」


「私もなんとね」


 美紀と同じく咄嗟の判断で空に避難し吹き飛ばれた七瀬と瑠香も戻ってくる。

 どうやらトッププレイヤーたちはこの状況を既に予想していたらしい。

 いつも自分たちの一手先を行く蓮見のさらに一手先までを読み切りここまで隠していた者たちの入念の準備が実を結び蓮見が突き付けた死を否定し生を掴むことに成功させた。


「悪いがこれで終わりだな」


 剣先を向けフラフラの状態でやって来たから蓮見を護るようにしてメールが身体を被せる。


「さ、させない」


「悪いがお前ごと串刺しにさせてもらう」


 その言葉にこれで蓮見が二度目の死を迎えると確信する者たち。

 そんな者たちに向けて知ってか知らずか「(ん? 《《まさか》》?)そうか。それならちょうどいい」と言葉が漏れる蓮見。


 ――。


 ――――。



 そして不敵に笑う。


「あぁ~知ってたよ。もしかしたら俺の秘策を超えてくる可能性に。だから最近の俺様はエリカさんのご指導と助言を元に新技を考案し連鎖を常に意識していたんだが、俺ですらその連鎖からは逃れられないと諦めてしまう状況をあんたたちならどう対処し何回対処できるか……この後復活したらエリカさんと一緒に見せてもらうぜ?」


 第二波とも呼べる目に見えない刃が――今向けられる。

 蓮見に失望した者。

 止めを刺そうとしたギルド長とそれを見守るギルド長二名。

 静観しながらも心の中であの三人相手によく頑張ったねと心の中で褒める幼馴染と姉妹。

 蓮見はここまで、と勘違いした者たちだ。


 平等に向けられた刃は当然蓮見とメールも対象となる。


 ドドドドドドドドドッ。


 大地を揺らし、何処からともなく聞こえてくる不吉な音。

 絶対に忘れてはいけないことがこの世界には二つある。

 一つ、神災とはなんなのか?

 一つ、その由来はなんなのか?

 生を諦めきれないプレイヤーたちの生存本能が大音量で警告する。


 ―― ”死ぬぞ?” と。


 同時刻、生を諦めきれない神たちの生存本能も大音量で警告する。


 ―― ”落ちるぞ?” と。


 死は報いか?


 死は救いか?


 さぁ、始めようか――神災の副産物

DEAD OR ALIVE 。



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