アイツが再びラスボスとなるらしい
「こんなチャンスめったにないんだ! この際小さくても全然構わないぜ!」
周りが聞いたら「はっ? なにが!?」と言いたくなるだろう。
ただし、場面が場面だけに誰もそんなことは思わない。
そうだ。
この男が次に何をしてくるか。
皆がそれが一番知りたいのだ。
それは過去を見返せば当然とも言えよう。
「今回ばかりは致し方無い。手を組むか?」
ルフランの案に少し間を開けて答える二人がいた。
今の三人は全身に鳥肌が立っている。
全身が燃えている神災狐という未知の生き物に本能が危険を察してのこと。
それともう一つ。
想像を軽く超えてくる相手に闘争心が高鳴ってのこと。
だけどギルド長として闘争心はともかくうろたえるなどあってはならず各々が平然を装っている。
「私はどちらでも構わないが?」
「……いいだろう、ルフラン貴様の案に乗ってやる。貴様も感じているだろう?」
「あぁ、あるだろうな。あの感じ。大体俺たちにとって意味不明なことを言い出した時はあるからな」
「だな」
「そういうことなら手を貸してやる」
蓮見の脅威が三人に伝播したのか、三人は躊躇なく手を組むことにする。
三強ギルド長が手を組んだことでギルド長に続き副ギルド長も手を手を組み始める。それは【深紅の美ギルド】にとっては苦しい展開へとなっていく。
正式に手を組んできた敵に美紀が追い込まれていく。
さらにギルドメンバーも……。
と、観客たちが思ったその時だった。
間欠泉が黄泉の国と現世を繋ぐゲートの役目を果たして、骸骨兵が三強ギルドメンバー全員に襲い掛かり始めた。
その数……すぐに百を超える。
「はあああああ!? またぁアイツとんでもないもん隠し持ってるじゃん!!! もういい! 心配するだけ無駄だったじゃん! 毎回毎回仲間の時は切り札あるなら言えって言ってるじゃないもおおお!!!」
程よく集中していた美紀の集中力を乱すほどの戦場全体の変化。
すぐに不満の声はあがる。
それはそうだろう。
なんのために召喚獣など切り札級のスキルをまだ使わずに三人《副ギルド長》相手に戦っていたのか。
それは常に相手に警戒させ最悪肉を切らせても蓮見を護りに行けるようにだった。だがとんでもない切り札を持っていたと《《勘違いした》》美紀はエリカたちを含め、これならもう自分の援護はいらないと怒りと不満を露にしながらも確信し目の前の敵を最速かつ全力で倒す方向に作戦をシフトさせた。
「紅! もう一人で大丈夫って信じていい? これ以上集中力あげたらもう何が合っても気付かないかもだけど?」
耳に入ってくる声に「おう!」と大きな声で返事をした蓮見は心の中で『えっ……まだその先あったの……?』と喜びとは別にこれでは一生美紀には修業で勝てないじゃん! ……という絶望に似た感情が生まれたがそれも一瞬。
「だったら俺もおっ……piiiiiiじゃなくてギルドのためにギルド長として一肌ぬぐぜ!」
だけど、蓮見の覚悟は決まった。
心のどこかで無意識になんだかんだ何かあれば美紀が助けてくれるだろうといった勝手に都合よく考えていた安心感がなくなったのだ。
蓮見の目が鋭い物へと変わっていく。
まるで獲物を見つけた肉食動物のように。
黒い瞳でルフラン、ソフィ、リュークをしっかりと見つめ、相手の些細な動きにも神経を尖らせ警戒心をむき出しにする。
「グルルルル」
二本の犬歯をむき出しにして相手を威嚇。




