家庭教師の美紀
――――
――――翌日。
「ほら蓮見、起きて!」
――ユサユサ
目を開けた蓮見の視界には昨日人の心を思う存分心ゆくまで破壊した美紀がいた。
このまま二度寝をすると言ったら美紀の笑顔が崩れ頭から角が生えてきそうだったので仕方なくベッドから起き上がる蓮見。
そのまま大きく背伸びをする。
窓が明るい。もう朝なのか。
「う~ん」
「おはよう」
「あぁ、おはよう」
良かった今日は昨日の小悪魔の笑みではないようだ。
蓮見は心の中で安堵する。
「ほら、おにぎり作ったから食べて」
そう言って美紀がおにぎりを二つ差し出してきた。
蓮見はそれを手に取ってお礼を言う。
「美紀、ありがとう」
「うん」
そのまま朝ごはんを食べた蓮見は勉強机に向かう。
美紀も蓮見の勉強を手伝う為に蓮見の部屋にあるPC用の椅子を持ってきて隣に座る。
一人は苦痛の表情を浮かべ、一人は何処か楽しそうな表情を浮かべる二人。
まさに対極の二人だった。
「……はぁ。やるしかねぇかぁ……」
「そうだね~。なら宿題しよっかぁ」
明らかにテンションが違う二人はそのまま蓮見の宿題に取り掛かる。
プリントの枚数は終わっていない物――全部で17枚。
それを今日を入れた二日で終わらせなければならないのだ。
勉強ができない蓮見にとっては、機械少女以上に苦戦を強いられる敵だった。
とは言ってもしなければならないので、頑張って終わらせることにする。
隣で教えてくれる美紀のアドバイスを頼りにしながら空欄を一つ一つ埋めていく。
バカな蓮見に合わせて、美紀は分かりやすく丁寧に教えてくれた。
「……だから、ここはそうじゃないよ。ここは前文から作者が何を言いたいのかをよく考えて解くの。この質問はほら、ここにヒントがあるわ。なら答えは?」
「……えっと……(イ)かな?」
「そう。蓮見がさっき選んだ(エ)はひっかけ。作者は別にここではただ凄い少女がいるんだなとしか思ってないからね」
「……なるほど」
蓮見が間違えた答えを出した時は解説付きで教えてくれた。
これが青空高校の優等生の実力である。
現に去年は学年末テストでテスト勉強をせず、学校の授業を聞いただけで学年五位を取ったらしい。何でもゲームの大会とテストの日が近すぎてテスト勉強どころではなかったのだとか。理由が理由だったが、ゲームだけでなくテストでも結果を出す美紀に何かを言う事は担任の先生と親を含め誰もいなかった。
それなのに学校のクラスの男子から勉強を教えてと言われた時はいつも「ごめん。私まだテスト勉強してないから」と言って断り、女子の時は「いいよ~」と言っていたりとよくわからない一面を持つ。
ちなみに男女混合の時は別に気にしてないのか「いいよ~」と言う。蓮見は美紀も女の子だし男子と二人きりになるのは流石に抵抗があるんだろうと考えている。だからこそ今勉強を教えてくれている美紀がとても怖いのだ。これは春休み明けにあるテストでしっかりと点数を取らなければ怒られるのではないかと内心ドキドキしながらも必死に美紀の解説を聞いて理解しようと頑張っていた。
――幼馴染だからこその無言のプレッシャー
蓮見は高校生活を始めて以来、初めて勉強に対する危機感を覚えた。
――幼馴染だからこそ優しい美紀
だが美紀の期待に答えなければ、美紀の怒りを買う事になる。
――それはヤバイ! そうなった未来を考えただけでも恐ろしい……
もうできないとか恥ずかしいとかではなく、ちょっとでも理解出来なければ何度でも質問をする蓮見の勉強に対する意欲が美紀にも伝わったのか、二人は集中してひたすら問題を解き続ける事になった。




