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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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目覚めろ死体総集から生まれた兵よ


 絶望。

 美紀と朱音の二人を除いた深紅の美ギルドメンバーが感じている感情である。

 個人の力だけではもう無理。

 これがイベント序盤であれば状況が変わっていたのかもしれない。

 今は疲弊し身体に疲れもある。

 アイテムはなんだかんだで使ったり蓮見に渡したりで残り僅か。

 スキルも強力なスキルを温存はしているものの使えば切り札がなくなる。

 切り札を使うにはまだ敵の数が多く、使うタイミングではない。


「まずいわね。見誤ったわね。ここでコイツ等の狙いが私たちに集中するとはね」


「お姉ちゃん。後どれくらい行ける?」


「この数相手に本気で戦うなら持って十分程度かしら。里美とか紅が平然と戦っているけどあの二人はやっぱり異常。一人は戦闘狂で一人はその戦闘狂以上の異常者。あの二人は条件さえ満たせば無尽蔵に動くからね」


「お母さんは?」


「……あれも別の意味で異常よ。あっちにいるお母さん見て。今各ギルドの精鋭部隊を全部で二十きゅ……いや三十七人か……同時に相手してニコニコしね」


「……あはは」


 瑠香は七瀬が指さす先を見て苦笑いした。

 エリカは瑠香の後方にいて生産職。

 それを考えると戦闘メンバーで一番弱いのはやはり自分なんじゃないかと感じた。

 瑠香はエリカを護り七瀬の攻撃にタイミングを合わせることに集中して朱音の行動にまでは気が回っていなかった。だけど七瀬は違った。敵がどんなに強くても周りをしっかりと見ていた。その差がとても悔しいと感じたのだ。年が離れている分だけゲームに費やした時間の差は確かにある。だけどその差以上の実力差を感じてしまった。無意識に力が入る右手が震える。正直今向けられている敵意相手に今の自分では体力のある限り全力で暴れても数分が限界。言い方を変えればそれが最後の悪あがきになるというわけだ。その後は復活してもこの戦場ではもう自分は役に立てないと脳が考えてしまった。


「ルナ……? 大丈夫?」


「えっ!? あっ、うん」


 瑠香の挙動からなにかを感じ取った七瀬の顔から余裕がなくなる。

 七瀬もまた瑠香と同じく心のどこかで瑠香にはまだ余裕がある、と思っていたからだ。

 一見余裕が見えたのは二人共今回の戦いで演技をしていたから。

 最強ギルドの【ラグナロク】次席の【雷撃の閃光】と【灰燼の焔】。

 この三強ギルドメンバーたちの戦いはいつもとは戦いの質が違った。

 一番弱い部類に入る一般ギルドメンバーですら一人一人に神経を常に回していなければならないほどの実力者ばかり。

 これが一対一の戦いなら全然余裕だった。

 だけど何戦もこのレベルの者たちと戦い続ければ脳が嫌でも疲れる。

 脳が疲れればいつも以上に肉体にも疲労感を感じることになる。

 それだけではない。そこに好き勝手暴れる蓮見の攻撃範囲に気を付けながら敵がそっちに出来るだけいかないようにしてあげたりといつも以上に神経を使い続け今はエリカを護りながら戦っていた。その代償がここに来て七瀬と瑠香の身体にきた。

 何かを護りながら援護する戦いは――。

 二人にはまだ早すぎたのかもしれない――。

 これが個人戦なら勝機は二人にあったのかもしれない。

 だけど蓮見とエリカを護りながら戦えるだけの実力が二人には――。


「ここまでだな。幾らお前たちと言えここにいる三強ギルド総勢六百人が敵とは言わない。だがお前たちの大将が一番弱いはずなのに恐ろしいと我々の大将が判断された。それ故にお前たちが一番狙われやすいというわけだ」


「一応言っておくけどこっちにもまだ切り札はあるわよ?」


「それは残念だ。だけど我々も切り札は全員持っている。確かにミズナやルナには一人では勝てないかもしれない。お前たちは強い。だがこれはギルド戦でありソロじゃない。負けを認め我々のギルドの前に滅びよ」


「舐めないでください! 私が大好きな人がいるギルドは最後の最後まで戦いまっす! 紅さんが諦めない限り私たちが大人しく退くことなどありえません!」


「そうよ! 私が認めた紅君がこのまま何もなく負けるわけないじゃない!」


 今では美紀の次ぐらいに蓮見の理解者となったエリカの言葉が秒でフラグになるとはこの時誰もが思わなかった。

 突如大地の割れ目から吹き上がる蒸気。

 そこに空間の渦が出現。


「ん?」


 疑問に思ったのはエリカだけではない。

 見渡せば戦場のあちことで吹き上がり始めた蒸気と一緒に空間が歪んで出来たと思われる謎の渦があった。

 間欠泉となった大地から熱い蒸気が地を濡らし渇いた大地に潤いを与える。


「「「「ウオオオ」」」」


 不気味な鳴き声と一緒に空間の渦から骸骨兵が何十いや何百と物凄い勢いで出現していく。

 蓮見が使ったスキルはその日倒したプレイヤーの数だけ死体となったプレイヤーの亡霊を呼び起こし使役するといった能力を持っており、このイベントで蓮見が倒したプレイヤー数は究極全力シリーズの分まで入れるとその数は百を余裕で超えていた。

 つまりこの瞬間【深紅の美】ギルドは三百七十四名の援軍を得たことを意味していた。


「えっ……? なにこれ?」


「えっと……なんですかこれ……?」


「くれない……くん? なんか出てくると同時に攻撃始めたんだけどこれ味方なの?」


 驚く三人を援護するように出現と同時に攻撃を始めた骸骨兵。


 そして。


『お兄ちゃん。もしここから逆転したら私のおっ××触っていいよ』


 心の中での会話は当人たち以外には誰にも聞こえないことをいいことにメールが悪い笑みを浮かべてケラケラと笑いたいのを必死に我慢しながら囁く。全てはこの後のために。


 ――本当に!?


『うん♪』


 あははは~


 これ絶対面白展開になるやつだぁ!!!!♪♪♪


 皆皆頑張れ~♪


 とりあえずエリカさんたちのフォローはこれでいいかな? ふふっ。


 蓮見の脳が目覚めた。

 男として――。

 やはり世界を救うのは――おっ××しかない!


 そう結論を出したのだった。


「うおしゃああああああああ!!! やってやるぜ!!! よく聞け! お前らあああああああああ! 今から俺の進化した超新星爆発をお見舞いしてやるぜぇ!」


 そう叫んだ男は頭のネジが外れたのか自分の切り札を暴露し聖水瓶Ver2を頭から浴びる。

 身体に纏った炎がさらなる熱を帯びていく。

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