神災狐は貪欲
「援護はしてあげる。だから行っていいよ。好きに暴れておいで」
この時、蓮見の頭はこう解釈した。
援護はする=護ってあげる。
行っていいよ=突撃しろ。
好きに=自由に。
暴れておいで=究極全力シリーズあるなら使ってOK。
と全て自分の都合の良い方向に一秒にも満たない時間で結論を出したのだった。
「言ったな? だったらしっかりと俺様に付いて来いよ?」
ニヤリと笑い。
「当然。私を誰だと思ってるのよ」
「だな。だったら行くぜ! スキル『迷いの霧』!」
毒煙が辺り一面の光を奪い視界を悪くする。
ただでさえ煤煙が舞い薄暗かった六人の戦場が更に暗くなる。
そんな目くらましをした蓮見は一直線にリュークへと向かって突撃する。
「この殺気……来るか!? ならば、受けて立つ! スキル『アクセル』『鬼神』!」
腕に力を入れて適度に開き固定した下半身のエネルギーを上半身に伝えて大剣を一振り。
炎を纏った大剣が蓮見の視界に映る。
蓮見の炎とは違い純粋で練度が高い真っ赤な炎はとても綺麗だ。
でもそんなことに見とれている暇はない。
「左右と上下に逃げ道など与えん! スキル『炎剣』! さらにスキル『業火の炎』!」
リュークが中距離攻撃スキルを発動。
炎で出来た剣四本が自動射出され、蓮見の逃げ道奪う経路で襲ってくる。
それと同時に使われた業火の炎によって大剣に纏わりついていた炎が剣が振り抜かれた方向に飛んでいく。
その先には後少しで攻撃圏内にリュークを捉える蓮見がいた。
「うぉ!? そうくるのか」
言葉通り逃げ道を塞がれた蓮見はそのまま一直線に飛びながら大きく息を吸いこんで右手に力を入れて溜を作り一気に放つ。
「はぁああああああ!」
飛んでくる炎を渾身の一撃でKillヒット。
炎は蓮見の攻撃を受けて消滅していく。
「だが炎剣はどうするつもりだ?」
「そんなの決まってる! 放置だ! 今の俺には里美がいる!」
そう言って有言実行する蓮見はリュークへと襲い掛かる。
「ったく、私の視界も奪っておきながら人使いが荒いわね。スキル『障壁』!」
盾が一枚、美紀が投げた槍が一本、美紀が白雪の短刀で一本を撃ち落としていく。
「まぁいいけど。スキル『アクセル』!」
そのままスキルを使い一気に加速した美紀が白雪の短刀を収納して槍の元まで飛んでいき再度槍を投げて残りの一本を素早く撃ち落とす。
「させない!」
狙い通り炎剣と衝突し落下を始めた槍を素早くスキルを使い回収し今度は別方向から向かってきた綾香の牽制へと入っていく。
美紀は微かに見える火花からルフランとソフィが戦闘に入っていると確信する。
そして蓮見はちょうどリュークに殴りかかっていた。
「ってことは私は綾香を足止めすればいいのね」
自分の敵の確認を済ませた美紀は「なんだかんだこうして手合わせするのは初めてね」と嬉しそうな表情を見せるのだった。
そんな美紀に負けないぐらい蓮見も嬉しそうな表情を見せる。
「にししっ。今の俺様はメールのスキルも使えるの知ってます?」
「なっ!? お、お前」
「そうだ! さぁ海の女王の力を得たこの俺様相手にどこまで戦えますか! まずはスキル『進水百裂拳』だぁ!」
拳には水属性が付与されている。
高速で打ち出される拳は空気を切り裂く音と共にリュークへと向けられる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
神災狐となった今でも腕は二本のまま。
なのに――。
蓮見の最高速を持って繰り出される拳はとても速く残像で幾つにも見える。
そして――射程圏内まで距離を詰めた蓮見の拳はリュークを襲い始める。
忘れてはいけない。
人間であろうと神災竜であろうと神災狐あろうと蓮見の一撃は時に必殺の一撃となることを。




