生き残った者たちが集う時、尾が動く
「次の戦いを制したギルドが恐らく今回のイベントの優勝となるだろう。先ほどから続く大規模爆発によって多くのギルドは巻き沿いを喰らい壊滅もしくは戦意喪失しただろうからな」
少し前の出来事とここに来るまでの光景を見たリュークが結論を出した。
空から見た悲惨な光景は実際の光景を見なくても簡単に何が起きたのかそして誰が起こしたのかはすぐにわかった。
二大ギルドを壊滅した男が率いるギルドの点数はたった一人の男が稼いだ点数によって三強と呼ばれるギルドが多方面に攻撃を仕掛けながら頑張って稼いだ総得点を悠々に超えていることも簡単に想像がついてしまう。
やはり、リュークが本当の意味で倒さなければいけない男は恋敵であり、敵対するギルドで最も厄介なギルドの一つを束ねる男――【異次元の神災者】違う【神炎の神炎者】こと蓮見だった。信者ではないが、強敵として認めたからこそそう呼ぶことにした。
この男を倒さずして【灰燼の焔】ギルドが本当の意味で一位を取ることはできないだろう。
それだけリュークの中での蓮見は今回のイベントで立ちはだかる壁に近い存在だった。
そんな灰燼の焔ギルドとは別方向からさらに大きな集団が一つ【深紅の美】ギルドに近づいていた。
「あの影は……まさか【ラグナロク】?」
ルフランが率いる集団を見て、リュークは察してしまった。
やはり総力戦による優勝争いは避けては通れないらしく、向こうの狙いもやはりあの男なのだと。
「ふふふっ、面白い! やはり戦いはこうでなくてはな!!! アハハ!」
リュークの闘争心が燃えた。
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「リベンジは全力でいかせてもらう。俺たちは負けた。だったら王者としてではなく挑戦者として今度は正真正銘の全勢力でお前に立ち向かおうとしよう」
王者としてではなく挑戦者。
その言葉どおりルフランの意識はあの一撃を受けた後変わった。
王者だから、、、
というプライドや自尊心ほど最恐の男の前では無意味だと気づいてしまった。
だから今回この場に限っては一度負けたという事実を素直に受け入れて挑戦者として今度は偽りの王者を倒す覚悟でやって来たのだった。
「だが考えることは皆同じというわけか。【雷撃の閃光】も俺たちと同じでまだ目が死んでいないようだな。やはりここが俺たちの最終決戦の場になるのだろうな。いいじゃないか、こんなにも血が昂る感覚は生まれて初めてだ」
その光景を偶然目にした女。
ドクン!
心臓の鼓動が強くなった。
いち早く自分たちに迫りくる集団に気付いたソフィが大きな声をあげた。
「全員復活したな! 一度や二度の敗北で心折れてどうする! 我々の目的はなんだ!? 思い出せ! 我々の目的は優勝だ!!! 全員里美たちの攻撃範囲外の空に飛べ! そして”八卦背水の陣”を取れ!」
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ドクン!
ソフィと綾香の目に戦いの炎が戻った。
喉が渇き、戦いを求めて血が飢え始める。
全身の血管が破れそうになるぐらいに血の流れを全身で感じる。
鳥肌が凄い。
なによりワクワクしてしまう。
勝っても負けても強い相手がどんどん好戦的にやってくる。
それは普段望んでも戦えない実力があるプレイヤーたちばかり。
そのきっかけを作っているのはやはり――。
「紅」
やっぱりダメだったか~と今回の戦いを諦めていた綾香の闘争心をさっき以上に焚きつけるきっかけとなった男の名でもある。
「私たちがギルドごとに戦うことはあっても私が知ってる……ううん、今から起こるであろう戦いは過去一番熾烈で盛り上がるであろう戦いはやっぱり紅抜きじゃ成立しない。だから早く立ち上がってよ紅。私のHPゲージはまだゼロになってないし負けてないよ。だからさ、決着をつけるために始めようよ。最強ギルド決定戦をさ!」
「そうだ。私たちの戦いはまだ終わってない! ここでの戦いを制した者が恐らく優勝するはずだ。ならば貴様も私が認めた者として立ち上がってこい! 私はルフランとリュークだけじゃない。【深紅の美】ギルド長である貴様の首も取って【雷撃の閃光】が最強であることをここで証明する!」
各ギルド長の闘志が各ギルドに良い影響を与え、大地が割れ、全てが灰になり煤煙が舞う戦場は何処か静かながら過去一番誰もが経験したことがないぐらいにピリピリとした空気となった。
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三強と呼ばれるギルドがついに総戦力で揃った。
各ギルドがお互いを牽制するように鋭い眼光を放ちながら各ギルドリーダーを先頭に戦闘態勢へと入っていく。
その三強が最も警戒し最もこの中で弱いギルドリーダーはまだ死体と変わらない。
このままではマズイ! と美紀が不安な顔をしたときだった。
神災狐の尾がピクッと動いた。
たったそれだけ。
だけどそれだけで――。
敵味方関係なくこの場にいる全員の肌に強い緊張が走る。




