神災者から世界の創造主への挑戦状 前編
「やっちまったあああああああああ!!!」
皆の声を代弁したかのように責任者が両手で頭を抱えて叫び声をあげた。
視線の先ではイベントを監視していたライブ映像からシステムが今どういう状況下なのかがハッキリと映し出されている。
当然それはネットワークを通じて本社社長室におられるであろう神災ファンの目にもバッチリと映っていることは間違いないだろう。と言うのがとある運営室にいるメンバー全員の意見である。
「や、や、やべぇ……」
モニターと電話機。
その二つを交互に見てはどちらから対処するが正解かを考え始めた責任者。
本当はわかっている。
答えは両方だと。
だが両方ともどう対処すればいいかがわからないでいた。
パニック状態に陥った頭では正常に物事を判断できないからだ。
「いやいやいやいや、まずいまずいまずいまずい、どうするどうするどうすればいい」
早口の呪文のように小言が止まらない。
それだけ追い詰められた責任者。
五分前までは「さっきはちびったがもうアイツに力は残っていない。心配して損したぜ」などと余裕を見せながら、隣の部屋に用意された喫煙室で勝利の一服を決め込み気持ち良くリフレッシュして戻ってきて十秒後のことだった。頭から水を被ったように全身がびしょびしょになり、身体が硬直し今の状態となった。それを見たメンバー全員。本来であれば助け舟を出したいところではあるが今回はそうもいかない。そのため「……どうするのこれ???」と各々が助けを求めて無言の視線を飛ばす。
爪を口で噛むも答えは出てこない。
チラリと見える”緊急非常停止電源”と書かれた厳重にロックされた赤いボタン。
今までは気にもしなかったボタンではあるが今は押したくてしょうがない。
「なにかの事故ってことで誤ってこれを押してしまったことにすれば……少しは現状が良くなる……気がするがどうだ……???」
自分の権限ならすぐに実行が可能、と言う自覚はどうやらあるらしい。
「いや、待て! それはどう見ても悪化しかしないだろう!?」
「そうだ! お前がここで冷静になってくれないと俺たちが困る」
「とりあえずそのボタンは絶対に押すな! 押して強制的にサーバーを強制終了させても後の祭りがえぐいぐらい大変なことになるからな!?」
「そうよ! それ! それを押すのよ!」
「お前は余計なこと言うな! 本当にアイツが押したらどうするつもりだ!」
「そんなの決まってるじゃない! 責任者による責任者の不良の事故ってことで全責任を押し付けるのよ」
「お前は悪魔か。幾ら彼氏と喧嘩した原因がアイツ|《仕事の関係》とは言え少しは労わってやれよ」
「……だって……」
「だってじゃない! てかどうするんだこれ?」
今まで経験したことがない緊張感に支配された部屋の中で周りと比べればまだまともな判断ができる男が責任者に問いかけた。
「……れ」
「ん? ごめん。もう一回いい? よく聞こえなかった」
「切れ」
「えっと……なにを?」
「電話回線とサーバーのブレーカーに決まってるだろうが! 全ての悲劇と元凶を根っこから断つんだぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
とにかく時間稼ぎと現実逃避をしたい責任者の言葉に男がため息混じりの声で、
「いいのか? それは【異次元の神災者】と社長に喧嘩を売るってことだぞ?」
と警告する。
それは”お前にその勇気があるのか?”と男が間接的に注意喚起をした言葉でもあった。




