またしても全てが灰になった世界で
的確とも呼べるエリカのフォローもありなんとかスキル――不屈者の効果で生き残り、仲間ごと敵を殲滅した蓮見は辺り一面が灰になった世界の中心にいた。
全てを出し切った――。
息が苦しい――。
「はぁ、はぁ、はぁ、……」
心臓の鼓動がいつもより速いのはきっと――。
「また……終わったのね……世界が」
「…………ん?」
「あれ……私たちの身体にノイズが……なんで?」
「てかなんで動けないの……」
「私とか身体半透明の一部ドットになってるんだけど」
「流石【人型人造破壊殲滅兵器】ね……」
恐らく、違う、百パーセント以上の確率でこれから起こる事象に巻き込まれると各々が確信していた者たちは蓮見と綾香の一撃が衝突する直前に【亡命の悪あがき】を使った。
これは使用から十秒間だけ致死性になる攻撃を受けた際にHP一を残して耐えるという言わば延命アイテムでありかつて蓮見がミニイベントの際美紀たち相手に使ったアイテム。それはエリカの手によって作られており、今回は味方ということで【深紅の美】ギルドメンバーは全員持っていたのだ。
身体中溢れ出る血によく似た赤いエフェクト。
幾らHPゲージを死守しても身体はボロボロなのだ。
今のは間違いなく味方ごと殺しにきていた。
これが神災。
近づく者は誰であろと敵として認識され、神災が作りだす炎は世界を揺るがす力を持っているともう確信してもいいかもしれない。
またしても蓮見は大きく消耗した。
だけど言い方を変えれば……ただそれだけ。
まるでモノクロテレビの中。
だけど今回は前回と違う、、、
ありとあらゆる物の動きが……もっと踏み込んで言うなら……時間が止まったかのように誰もその場から動けないのだ。
唯一できること話すこと。
指先一本動かせないのだ。
だけでなく、一部のプレイヤーは身体の一部がドット化したり消滅したりしている。
両腕がないプレイヤー、右半身のプレイヤーなどを見れば五体満足のプレイヤーはラッキーとしか言いようがないのだが、そもそも生き残ったプレイヤーは【深紅の美】ギルドメンバーと綾香とソフィと運よく生き伸びた数名だけ。
後は全員亡くなった。
「今回は綾香とソフィも戦意喪失みたいね……見たところ」
美紀が呟いた。
二人共立つことすらままならないのか地べたに寝たまま動こうとはしない。
仮に動けてももう動こうとしないだろうと言う意味である。
実際はわからない。
だけど美紀は「もうあの二人から戦意を感じられない」と口にした。
そして視界の端でまたしても死体のような姿をした者を見て「それとアレはまだ生きているか、やっぱり」と半笑いになった。
力の底が見えたと思われた蓮見。
もう戦える力はないと思われた蓮見。
どちらもが不正解だと身を持って知った【雷撃の閃光】ギルドは今回の一撃で本部を失い支部メンバー全てを倒されてしまった。
底が見えてしまえば後は――対策されるのは時間の問題。
だけどその底が本当の底かは誰にもわからないと言うわけだ。
「これいつ直って動けるようになると思う?」
「私に聞かないでよ」
「里美さん……」
「わ、私がわかるわけないでしょ」
「お母さん……」
「普通に落ちる手前なんでしょ。後は神のみぞ知る世界ね。ってことで気長に待ちなさい。どうせこの状態なら誰も攻撃してこないわよ」
「それは一理あるね」
「でもさ、それでも唯一動くんじゃね? と思える男が一人あそこでくたばってるんだよね」
「あら? ミズナ今回はダーリンに辛口なのね」
「別にいいでしょ! そんなこと! 私だって怒るときは怒るわよ!」
「ふ~ん。本当は怒る振りしてただ一緒にいたいだけじゃないの?」
「あわわわわ!!! う、うるさい!!!」
と、もう究極全力シリーズが作りだす環境に適応していく生命体が早くも生まれる。
その環境とは、大地は粉々に割れ、底なしの谷を幾つも形成していた。
雲が止まり、炎が止まり、水が止まり、水蒸気が止まり、プレイヤーが止まり、大爆発の余波が生まれる手前で大爆発そのものも止まりと、世界が初めて本気の悲鳴をあげノイズだらけとなった世界のことである。
ここで何が起きたのかを思い出してみる美紀たち――回想。




