蓮見VS綾香 前編
「待ってたわよ~紅君!」
そう言って蓮見を迎えるエリカは蓮見に寄り添うように自然な形で近づいていく。
「エリカさん言うとおり皆集合って感じがしますね」
「そうね。ちょうど敵も味方も役者が揃った感じね」
そんな会話をしながらも先ほど調合したアイテムを渡すエリカと当たり前のようにアイテムを受けとる蓮見。
多くの者が気付いていないようだが既に蓮見は次なる一手を今も打っており、そこに足りないアイテムを今は補給しているに過ぎない。
だけど誰もそれに気付くことはない。
味方ですらあの爆発に巻き込まれて死んだと思っているメールが今ここにいなくても誰も不思議には思わないからだ。
「やっと来たね。紅待ってたよ」
騒ぎを聞き付け拠点の中からソフィと綾香が姿を見せ、ソフィは美紀の方へと行き、綾香は当然蓮見の方へと向かっていく。
「久しぶりだねー紅。こうして敵として対面するのは」
感動の再会を喜ぶ綾香。
「ん~、俺結構定期的に綾香さんには狙われてる気がするのは気のせいですかね」
イベントの度に命を狙われている為か素直に綾香との再会を喜べない蓮見。
「あはは~♪ なら今回もその命狙っちゃおうかな」
笑いながらまるで冗談を言うかのように軽いノリで命の宣告をされる蓮見は苦笑い。だって綾香が両手に持っている物が言葉とは裏腹にやる気満々です、とアピールしてくるからだ。きっと双剣は蓮見の不意討ちを警戒してのことだろうが。
本当に油断できない相手だと蓮見は思った。
「まぁ、いいや。そっちがその気ならこっちだって本気で行きますよ!」
「うん! かかっておいで」
高鳴る心臓の鼓動が強くなる。
一度は燃え尽きた闘志が心の内側でメラメラと燃え始めた瞬間だった。
脳がこの後の展開を予測しアドレナリンを分泌し始める。
頭の中で『燃えろ! 俺様バーニングソウル!』が流れる。
歌詞の内容は想像に任せるとしても、やはり蓮見のテンションを上げる物なのは間違いない。
「スキルとアイテムの殆ど失った紅が私に勝てる要素はない。と言いたいところだけど闘う前に一つだけ確認。勝負を諦めてはないんだよね?」
「当然! 俺様の辞書あるのは勝利の二文字だけですから!」
「だと思ったよ!」
――ドドドドッ!!!
次の瞬間――両者が一斉に動いた。
それを合図に美紀とソフィ、瑠香と援軍でやってきた第二陣と第一陣の生き残り、朱音と七瀬が精鋭部隊、と衝突。
この時――気配を消し様子を伺いながら地中で作業していたメールとモグラ君も最終準備へと入り始めたのだった。
二人の動きを呼んでいたかのようにエリカが追尾式爆弾を投げて蓮見を援護。
さらに、閃光弾を一つ放り投げた。
まるで狙いすましたかのような閃光弾は交差する二人の中心地で爆発。
「紅君! 援護はお姉さんにお任せよ!」
さっきまで誰の援護すらしなかった援護職のエリカが今回は超絶やる気を出してのサポート。これにはギルドメンバーが遠目で見て苦笑い。これが愛の力と言うなら世界はやっぱりよく出来ていると思う。
「流石エリカさん! ナイスです」
巨体を動かし鋭い爪で綾香に襲い掛かる蓮見。
「何を考えているか知らないけど目くらまし程度じゃ私は止まらないよ!」
白い光が覆う世界で鋭く殺傷能力が高い爪と銀色に光輝く刃がぶつかりオレンジ色の火花を散らす。
視界が悪くても手を止めない二人の攻防は続く。
「なぜだ、なぜ、綾香さんはこの中で俺の攻撃が見える、、、」
「ふふっ、それはね。紅の攻撃がkillを狙った攻撃が中心だからだよ」
「チッ。ってことは、俺の攻撃が全部読まれているってことかッ!?」
「なるほど!」
思い当たる節がある蓮見は納得した。
「だったら攻撃パターンを変えれば万事解決ってことだな!」
蓮見は綾香から距離を取った。




