最強の前に立ちはだかるは――才溢れた少女
今までとは違う脅威――神災。
攻撃と消耗を繰り返し、火力不足になるのではなく強力になっていく神災者――蓮見と援護するギルドメンバー。
今まで通りに蓮見を狙うと、それを阻止しようと立ちはだかる強者。
これ以上の援軍はない。
幾らメンバーに愛され、最強ギルドと呼ばれようと――この男の前では――。
――――。
――――――…………。
「はぁ、はぁ……はぁ、こいつ……まだ息が……」
――あれから何分、何十分が経過しただろうか。
わからない。
体感では数十分以上に感じてはいるが……実際は……。
ルフランは嵐のように猛攻を仕掛けてくる美紀の攻撃を全て正面から受けきった。
上空では灼熱地獄にありそうな炎の渦が竜のように赤く染まった大空を自由気ままに泳いでいる。
空から聞こえる無数の断末魔と悲鳴は天空で待つ者に挑戦し敗北していった者たちの声。
それを平然と受け入れ、あたかも普通のように気にも留めずに突撃してくる美紀。
ルフランの視線の先――即ち美紀の背後で巨大な爆発が再び起きた。
衝撃と轟音。
同時――メイン拠点が跡形もなく吹き飛ぶ。
守る物が一つ消えた。
今まで拠点には注意が向かないように美紀を誘導していたが、もうその必要はなくなった。
即ち――ここで守る物がなくなった。
ならば、と。
目の前と上空からの不意打ちに神経を研ぎ澄ませ、アイテムの一つである発煙筒を天に向かって放り投げる。
「……さぁ、ここからどうするつもりかしら? 既に拠点を失ったことでアンタ達のステータスはダウンしている」
「ふっ」
鼻で笑い、全身に力を入れて、大きく踏み込みながら、
「甘いな。既に別の拠点を確保している。その心配は余計なお世話だ!」
「だったら、安心」
「面白い。正面からまだ来るか! 返り討ちにしてくれる!!!」
ルフランの目が大きく見開かれた。
――最強。
その名に恥じぬ、実力。
一対一の戦いにおいて敗北は許されないし、敗北はありえない。
それを相手に正面から向かってくるとは…………。
どういうつもりかは知らないが――。
「俺に勝てると思うなよ? 里美!!!」
「その台詞そのまま返す! 来るなら、来なさい!」
「良かろう! スキル『覚醒』!」
「……すぅ、はぁー」
ゆっくりと息を吐き出した美紀は。
「スキル『加速』『ガードアップ』!」
スキルを使ったことで身体に白いオーラが纏わり力を与える。
一撃。
たった一撃――致命傷を与えれば、勝負は着く。
拮抗した力の対立において、一度のミスが大きなミスとなり取り返しのつかないことになるなんて話しはよく聞く。
男に生まれた以上――女に負けるわけにはいかない。
昔から男は狩猟をしてきた。
時代が変わろうが戦闘という一点に置いては純粋な力勝負や一瞬の判断力で負けるわけにはいかない。
「まだまだ! スキル『アクセル』『パワーアタック』!」
「負けない! スキル『アクセル』『パワーアタック』!」
両者がスキルを使い、事実上スキルによる加護の力を相殺し合うも、油断はできない。
王者――強者――最強――。
そんなプライドがルフランに力を与える。
俺に敗北はない! そんな笑みを浮かべて走るルフランは一気に美紀との距離を詰めていく。
「……ったく、熱く堂々としていて男らしいわね。紅より……」
まるで自分と【神炎の神災者】を比べたような口ぶりにルフランは大きく笑い。
「だったら俺のためにここで死んでくれ! ――スキル……」
一声。
と、スキル『一閃』。
剣にエフェクトが発生し力を与えると同時ルフランの動きが更に速くなり美紀に不意打ちを与える。
戦場において――絶対は【神炎の神災者】ではない。
この俺だ!!!!!!!!!!
多くのプレイヤーの憧れであり、将来はプロゲーマーとして活躍することを心に誓ったこの俺!
故に――同世代には絶対に負けられないのだ!!!
例え、プロゲーマーの娘が相手でも神災が相手でも才溢れた少女が相手でも――。
己の力で道を切り開き、俺の実力を世間に証明する。
そう心に誓い――破壊された拠点に待機させておいた召喚獣に発煙筒で合図を出し手元に呼び寄せる。




