盛り上がる神災一味VS最強の意地
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――その頃。イベント特設観客席では。
「よっしゃー! いけぇーーー暴れろ!!!」
イベントの様子を映し出すスクリーンに向かって神災教の人間が大きな声をあげる。
その周りには同じ志を持った同士がおり、歓声をあげて喜ぶ。
今まで首輪が繋がれていた。
なにより暴れても抑止力がちゃんと存在した。
それは――過去の話しとなった。
スクリーンの中で暴れる蓮見を今回は誰が止められるのだろうか。
神災教とは別に【ラグナロク】推しのメンバーはそんな疑問を頭の中で抱く。
「なぜ……里美が……」
「可笑しい。アイツは既に一回負けているはずだ……なのになぜ火力ダウンしてない」
裏を返せば火力が既に減少した分増加したというわけで。
「少数にも関わらずこの時間帯で全面攻撃に出る理由は? 本当に勝つつもりなのか?」
「幾らアイツら強くても戦力差は歴然。それを覆すにはかなり苦労するはずだ」
「奇襲で結構な人数が死んでたけどこちらはすぐに復活し既に加勢に入っている。どう見ても分が悪いはずだ」
「それに見てる限りだが、最初の一撃で既に里美、朱音、七瀬、瑠香の四人は持ち込んだアイテムの殆どを使っていた。既に回復系のアイテムしか残っていないはず。後は【神炎の神災者】とエリカのストックしかない。もしこれを何とかできれば【深紅の美】は【神炎の神災者】を失うと同義のはず」
その言葉を否定するかのように超新星爆発が唸りをあげた。
蓮見の二発目の超新星爆発は神災教のメンバーを盛り上げる。
――ある観客席にいた反神災教のプレイヤーはあること思い出す。
蓮見の使う神災。それはアイテムに依存することが多い。
そのためアイテムが無くなればもうなにも恐れることはない。
だが――。
その前に青空に浮かぶ真っ白い雲がたったの二発で真っ赤な空へと変わり黒煙を巻き上げ太陽の陽を遮断。その上をさらに真っ赤な炎が覆いつくした光景はなんとも言えない。
だが――これはゲーム。
だれも本当には死なない娯楽の一つ。
だから問題はないはず。
だが、どう見ても可笑しい。
既にギルド最強と呼ばれるメンバーたちを持ってしても蓮見のHPゲージが大きく減ることがない。それどころか蓮見の火力が前回見た時より上がっていて動きも速くなっている気しかしないのはなぜ……?
近くにあった山脈の一部が爆風で吹き飛び海の水が押され底が見えた。
近づいたプレイヤーは先ほどから食べられ一口で飲み込まれていく。
しかもそれに違和感を感じさせることなく、大きな声で楽しそうに歌を歌いながら破壊の限りを尽くす蓮見はもう――一般人プレイヤーかつ一般的な常識と判断力を持った者からすれば異常だった。。。
いつかゲームの世界を超え、夢の中でも現れるのではないかと……。
悪夢となっていつか現実世界にも影響を及ぼすのではないかと……。
つい、そう思ってしまうほどの光景を見て歓声をあげる者たちの気がしれない。
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――最初の一撃で地面が真っ赤に燃え、空気が乾き喉が苦しい。
干乾びた大地はひび割れ、燃えるように熱い空気が肺を襲う。
上手く呼吸ができない。
それでも身体を動かし、攻撃に転じなければいけなかった。
そんな過酷な環境を当たり前のように受け入れて突撃してくる少女たちが目の前にいた。
「はああああああ!!!」
蒸し暑さが体力と気力、そして集中力を容赦なく奪っていく。
繰り返される神災は初手の一撃に留まらない。
今も上空ではエリカの支援を受けた蓮見が襲い掛かる合計百人以上のプレイヤーと戦っては超新星爆発を起こし戦っている。
美紀を出し抜き、あの戦闘に加わることはできない。
当然幹部メンバーや支部ギルド長も全力を尽くしてくれているが既に朱音と七瀬と瑠香に捕まっている。




