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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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第二ラウンド開始に向けた【深紅の美】作戦会議


「ちょっと待ってくれ、里美。俺から皆に先に伝えたいことがあるんだ」


 初めて聞く蓮見からの前向きで真剣な声。

 それはギルド長らしく周りか見れば堂々としていて男らしい。

 特に蓮見以外全員女性ということを考えれば素直に頼もしいとも見て取れるかもしれない。

 そんな蓮見が一と口を閉じて、ゆっくりと一人一人と視線を合わせていく。

 それが終わるとゆっくりと深呼吸して。


「俺はリュークさんに負けた。そして思った。絶対に借りた恩を千倍返ししたいと! そして俺様クールビューティー戦隊を倒したルフランさんとソフィさんと朱音さんと葉子さんたちにもやられたら分はきっちりとやり返したいと」


「でもダーリン。装備の性能差は身に染みたはずよ? 幾ら意気込みが良くなっても装備が強化されたことで本来の形に近づいたPVP戦においてダーリンとあの子たちの実力差はハッキリと出てしまうわ」


 否定はしたくないと思いながらも冷静に今の状況を伝える朱音の表情からは困惑の色が見て取れる。


「おかあ、さん」


 本当は素直に背中を押してあげたい朱音。

 それは七瀬から見れば一目瞭然。

 それでも現実を――心を殺して――正確に伝える朱音。

 だが、朱音の心配を裏切るように蓮見はニコッと微笑む。


「でしょうね。それはこの中で俺が一番よく知っています。それにエリカさんを除いてこの中でまともに対抗できないのは俺だけってことも」


「なら何か策でもあるのかしら?」


「はい」


 首を縦に動かし、ゆっくりとした口調で返事した蓮見。

 それをただ黙って見守る美紀とエリカ。

 七瀬と瑠香は蓮見には聞こえないよう小声でボソボソと相談を始めた。

 それでも蓮見は臆することなく自分の言葉を皆に伝える。


「エリカさんがさっき説明をしてくれたアレを使えばいけるはずです!」


「根拠は?」


 冷たい朱音の声。

 思わず蓮見と朱音の会話を聞いていた美紀たちが息を呑み込む。

 周りから見ればそれは試されているようにも見えなくもない。

 蓮見の本気度がどれくらいなのか。

 またそれが実際にどれくらいの効果を期待できるのか。

 神災は間違いなく敗れた。

 その事実は変わらない。

 従来の神災ではもう時代遅れで効果が薄い。

 それが証明されてしまった以上、何も言わないも朱音と同じく美紀やエリカが一番欲しい答えは明確なギルド長としての言葉――方針――決断。

 ギルドとは一つの集団。

 それは良くも悪くも長の色を色濃く反映する。

 ここでハッキリとした方向性が出ないのであれば蓮見に変わり美紀がその道を皆に示し導かなければならない。

 だけど――それは本当の意味での【深紅の美】ギルドの意思ではなく、あくまで本当の意味に近い意思でしかない。

 それでも今から挽回するには何も問題がないことを美紀、エリカ、七瀬、瑠香、朱音は知っている。自分たちの今置かれた状況や今の戦力、そして予め調べていた情報などを元に過去の膨大な経験がそれらを教えてくれるからだ。

 だけどそれがない蓮見の言葉にはやはり説得力が欠ける。

 失敗をした、という経験。

 成功をした、という経験。

 そう言った経験が皆に比べると圧倒的に少ない。

 そうなると必然的に説得力、強いて言うなら言葉の安心感の欠如にも繋がるわけだ。


「そう言われるとなにも言えないです。でもこれだけは言わせてください」


「なにかしら?」


 蓮見に向けられた冷たい声と視線。


「アンタたちは答えがわからないと踏み込ないのか? 答えや未来が見えないと挑戦しないのか?」


「ん?」


「もしそう問われた時、何て答えますか?」


 少し間を置いて。


「俺ならこう答えます。俺が俺らしくあるために何度だって挑戦します! とね」


「くれない……」


 心配そうに見守る美紀の頭に手を伸ばし優しく撫でながら蓮見が皆へと伝える。


「俺が戦場にでます! 皆さん力を貸してください」


 その一言に。

 ホッと息を吐き出しては安堵の表情を見せていくメンバー。


「わかった、援護は任せて紅」


「おう! 期待してるぜ里美!」


「ったく、しょうがないわね。今回も付き合ってあげるわよ、紅」


「ありがとうございます! ミズナさん」


「相変わらずぶれませんね、紅さんは」


「当たり前だろ? だって俺はルナの前ではカッコイイお兄ちゃんでいないとだからな!」


 ボッとゆでだこのように顔が赤くなった瑠香とそれを近くから覗き込むようにして見るエリカ。


「相変わらずなのはルナもみたいね、不意打ちに弱すぎでしょ。それと紅君。一応もう一度言っておくけど水で鎮火できない炎でも敵が火属性ダメージ無効や火傷無効と言った完全耐性持ってたら効かないわよ? それでもやるの?」


「はい。エリカさんと俺の頭脳が加われば誰にも負けませんから! それにまた子猫みたいに無防備で可愛いエリカさん見たいですし、こんな所で愛想尽かされると困りますんで絶対に成功させて見せます!」


「あわわわわ、わわわぁぁぁぁぁ~」


 少し前も甘えん坊の自分を思い出したエリカの表情が一瞬で溶け瑠香に負けないぐらい真っ赤になった。「にゃ~、ちぃあわせでぇ~すぅ♡」なんてことも目一杯甘えた声で言っていた自分を今すぐでもぶん殴れるならぶん殴りたいぐらいに羞恥心で一杯になったエリカは「はぁあああいいい! だったらとめませぇん!」と元気よく返事をしてくれた。


「ふ~ん。つまりはいつも通り勝算はないってわけ?」


「え? 俺そこまでは言ってませんよ?」


「そうなの?」


「はい。少なくともまだ誰にも見せたことがない俺様究極シリーズならおかあ――」


 ジッ―と見つめてくる朱音の鋭い視線に貫かれた蓮見は一瞬言葉を詰まらせる。

 ほんの一瞬動いた唇。

 いつもならなんだかんだ冗談っぽい感じでそれらしい仕草を見せてくれるのだが、なんとなく今は違う気がする、と直感で感じ取った蓮見の脳はここで言葉を間違えれば朱音が不機嫌になってしまう予感を感じ取っていた。

 それもあり集中したことで唇がなんて言っていたのか、読み取れた蓮見はすぐに言い直す。

 こんな所でご機嫌斜めになられたらこの後行われる蓮見の作戦に大きな支障が出てしまうかもしれない。


「――あ~かねさんの度肝ももしかしたら抜けるかもぐらいには実はよくわからい自信が俺の中にはありますので……はい」


 最後は自己完結で終わらせた蓮見を見てクスッと笑いながら、


「わかったわ」


 と、応える朱音。名前で呼ばれたのが嬉しいのか、ただいつものように蓮見をからかって楽しんでいただけなのかは本人にはわからなかったが、蓮見はなんとなくなんだかんだでいつも通りと言うべきか九割以上の確率で後者だったんだろうな、と心の中で思ったもののこれで直感による作戦のピースは揃ったとガッツポーズの蓮見。


「よっしゃ! ならまずは【ラグナロク】からぶっ潰しに行くぜ!」


「「「「「おぉーーーー!!!!!」」」」」


 蓮見の言葉に合わせて皆で拳を突き上げ気合いを入れる。

 だけどこの時――蓮見のテンションに乗せられて誰も気付いていなかった。

 交感神経が興奮状態になり副腎髄質より分泌されるホルモン兼神経伝達物質が血中に放出され心拍数や血圧を上げ、瞳孔を開き、血糖値を上げ、また心筋収縮力の上昇、心・肝・骨格筋の血管拡張、気管支の拡張などを引き起こしていたことを。そしてこの状況に対応した変化が起こす成分に脳が支配されていたことを――。



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