蓮見VSリューク 前編
「分身を使ったと思いきや何処かへやるとはやけくそにでもなったのか?」
通称俺様戦隊を超えた四人で構成された神災四天王と呼ばれる神災竜四体で構成される戦隊が散らばって各地で何をしているのか知らないリュークの言葉に蓮見がニコッと笑って答える。
「当たりだろぉ! 俺の非モテストレスはこんなもんじゃ収まらねぇ! こうなった以上華麗に優雅にそしてエリカさんやミズナさんが「きゃあああああーカッコイイ! 紅く~ん大好きよ~!」って言ってもらえるぐらいの大手柄あげて俺様大ハーレム計画を成功させるに決まってるだろうがぁ! そうすれば必然的に俺が後で里美に怒られる心配も一切ない一石二鳥狙いだからな!」
飛んだ爆弾発言を躊躇なく声を大にして叫ぶ男は。
「それにな! 俺だってそろそろ思いっきり暴れたいんだよ! その為だったら飛んで目的の相手を探すぐらいするさ!」
と、言葉を続けた。
どこが本音でどこが建前かはもう考えるまでもないだろう。
神殺しの礼装シリーズの一つ。
爆炎剣焔の魂を軽々と持ち上げ剣先を向けてくるリュークに蓮見の心臓がドクンッと強く跳ねた。
武器を構え向けられた。
その事実だけで全身に鳥肌が立つ。
直感で分かってしまったのだ。
純粋な力勝負では絶対にリュークには勝てないことを。
それは美紀たちの修行で蓮見が相手の力量を見切れるほどに強くなったからわかるわけだが、それでもまだこの男には勝てないと本能が察してしまった。
だけどここまで色々使ってただ負けましたでは絶対に怒られる、ともう一人の自分が故に退路はないと強く語りかけてくる。
それは同時にやるならとことんやってこの状況を大いに楽しみ、負けるなら全力を出し切って負けろ! とある意味決死の覚悟でもあった。
「へへっ。やっぱりアンタすげぇよ」
「ん?」
「今の俺ならわかる。純粋な力勝負では勝てないって」
「なら諦めるのか?」
「いんや、今回の俺様ハーレム計画は絶対に成功させないと俺様の好感度に関わるからそれはできない」
「よくわからんが、行くぞ!」
そう言うと、リュークが鋭い眼光で蓮見を睨みつける。
「スキル『アクセル』『鬼神』!」
両ギルドのギルド長同士の対決。
本来であれば大規模ギルド同士の衝突において最後の最後まで起こることがないであろう光景が開始早々に訪れ周囲の空気がピリピリとし始めた。
「俺は【灰燼の焔】を率いる者であり、ギルドメンバー全員の最後の希望であり続ける! その為には例えお前にでも負けるわけにはいかない!」
その一言はとても力強く重たかった。
そして言葉と同じくリュークの一振りもとても重たく腰から抜いた鏡面の短剣を盾にしたものの蓮見の身体は一瞬にして飛ばされてしまう。
「うわわあああああ」
そんな蓮見に容赦なく近づいてくるリューク。
ただ正面から一直線に。
「まだまだ行くぞ! スキル『爆炎』!」
「俺は絶対に負けねぇ! 来い! スキル『連続射撃3』『虚像の発火』!!!」
リュークの大剣が爆炎の効果を得た。
第二回イベントの時と同じく正面からそれも力技だ。
急いで武器を持ち換える蓮見。
大剣を手に取り、怯んだ蓮見に突撃してくるリュークに攻撃を向けて迎撃を心をみる。
「その程度なんの障害にもならん! スキル『鬼神』『暴風爆裂演舞』!」
リュークが一直線に飛びながら大剣を一振り。
それによって生まれた炎を纏った嵐が蓮見の矢を灰へと変える。
蓮見の炎とは違い純粋で練度が高い真っ赤な炎は蓮見のオレンジ色の炎を易々と呑み込んだ。
「マジかよ!!」
「次の一手はどうする! 【神炎の神災者】ぁぁぁ!!!」
大きな大剣右から左へと豪快に振りながら、闘志を向き出しにしてくるリューク。
正に力任せの技である。
ならば――と。
「甘いぜ! スキル『迷いの霧』!」
蓮見は慌てて毒の霧を周囲に展開して、リュークの渾身の一撃をギリギリで躱して毒煙の中へと逃げる。
「また小細工か? だが俺の『暴風爆裂演舞』の嵐からは逃げれんぞ! スキル『暴風爆裂演舞』!」
今度は矢ではなく毒煙を巻き込んでいく嵐は弦を引き遠距離攻撃を試みていた蓮見の姿を露わにする。
「やべっ?!」
「見つけたぞ。スキル『炎剣』」
リュークが中距離攻撃スキルを発動。
炎で出来た剣四本が自動射出され、蓮見を自動追尾しながら襲う。
「あの時と同じ厄介な剣だとッ!?」
「あの時とは違い仲間はいない。さぁ、どうする」
大剣を担ぎながら距離を詰めてくるリューク。
どうやら蓮見の思うように戦わせてはくれないらしい。
「す、スキル『連続射撃3』!」
炎剣をギリギリまで引き付けてリュークと一緒に攻撃。
だが全て当たらず、正面から向かってくるリュークと左右から挟み込むように襲い掛かる炎剣、さらには頭上と真下から飛んでくる炎剣に一瞬で囲まれてしまった蓮見は全身に冷や汗をかいた。




