ルフランVSソフィ 前編
「あの爆発音は……【神炎の神災者】か!?」
爆発音がした方向へと視線を向けて声を大にして叫んだソフィ。
「やはり動いてきたか!」
そして。
「「予想より早いッ!」」
と思わぬ展開に二人の表情にほんの一瞬迷いが生まれた。
だけどリーダーの動揺はメンバーのメンタルに大きく作用することを知っている二人はすぐに行動へと移す。
二人の声が各メンバーたちの耳へと入る。
「【神炎の神災者】が動き出した以上ここで確実に【ラグナロク】を潰しておかなければ私たちの優勝はあり得ない! 全員死に物狂いで勝利の二文字を勝ち取れ!!!」
ソフィの激励に「「「うおおおおおおお!!!」」」と【雷撃の閃光】ギルドの士気が上昇する。
だが、続くようにしてルフランが声を上げる。
「アイツが動いた以上イベントが大きく動き始めるぞ! 全員気合いを入れてまずは【雷撃の閃光】を叩くことに集中しろおおおお!!!」
ルフランの力強い言葉は【雷撃の閃光】ギルドに負けないぐらいに【ラグナロク】メンバーのモチベーションを向上させる。
両者が一進一退の攻防を繰り広げる戦い。
それはまさしく過去最大級のギルド対抗戦とも呼べる戦いであった。
「こうなった以上ペース配分はなしだ! スキル『雷装強化』! さらに『幻影の舞』!」
「なっ!? ここで来るか! ならば、スキル『連撃の舞』!」
自分達の予想よりも早く蓮見が動いた。
その事実に勝負を急ぐ二人。
ソフィの双剣がスキル『雷装強化』の効果を受け、バチバチと音を鳴らし雷を纏い雷属性のダメージを付与する。
そこから繰り出される実態と幻影がそれぞれ織りなす十一連撃に対しルフランは目をソフィの呼吸音や僅かな気配を読み取ることで反撃を試みる。
視覚情報に作用し幻影が見えるのならば目を閉じれば幻影をみることはない、と単純な一手。
だが、連撃を繰り出す直前に目を閉じたルフランに対してソフィは心の中で恐怖してしまう。
(この男凄まじい集中力だ……)
そんなことを思いながらも発動したスキルが止まることはない。
一撃一撃を本気で殺すつもりで打ち込んでいく。
――。
――――。
だけど、ルフランの連撃の舞がそれを正確に防いでいく。
幻影の攻撃には覇気が足りないのか反応すらしないルフランにやはり生温い相手ではないかと感じるソフィ。
「これで七連撃」
「チッ」
後四連撃で攻撃が終わる。
そうなればルフランの連撃の舞による残り三連撃が防御ではなく攻撃に向けられる。
そう確信を持ったソフィ。
「八」
「はぁああああ!!!」
「九、十」
まるでカウントダウンのように数字を口にしていくルフランの剣は素早いソフィの双剣の攻撃を華麗に弾く。
まるで磁石の同極が反発するかのように。
衝突の度に火花が散らす両者の武器はどちらも一級品で切れ味には自信がある。
まともに受ければ肉を切り裂き骨まで経つことは間違いない。
「まだだぁーーーー!」
ソフィが渾身のラスト一撃をルフランの頭上から振り落とす。
「甘い!」
それを読み切ったルフランはここでバックステップ。
そのまま足に力を入れて今度は後退した分前へとジャンプし剣を振り抜く。
ソフィの攻撃に対して一撃躱したルフランの攻撃の手数は四。
「今度は俺の番だ!」
「……ッ!?」
まず一撃目。
大きく右から左に一直線に振り抜かれた剣先がソフィの腹部を掠る。
そのまま遠心力を利用し左足を軸に回転し距離を稼ぎながら今度はソフィ左肩から右足にかけて剣が勢いよく振り抜かれる。
「――グハッ!?」
赤い鮮血が戦場に舞う。
その光景を見た【雷撃の閃光】ギルドメンバーに大きな動揺が生まれ、精鋭部隊同士の戦いの流れが大きく変わった。
今まで拮抗していた力が完全に崩れたのだ。
「どうした? お前の力はこんなものか!」
「……ッう!」
「さぁ、どうする!?」
三連撃目。
ソフィの胸元を切り裂く。
先程まで八割ほどあったHPゲージが四割弱となる。
ステータスのポイントをSTRやDEXに振っているなど攻撃関連に振っているルフランの一撃はソフィの高貴な防具を持ってしてもダメージ量が大きい。
だが、まだ終わっていない。
ラスト一撃。
ルフランが足に力を入れ大きく踏み込んで剣をソフィの心臓に向けて突き刺す。
「「「「「ソフィさまぁーーーーー!!!!!」」」」」
迫りくる剣を見た精鋭部隊のメンバーが大声で叫ぶ。
このまま剣が心臓を貫けば二人の戦いはルフランの勝利で終わる。
「これで終わりだ!」
ここでルフランが閉じていた目を開き勝負を決めにいく。




