朱音ついに拠点を見つける?
軽い気持ちで攻撃を仕掛けてきた者たちに天罰を与えた朱音は山から海へと繋がる河川の湧き水で顔を洗っていた。
「うぅ~気持ちいいぃ~」
ここだけ聞くととても平和そうに見えるが、朱音の背後では蛍の光が沢山輝いている。それは朱音に一方的に天罰を与えられた者たちが天へと帰る姿でもある。誰一人として朱音に一撃すら与えることが出来なかった。
「う~ん。なんだか物足りないな~。せっかくこうしてお出かけ出来たんだしちょっとこの辺探索してみようかしら」
朱音は周囲に視線を飛ばして自分と戦ってくれる人物を探してみるが残念ながらそんな者は近くにいない。
なぜなら全員まとめて倒したばかりだから。
そんなわけで大きくストレッチをしてから川沿いに歩いてみる。
こうしていけば途中道に迷うこともないだろう、と言う判断である。
大まかな地形が書いてある地図MAPはイベント開始時に配布されているが、細かい道や敵の拠点などは自分もしくはギルドメンバーがその目で見ないと表示されない仕組みとなっているからである。つまりは自分たちでしっかりと開拓していけという運営からのメッセージ。そんなメッセージに乗っかる朱音の足取りはどこか軽いように見える。
しばらくして森林を抜けると広い草原にでた。
「わぁ~、開放的ね~。あぁー、あ。こんなことならダーリン連れて来ればよかった……」
どうせなら一緒に寝転がって大空を見ながら談笑でもしたかったなー、と心に余裕が見える朱音は周囲を見渡してみるが誰もいない。
どうやらここは外れらしい。
これ以上遠くまで行けば、もし救援要請があった場合に戻るまでにそこそこの時間を要することになると今回はここまでと諦め戻ろうとしたときだった。
サ、ササッ。。。
草原の草が風に揺れる音した。
ただし風に吹かれているにしては少し違和感があるような。
そんな予感に朱音が再度周りを見渡すがやはり誰もいないし何もない。
あるとすれば足元に生えている緑色の草と土。
後は道しるべと使っていた川ぐらい。
「あれ?」
目を凝らして違和感がする方に意識を集中させる。
「……んーーーー、気のせいか。はぁ~」
大きなため息を吐いてはアイテムツリーからアイテムを取り出して方向転換して歩き始める朱音。
そのままメッセージをエリカへと送る。
『しばらく帰れそうにないけど、ダーリン大丈夫かしら?』
すると、すぐに返信がくる。
『はーい。大丈夫でーす。私がしっかりと面倒見てますから~』
「あら? 随分とご機嫌が良いみたいね、エリカちゃん」
まぁ、暗い返事よりかはいいか。
とポジティブに考えた朱音は武器を神殺しの礼装シリーズへと切り替える。
そして、大きく息を吸いこんで左手に持った聖水瓶を放り投げて。
「ダーリンの浮気者ーーーーー!!! スキル『焔:炎帝の怒り』!!!」
声に反応して出現した赤い魔法陣は徐々に赤く光始める。
そして杖から力を受け取った燃え盛る炎が一直線に聖水瓶を撃ち抜いたことで綺麗で豊かな草原が炎の海となっていく。
メラメラと燃え盛る炎の中特殊な結界で護られた拠点が一つ姿を見せる。
「やっぱり、視界を騙す結界に護られていたわね」
と、エリカからの返信から全てを察した朱音はやってやったの表情を見せた。
「なんだなんだ!?」
「敵襲だ!!!」
「まさか【神炎の神災者】様じゃないだろうな!?」
「ここを何処だと思って攻撃してきた!?」
「この結界に気付くとは相当な手練れのはず!」
異変に気付いた者たちが拠点の中から大慌てで出てくる。
統一された装備は朱音の装備と同じ神殺しの礼装シリーズ。
ただし朱音とは違い防具までもが神殺しの礼装シリーズの者もチラホラと見えた。
「う~ん、拠点の大きさやこいつらの装備からして……大当たりかしらね。うふふっ」
そんな者たちを見て、朱音は一人逃げ出すでもなく不敵な笑みを浮かべた。




