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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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姉妹の追跡



「意外に逃げ足速いんだね」


「そうね。でも修行の度いつも私たちから当たり前のように逃げてる紅に比べたらまだまだ未熟だけどね」


「あはは~」


 瑠香は七瀬の言葉に思い出し笑いをする。

 このままでは全滅と思い途中で二手に別れた片割れを追いかける二人は敵パーティーの遠距離攻撃を躱す。

 もう片方は実の娘である瑠香でも絶対追われたくない相手――朱音が裏のある笑みを浮かべながら追跡している。


「比べる相手が悪いね。最近ではお母さん相手でも逃げれる人だからね……」


「言えてる」


 逃げ足だけは速い。

 いや速くて俊敏な蓮見と比べるとこの程度と思う瑠香と七瀬はアイコンタクトで意思疎通をして間合いを充分に詰めた所で攻撃の準備を始める。


「スキル『導きの盾』」


 薄い緑色の盾に敵が放った火炎弾が衝突して煙が立つ。

 その間に瑠香が煙に乗じて森の木々に隠れながら敵パーティーの先陣へと回り込んでいく。


「甘い! スキル『水手裏剣』!」


 敵の注意を引くために七瀬が通常遠距離攻撃とは別にスキルを使う。

 同時に視界不良を意図的に維持する為に手榴弾を一つ取り出して投げつける。

 敵パーティー近くで爆発した手榴弾は土煙を巻き上げた。


「チッ、しつこい奴め」


「ここは俺たちが殿をする! お前たちは先に行け!」


「わかった。死ぬなよ友よ」


「へっ、当たり前よ」


 男が四人を残し、偵察兼攻撃部隊となっている残りのパーティーメンバーを土煙の中逃がすことにした。

 当然男たちの会話は七瀬には聞こえていないし、七瀬より今は近くにいる瑠香にも聞こえていない。だが、敵の動きを見ながら迂回していた瑠香が僅かな違和感に気付く。


「ん? お姉ちゃんへの反撃を止めた?」


 嫌な予感がする。

 そう思った瑠香はスキル『加速』を使って、木々の隙間を急いで駆け抜けていく。


「やっぱりそうだ。お姉ちゃんの意識を反らして仲間を逃がす気だ」


 相手の動きを見てそう判断した瑠香は一瞬の迷いもなく、腰から抜いたレイピアを手に取ってスキルを発動する。


「逃がさない! スキル『水流』『特攻』!」


 瑠香は『水流』を使い、足場にしてから大きくジャンプする。

 そのまま敵の注意を引き付けるように真っすぐに突撃する。

 敵の注意が水龍に向いたタイミングで上空から敵パーティーの真ん中にレイピアを向けて急降下攻撃。敵の死角から突撃に成功した瑠香はニコッと満面の笑みで告げる。


「誰に手を出して逃げようとしているんですか?」


 そう言って小刻みに動きレイピアを突き刺していく瑠香に敵のHPゲージが徐々に減っていく。

 一人また一人と光の粒子となって消えていく。

 敵もすぐに反撃に移るも、小柄な体格を活かした機動性の前では中々攻撃が当たらない。また敵は密集しているため、スキルに制限が掛かっていた。下手に使えば密集しているために仲間を攻撃してしまうためだ。かといって、


「スキル『連撃』!」


 と、攻撃しても、瑠香は別の敵の攻撃を躱しながら、敵の背中をポンッと軽く押したりして攻撃の身代わりにしてと敵を翻弄していた。これが朱音の愛娘の力。

 瑠香が心配して七瀬の方に視線を向けると七瀬は七瀬で冷静に敵を対処していた。


「やっぱり心配いらなかったか」


 安堵する瑠香がようやく後少しでこちらも片が付くかな、と内心思った正に絶妙のタイミングだった。


「はあああああああああ!!! スキル『加速』!」


 雄たけびが聞こえ、強い衝撃が身体に走った。

 突如勢いよく吹き飛ばされた身体が痛い。

 苦痛に顔を歪めながらも、背中のブースターを使いすぐに空中で態勢を立て直してレイピアを構え何が起きたのかを確認する。


「っう……!?」


「痛いか?」


「………」


「悪いがお前の命運はここまでだ」


 加速系スキルを使い突進してきた女。

 女でありながら蓮見と変わらない背丈かつ腕や足は倍ぐらい太い。

 まるでボディービルダーのようだ。

 女の瑠香と比べると体格差がありすぎて、純粋な力勝負では勝てないだろう。

 そこから放たれる一撃はどう頑張っても男でも正面から受けるには危険すぎる破壊力を秘めている。と、手に持っている大きなハンマーを片手で担ぐ女に直感で思う瑠香。

 まともに喰らえば痛みがフィードバックして実質敗北が確定してしまいそう気すらする。


「貴女は……たしかレベッカさん……でしたね」


 脳内にある情報を頼りに敵が誰なのかを識別した瑠香は首の骨をぽきぽきと鳴らして、これは骨が折れそうだと微笑む。


 そしてレベッカも「救援要請があったから来てみればとんだ大物じゃないか」とボソッと呟いては嬉しそうな笑みを浮かべた。


 両者の視線が交差した時、レベッカの生き残った仲間が逃走を開始した。

 そして二人だけになった戦場で少し遠目で見た七瀬は目の前の敵を倒してから逃走した者たちの背中を全速力で追いかけ始めた。


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