メールお披露目
翌日――ログインして。
蓮見、美紀、朱音、七瀬、瑠香、エリカの五人は海辺の砂場に集合した。
「それでこんな所に私たち全員を呼び出してどうしたのよ?」
せっかく第四層を調べようと張り切っていただけに美紀は少し不満そうな声をあげる。だけど蓮見のお願いはなんだかんだで付き合ってくれている所からある意味蓮見の理解者でもある。
「へへっ、実は皆に見せたい物があるんだ!」
満面の笑みで答える蓮見に第三層での出来事を思い出すメンバーたちと「ん?」と期待に胸を膨らますなにも知らない朱音。
「あっ!? 私急用が――」
「わ、私も――」
そう言って一人逃げだそうとする七瀬と瑠香に美紀が警告する。
「いいの、それで? 紅がこう言うってことは、自信があるってことだと思うけど」
「「……ッ!?」」
その言葉に七瀬と瑠香の身体がピタリと止まる。
違うのだ。
そんなことはとっくの昔にわかっているのだ。
だけど身体が本能で危険信号を放っているのだ。
このままここにいては何かとんでもないことに巻き込まれしまうと。
だからこそ、できれば遠目で見ていたい、と言うのが二人の本音なのだ。
だけど――。
(((((そもそもイベントの度に新技が増えるってどういうこと???)))))
心の声はある程度同じで、お互いの気持ちもなんとなくわかる五人はアイコンタクトで意思疎通をしてこの場は死人がでないことを祈ることで満場一致となる。
「一応確認だけど私たちの安全って確保されているのよね?」
「里美?」
「なに?」
「今までの俺の行動を見返せばわかるだろ? 俺を信じられないのか?」
ドヤ顔で自信満々にそう言った男に美紀は思わず絶句した。
信じるもなにも――見たままなので。
「信じたいけど……無理かな?」
その言葉に首を縦に振る一同。
そんな一同を見た蓮見は強行突破に入る。
「だったら目にもの見せてやるぜ! スキル『召喚獣』!!!」
蓮見の声に同調して直径一メートル程の青色の魔法陣が出現。
そこから姿を見せるのは、小学生ぐらいの背丈で痩せ細せた金髪少女。
服装はボロボロの布切れで大事な所は隠れているが、切れ目からは素肌が見えておりどこかみすぼらしい服装である。膝上までしかないスカートは激しく動かずとも穴がところどころ空いているため下着が見えてしまいそうである。だけど金髪少女はそんなことはお構いなしにとすぐ隣に蓮見がいることに気付くと目をキラキラとさせて主の名前を呼ぶ。
「あっ! お兄ちゃん!」
「おう! っても昨日ぶりだな!」
「今日はどうしたの?」
「ちょっと頼みがあるんだ!」
「いいよー」
「ならまずは里美たちに自己紹介をしてくれ」
メールは蓮見に言われた通りに丁寧に自己紹介をしていく。
ただし少し怖いのか蓮見の手を途中から掴んできた。
蓮見は思う。
メールの戦闘経験から察するに目の前にいる五人の実力を薄々感じ取ってしまったのだろうと。手汗をかいたメールに蓮見はわかるぜ、その気持ち! と勝手に心の中で共感する。蓮見だって美紀、エリカ、七瀬、瑠香、朱音の五人と闘いたいかと言ったら一方的な展開にしかならない気しかしないので遠慮しておきたいと思う。特に四人はスキルとアイテムが使えなくても超強い。下手に挑発でもした日には”死”しか待っていないだろう。そんなわけで、蓮見は暖かい目でメールの自己紹介を見守る事にする。




