お勉強と衝撃の真実
瑠香が部屋にやって来た。
「皆さんが夜ご飯の準備をしてますので、後二、三十分ほど待っててください」
「わかった。それでここに来てどうしたんだ?」
「お母さんから心配だから見ててと言われました」
「俺信用ねぇのな」
「まぁまぁ、そう言わずに」
純粋無垢な笑顔を見せて瑠香が蓮見の解いているテキストを覗いてくる。
「へぇ~蓮見さん面白いことしてますね」
瑠香はクスッと笑って蓮見の隣に椅子を持ってきては座る。
「もし良かったら私が教えましょうか?」
蓮見の脳がフリーズした。
瑠香は一体。
「えっ?」
「これくらいなら私わかりますよ?」
つまり瑠香の言葉から察するに年下でありがながら学力が高いと言う事である。
流石は進学校に在籍しているだけある。
女子高それもお嬢様学校で特別進学クラスといわれる馬鹿でもわかるぐらいに名前からして頭の良い人間しか入れないクラスに瑠香は在籍している。
姉に負け時劣らずと――優秀な所は母親からしっかりと受け継いでいた。
「えっと……マジ?」
「はい」
こうして夜は瑠香先生のご指導の元、勉強会が始まった。
蓮見は頭が上がらなかった。
ゲームの腕でも負け、勉強でも負けと何一つ男としてカッコイイ所を見せれないと。
周りが優秀過ぎる為に劣等感を感じながらも、今は縋るしかないと思い余計なプライドを捨てて熱心に取り組む。
瑠香が気を利かせてくれて、今まで避けていた文章問題にも補助付きで頑張って見る事にする。
瑠香の説明が分かりやすいのか、アレ? さっきと同じで単語の意味がわかるとなんとなくいける? と蓮見の心の中で少し変化が起き始めた。
勉強とはそんな物。
特に中学、高校までなら、専門的な知識はいらない事から法則性みたいなのを見つければ案外ちょっとしたことで伸びるきっかけになる。後は一人でもそれを継続できるかにかかっているのではないだろうか。
「そうです。でも蓮見さんここは惜しいです」
「えっ、どこ?」
「ここは本文中から四語で抜き出しなさいなので、ifを使っちゃうと三語になっちゃっいますよ?」
「本当だ、ならこっち?」
「そうです」
「おぉー!」
蓮見は今までにないぐらいに自分の成長を感じていた。
喜んで浮かれる蓮見に瑠香が笑みを見せる。
そして、ボソッと蓮見に聞こえないように気を付けて、
「第五回イベントに間に合わせろってお母さんこれは鬼だよ……あはは……」
と呟いた。
第五回イベントで蓮見が不在となっては【深紅の美】ギルドの根底に関わると判断した朱音は瑠香に秘密裏に夏休みの宿題を進めるように指示を出していた。それは朱音だけでなく【深紅の美】ギルド全員の意思でもあった。
だけど、今のペースでいけば宿題がある程度終わりイベントには間に合うだろうと瑠香は心の中で確信する。
イベント開催まで残り三日。
その三日でどこまで蓮見にイベントを集中できる舞台を用意できるかが【深紅の美】ギルドの生命線とも言えるだろう。
朱音や美紀が仮に一騎当千をしても【ラグナロク】【雷撃の閃光】【灰燼の焔】を同時に三つ相手することは無理である。そこに七瀬と瑠香が加勢したとしてもエリカを護りながらであれば流石に戦力が違い過ぎてかなり厳しい。
だけど超広範囲かつ大火力を可能にし後々にも影響を与えるオリジナル技を使う少年がいれば入賞は問題なく可能だろう。後は王者の首を如何に取りに行くかと言うわけだが、それを実現するにはこの男の学力を強制的に付け焼き刃でもいいので底上げしないことには無理というわけだ。
なので、ここは皆で協力していくことにした。
時間が経ち、七瀬が夜ご飯の準備ができたと告げに来た時点で二人のお勉強会は終了。




