打倒夏休みの宿題
自室に戻った蓮見は渋々勉強机に向かい夏休みの宿題と向き合っていた。
学生の本業は勉強とよく言われる。
当然ゲームばかりして成績が下がれば色々と小言を言われる。
そんなのは頭では分かっている。
それでもしたくないと言うのが本音。
だって勉強しても何一つ楽しくないのだからそう思うのはしょうがない。
だけど――と、色々な感情を押し殺して頑張る蓮見。
「えっと……ここの問題は」
ゲームをする前に国語と社会は美紀に教えて貰い少しではあるが進んだ。
数学はエリカに教えて貰い進んだ。
後は理科と英語。
この二教科を少しでも解けば夏休みの残り期間と考えると少し余裕が持てる。
「……うわぁ~全然意味がわからん」
蓮見は英語の宿題に取り組んでいた。
単語の意味がわからないので並び替え問題や比較的簡単な翻訳問題ですらお手上げの状態である。
これではどうしようもない。
ただし、これは当たり前のこと。
英語の苦手な人間にとって、その大部分を占める問題点は単語力にある。
言い方を変えれば単語の意味さえしっかりと理解すればある程度はなんとかなるのだ。
「仕方ない……誰もいないよな」
念のために周りに誰もいないことを確認して、蓮見はポケットからスマートフォンを取り出した。
「えっと……Google先生に聞けば全部わかるはず」
単語の意味だけなら蓮見が宛にする先生に頼っても問題はないというか一番効率的で良いのかもしれない。自分で調べる、自分で考える、が出来ているからだ。本当は紙媒体の方が手間暇がかかる分他の単語も目に入ったりと良かったりするのだが、朱音の別荘にそんな物はないので結果的に一番良い方法を楽したい一心で選ぶことができた蓮見。
「えっと……Soilは土、Soiliderは兵士、perceiveは理解するってことは今の俺はNot perceiveってことか……ふむふむ」
真面目にしたかと思いきや空欄を埋めながら余計なことを考え始めた蓮見は次の単語の意味を書きなさい、perceive→美紀と本人にバレたら怒られる文字を自信満々に書いていた。
「borrowは借りる、burnは燃える」
burn→俺、ゲームの影響が出ているらしくまだ勉強に十割で集中できていない蓮見は珍解答をところどころで見せていた。
これを担任の先生が知ったら、一体どうなることやら。
無視をしてくれるか、再び特別指導の対象となるのか、それはその時の楽しみとしておこう。
しかし蓮見は自分で調べているだけあって正解率は八割五分とかなり良かった。
一部の珍解答以外がなかったら尚良かった。
とは言っても、Google先生のアシストありきでなので、後でもう一回自分で見直して単語の意味を覚えないことにはその場しのぎにしかなっていないわけだが。
その後、並び替え問題へと移った。
並び替え問題もまずは日本語を読んだ後に出てくる単語を調べて意味を隅っこに書いて行く。
単語の意味が分かれば後はこっちのものと、蓮見は何の迷いもなく手を進めていく。
簡単な所ではあるが、一人で進めいく蓮見。
結果としてゲームをする時間が増えていく。
本来であれば第五回イベントに参加している余裕はないのだが、強力な助っ人が近くにいるという安心感が蓮見を後押ししていく。
しばらくすると、部屋をノックする音が聞こえた。
「はーい」
蓮見が返事をすると、扉が開き中に入ってくる人物がいた。




