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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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蓮見VSメール


 MPを使用するスキルとアイテムが使えない。

 世間が神災と呼ぶ災いが根本から抑えられた。

 そんな状態で一体誰が蓮見に勝機があると思うのだろうか。

 実はそんな人間がいるのだ。

 【異次元の神災者】の異名を持つ蓮見である。

 相変わらずゲームの中での発想力はずば抜けいて、それと同時に同じぐらいどこか抜けている蓮見はニヤリと悪い笑みを浮かべる。


「ふふっ、いいぜ! かかってこいよ! メール女王様!」


 威勢がいい。

 普通に考えれば、追い込まれた人間が見せる行動ではない。

 メールは警戒するように尾ひれを動かし海の中を自由自在に動き始めた。

 蓮見の戦闘データは全て頭の中に入っているメール。

 彼女は自分の領域テリトリーでの戦闘でも正面からの突撃は危険と考える。


「私が張り巡らせた結界は中からの脱出を防ぎ、クエストに関係のない者の侵入を防ぐ防壁でもある。当然外部からの攻撃はもちろん遠距離攻撃系統のスキルも例外じゃない。その状況でなんでお兄ちゃんは不敵に微笑んでいるのかな!?」


 言葉で蓮見の思考を鈍らせたメールは背後から突撃。


「見えた! 遅いぜ!」


 いつもの感覚で素早き動き対処に入るため、全身に力を入れて動く。

 つもりだったが、息が普通にできる事から頭の中から水中だと言う事を忘れてしまった蓮見の身体は体感でいつもの倍以上遅い速度でゆっくりと反転を始めた。

 そんなことをしている間に二人の距離はどんどん縮まる。


「……しまった」


「……ん?」


 水の抵抗を身体が受けるため、動きが鈍くなった。

 当然移動だけでなく防御姿勢に入るのにも。

 思わず息を呑み込む蓮見。


「あはは。遅いのはどっちだろうね♪」


 幼い手から伸びた爪は鋭利な凶器となっており、肉を切り裂く。


「ぐはっ!?」


 攻撃は一回で終わらない。

 反応に遅れた蓮見を見てニヤッと微笑むメール。

 だけどメールの動きが速く、目で追うのが精一杯の蓮見に反撃の余裕はない。

 とてもじゃないが、今のメールにはついていけないし、仮に攻撃しても当たる気配が全くない。


「遅いよ、お兄ちゃん」


「……いやいや、俺様は人間。水の中はかなりの速度ダウン……てかそっちが速すぎて俺の作戦が秒で崩r……ぐはっ!?」


「そっかぁ。それは残念だったね」


「……ガハッ!?」


「ふふっ♪ 私強いでしょ? まだスキルを使ってない状態でこれだとお兄ちゃんが負けるのは必然かな? かな~? ここではプレイヤーはMPを使用するスキルは使えない。つまり人間を止めない限りお兄ちゃんは私と一つになるしかないの。だから諦めてみない?」


 最初の言葉がハッタリだったと知ったメールの動きに迷いがなくなる。

 正面、後方、左右、と不規則に突撃してくるメールの攻撃によってHPゲージが半分を割った。

 元々ここに来るまで二割弱損傷はしていた。

 だけどこのペースはあまりにも消耗が早すぎる。

 陸地、もしくは空ならいつもみたいに動ける。

 しかし水中ではそうもいかない。

 蓮見の頭が今の状況と今までの状況の違いを正しく判断していく。

 ならば、と脳をフル回転させて考える。

 攻撃手段はどうする?

 MPを使うスキルは使えない。

 ならば、MPを使わないスキルは何がある?

 外から仲間を呼ぶことはほぼ不可能。

 かといって内側から特殊障壁を破壊しようにもKillヒット以前にテクニカルヒットポイントすら見えない。

 これでは物理的に恐らく不可能。


「へへっ。覚えておくといいぜ。俺の辞書にこの世界《ゲーム内》においてだが不可能と言う文字はないってことを。なぜなら俺は今考えている」


「なにを~?」


「どの俺様全力シリーズをどうやって発動するか」


「なにそれ? スキル? だとしたら使えないよ?」


「ふふっ、なら一ついいことを教えてやろうか?」


「なに?」


「わからない・できないと言う発想がそもそも間違っている。わからない・できないのではなくできないと思うからできないのだ。人は知性に優れ学習を通して日々進化している。故に成長の先に必ず汝が求める解ある。byエリカさん。これが難大と呼ばれる某理系大学に通い時に俺様の家庭教師をしてくださり、時に最強の支援者であるエリカさんが勉強嫌いの俺に教えてくれた言葉の一つ! もしその言葉が本当に正しいのであれば俺はどれを使いどれをどう使えばこの状況を打破できるのかそれがわかる気がするんだ!」


 真剣な表情でありながら、どこか嬉し気に語る蓮見を見たメールの身体がピクッと反応する。



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