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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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息抜き


 ちょうど区切りがいいところまで来たので今日の勉強会はここまでとなった蓮見は立ち上がって大きく背伸びをした。


「うぅぅーーーー、やっと終わった!!!」


 さっきまで静かだった部屋で開放感溢れた声で蓮見が喜ぶ。

 背中の筋肉が伸びる感覚が気持ちいい。

 両肩の筋肉が凝っていた感覚が消えていく感覚。

 ちょっとしたことだが、今の蓮見には多大なる解放感を与えてくれる。

 それだけ集中していた証拠でもある。

 ここである事に気付く蓮見。

 どこか頬ばし食欲をそそる香りが鼻孔をくすぐる。

 クンクン、と犬のように匂いを嗅いでみるとどこからか何かを食べる音が耳に入ってくる。


「これは……なんの匂いだ?」


 嗅覚センサーを頼りに身体の向きを変える。


「あっ、蓮見お疲れー。宿題少しは終わった?」


「お疲れ様です。良かったら蓮見さんもお一つ食べてみませんか?」


 視界の先では七瀬と瑠香が手作りクッキーを食べている。それを見た蓮見はそれに釣られるように足を動かし始める。

 疲れた脳が甘い物を欲しがっている。

 そのまま瑠香の隣に座り足の短いテーブルの上に置かれたバスケットへと手を伸ばす蓮見に朱音が声をかける。


「食べてもいいけどその中には激辛クッキーと激苦クッキーを入れてるから気を付けてね♪」


 なんとも嬉しそうに警告してくる。

 その純粋な笑顔を向けられた蓮見の手がピタっと止まる。


「‥‥‥‥え?」


「本当よ?」


 疑問の眼差しに笑顔で答える朱音に蓮見が小さなため息を一つ。


「なんで?」


「面白そうだから!」


 やれやれ、と疲れきった脳が心の中で呟く。見た目は全部同じで違いなどない。もしかしたら朱音のブラフかもしれないと考え七瀬と瑠香に視線を向ける蓮見。


「お母さんの悪ふざけだから気にしないで」


「七瀬さん」


「なにかしら?」


「お母さんは一体なんのためにこんなことを?」


「それは……多分……」


 七瀬が怪しげな視線を朱音へ向けて、


「さっき自分で言ってたように面白そうだったからじゃない? お母さんって昔から仲の良い人には手料理とかお菓子を作るんだけど、作る=たまに変な物を混入、させてくるから。見た目は全く同じなのに食べたら中身が全然違う、なんてことよくあるのよ、昔から。特にお母さんが大のお気に入り登録した人は……ね? お母さん、そうでしょ?」


 と、言った。


「正解♪」


「まぁ、確率なんて二十八分の二なんだし適当に取って食べなよ。ちなみに私と瑠香が食べてる奴はここに来る前に自分で焼いたのを入れたやつよ」


「なるほど……お母さんって性格良いようで悪いんだな」


「あら、やだぁ~、ダーリンったらそんなにストレートに誉められると……私照れちゃうわ」


 身体をくねくねさせる朱音に蓮見はこれは覚悟を決めて正解を引くしかないな、と視線と思考をバスケットの中へと戻す。どうせ確率なんてものは七瀬が言った通り十パーセントを切る。ならば引くと思うから引くのであって、引かないと思えば引かない理論が通用すると考える蓮見。


「まぁ、いいや。とりあえず一枚目いただきます」


 口を開け、手に取ったクッキーを放り込む。

 その瞬間。

 蓮見の時が止まった。

 舌を通して脳を刺激する感覚。

 危険を察知した身体は息を止め、口を止める。

 可笑しい。

 ただ一枚のクッキーを食べた。

 なのに――。

 どうして――。

 こここここんなことに!?

 と蓮見の思考が冷静さを失った。


「どうしたの? 蓮見?」


「どうしたんですか? 蓮見さん?」


 七瀬と瑠香が不思議に思ったのか、急に動かなくなった蓮見の顔を覗き込んでくる。二十八分の一、つまりは確率三から四パーセント程度。普通に考えてそんなの都合よく引けるわけがない。……のだが、今日の蓮見はどうやら最高に運が良いらしい。


 瞼がパチパチと動く。

 察してくれ。

 そう言わんばかりに目力で視界に映る二人に念を送る。


「まさか……」


「あはは……お水いります?」


 コクり。と頷く蓮見。

 手を伸ばして差し出されたコップを瑠香から受け取る蓮見に朱音がニコニコして隣に来ては身体を引っ付けてくる。


「も、も、も、も、もしかして当たったの?」


「…………」


「七瀬と瑠香が作ったクッキーと見た目を全く同じにして私の愛が沢山詰まった愛情クッキーのどっちを引いたの?」


「…………」


 悪いが朱音の質問に答える余裕はない。

 蓮見は口の中に残ったクッキーを急いで貰った水で流し込む。


 ゴクゴク。


「察するに情熱の方?」


 蓮見は隣でソワソワする朱音に冷たい視線を向けて頷く。

 口を開きたいが下手に開くと辛みが口の中全体に広がりとんでもないことになるかもしれないため今は話せない。


「アンタ……運ないわね……。てかお母さん離れて」


「お水のお代わりどうぞ。それとお母さん! 恋人みたいにベタベタしないで! それと貧層で弾力の少ない物をわざと蓮見さんの逞しい腕に押し当てないで」


「あら? つれないわね~。いいじゃない。これも私なりのスキンシップなのだから♪」


 まるで罰と楽を同時に与えられているような気持ちにさせられる蓮見。

 ただし罰の方が体感として比重が重たく、いつもなら超嬉しくてドキドキすることも今は残念ながらテンションすら上がらないぐらいにこの後どうしようかと頭を悩ませる。水を飲んでも舌がヒリヒリする感覚が消えない。少ない脳みそをフルに動かして打開策を考える蓮見に朱音が声をかける。



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