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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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不気味に笑い始める者たち(運営室)


「良し、データは取れた」


「間もなく小百合サードシーズンも完成する」


「あぁ、これで巷で有名な神災戦隊にも対抗できるだけの戦力が手に入ったな。フフフッアハハ!!!」


「これで神災戦隊五人が相手でも小百合たちが倒してくれるだろう。次のイベントの結果次第ではすぐに出番がくるかもしれん。準備(調整)は早めにしておけよ」


「わかってるわよ」


「それに見たか! 一度倒されても復活するようにしておけば神災を受けてもまだ戦える! アイツのあの驚きの顔と来たら……ひひひっ」


「でも結局負けたけどな、機械王。それにこんな事ばっかりしてたらさ、俺がこんな事言うのもアレだけど、今度から二段式の神災とか時間式で二回発動型の神災に発展しそうじゃね?」


「「「「…………」」」」


 ――ゴクリ。

 たった今、全員の頭の中で危険なフラグが立った気がしたのは言うまでもない。

 勘が良いメンバーたちなだけに誰もすぐに反論ができない。

 ここで認めてしまえば重大な問題が増えるのではと頭が警告するも、それを言葉にすることでまた別の問題が起きるのではないかと偶然にも全員が考えてしまう。

 何気ない言葉が現実になる。

 長く生きていれば、人生に一度や二度はあるだろう。


 全員の視線がモニターに映る機械王と戦っていた蓮見へと向けられる。

 五人は何かを確認するように注意深い視線を向け静観。


 ――しばらくして。


「次のイベントは予定通りギルド対抗イベントで行こうと思う」


「別にそれは構わないけど……急に真剣な表情を見せてどうしたの?」


「アイテムの持ち込み制限を提案する」


 責任者はメンバー全員に視線を向ける。

 熱い視線に思わずメンバー全員が固唾を飲み込んだ。


「一応理由を聞いておこうか?」


「異例ではあるがアイツは物凄い勢いで強くなっているとまずは認めようではないか」


「お、おう、そうだな。それで」


「何かを変える事ができるのは何かを変えようとする強い意志を持つ者だけだ! 何一つリスクを取らずして俺達に未来はない! だから俺は今思いついた! 【異次元の神災者】を倒したいと思っているプレイヤーは多い! ここはそんな彼ら(プレイヤー)に頑張ってもらおうではないかと! そして勇気ある彼らが【異次元の神災者】の異名を持つアイツに対峙できるように考えたのがこの案だ! コレならばアイツだけでなくトッププレイヤーの動きも制限されることになる。つまりはギルドによるチーム力がカギを握る戦いになるではないかと俺は考えた! どうだ! 異論がある者はいるか!」


 素晴らしいだろ! と言わんばかりに声を大きくして言い切った責任者の言葉に四人が首を上下に何度か振り思考を巡らせる。確かにアイテムよるHPやMP回復を始めとした戦闘用アイテム並びに戦闘補助アイテムに制限を設ければ間違いなく動きは慎重になる。ましてや実力が近い者同士が対峙するとなれば当然。これは一見蓮見対策に見えてそうじゃない。特に実力者ほどこの手の縛りは効く。なぜなら実力者ほど敵から徒党を組まれ狙われる可能性が高くなるからだ。そう言った意味では誰かの味方にならず皆平等に扱うという面からも悪くない発想だとメンバー全員が思った。

 だが――。

 四人のうち二人が小さくため息をついた。

 そんな二人に残りのメンバーと責任者の視線が向けられる。


「案は良いと思う。だがその調整は一体誰がするのかをお聞かせ願おうか責任者様?」


 デスクワークばかりで身体がなまっているのかストレッチを始めた男に責任者は臆することなく責任者としての言葉を放つ。


「それはお前だろ? 俺達は組織で動いている。誰に負担がいくとかも重々承知している。そのためにお前には二十二人の部下を与えている。部下と協力して迅速に対応するのがこのプロジェクトを成功させるチームリーダー足るお前の職務だ!」


「……ぅ。よりにもよって今回はまともな事を……ぅぅぅぅッ」


 奥歯を噛みしめて正論には反論できないと悔し涙を見せる男に責任者は心の中で勝ったとガッツポーズをしてやった。


(どうだ! 俺もたまには上司らしく良い事を言うんだぜ!)


 数日前に購入した本に書いてあった文章が元ネタなのは当然責任者だけの秘密。

 たまには読書も良い物だと自負していると、ため息をついたもう一人が口を開いた。


「理に叶っているとは思うわ。でもそれだけで本当に大丈夫なの?」


「どういう意味だ?」


「今まで貴方の作戦は全部失敗に終わっているわよ? っていう意味よ」


 ――グサッ!


「こ、今度は大丈夫だ!」


「そう思う根拠は?」


 疑いの目を向ける女。

 黒い瞳は真っ直ぐと責任者の目だけを見ている。


「い、今までの傾向からだ!」


 小さくため息をついて。


「そんな曖昧な物だからいつも若い彼の方が一枚上手なのよ。とりあえず指示には従うけどちゃんともう少し念入りにプラン組んでよね? んで、組み終わったらすぐに教えてね。じゃないと私が間に合わなくなるから」


「は、はい……」


 正論で論破した責任者は正論によって負けてしまった。

 その後みっともない責任者の姿を見た三人の男たちはこれは哀れだなと心の中で同情し何も言わずに作業へと入っていく。

 五人の戦いはまだまだ終わらない。

 やることは沢山残っている。

 イベントは勿論小百合サードシーズンまでの調整。

 それが終われば小百合を筆頭としたトッププレイヤーたちだけが参加を許された特別イベントの開催とやる事は多いのだ。


 果たして今回のイベントはどのようになるのか。

 彼らの頑張りに期待だ。


 と、その時社内の電話が鳴った。


「「「「……えっ? ……社長!? お願い責任者様出て!」」」」


 四人は手を止めて、いつもなら情けないと思う人物に尊敬の意と敬意を最大限に払い彼の名前を大声で呼んだ。


「さっきは私が悪かった! 本当にごめんなさい」


 女は頭を下げる。


「だからお願い! この電話を取って! 受話器が貴方を待っているから!」


「…………」


 責任者は一瞬冷たい視線を向けてから受話器へと手を伸ばす。


 ――ガチャ。


『お疲れ様です! 私だが少し時間いいかね?』


 元気の良い社長の声に身体がピクッと反応してしまう。


「お疲れ様です社長。どうぞ――」


 責任者が社長と電話をしている間、運営室は緊張の空気で支配された。

 タイミングが良過ぎるせいだ。

 メンバーたちの嫌な予感は責任者の反応から見ても当たっているように見える。

 責任者の額に汗が流れた。

 たったの数分。

 だがここにいる全員には十分以上に感じられるほど長い電話。

 それが終わると責任者の口から安堵のため息がでた。


 社長からの言葉をメンバーに伝えた責任者は最後に小声で「……社長」と呟いた。

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