第四層の情報開示&攻略開始
夜中二人の間に挟まれて緊張で上手く寝れなかった。
一人は豊かな胸元が見えるまでパジャマのボタンを開けて無防備に可愛い寝顔を見せていた。
一人は包ましい胸元こそ見えなかったが小さいが胸元が緩い服を着ており明かりがあれば顔を近づけて上から覗き込めば見えるんじゃないかとこちらも普段見ることができない寝顔で蓮見を誘惑してきた。それによく分からないが寝ぼけてか蓮見のパジャマの袖を指で掴んで離さないと可愛らしい一面を見せてきた。
そんな状況で緊張のため眠りが浅かったためにふとっ目が覚めてしまえば中々上手く寝付けない。だって今ならバレないんじゃないかと脳が至らないことを考え始めたからだ。
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朝日が昇り、カーテンの隙間から太陽の光がロビーに射し込む時間。
「う~ん、もう朝ね……」
「ふぁ~、よく寝た。美紀おはよう」
美紀と七瀬が起きた。
瞼を擦り半分寝ぼけながら起き上がる。
これで自由に動けるようになった蓮見は一度大きく背伸びをしてから大きな欠伸と共に起きる。
「おはよう~」
「「……ッ!?」」
蓮見が起き上がると、美紀と七瀬の目が大きく見開れ、さっきまで動いていた手が止まった。まるで時間の流れそのものが止まったように驚いた顔のままピクリとも動かない。
「えっ……?」
疑問に思い視線を瑠香たちが寝ていた方向に向けると、少し早く起きた三人も固まっている。
まるで信じられない現象に出くわしたように。
一人「うん? あれ? 皆どうした?」とやっぱりよく眠れなかっただけにまだ眠い蓮見は頑張って考えてみるがどうして皆がこのような態度をとるのかが理解できない。心当たりはない、となるとなにかの罰ゲーム? とも思ったが少なくともそれはありえない。なぜならここにいる誰よりもある意味早起きしたからだ。もしゲームをしていればその時点で蓮見が気付く。だがそんなことは実際になかった。それに寝るタイミングも一緒だった。
「……はすみぃ? 大丈夫?」
驚きを隠せない声で美紀がおでこを引っ付けてきた。
「熱はないようね」
「失礼な。てか急にどうしたんだ?」
「……なんで今日に限って起きれたの?」
「はっ?」
「だっていつも寝坊も寝坊、大寝坊するじゃん。だから昨日蓮見と会う前に一度皆と話して第四層のアップデートのこと黙ってたのに……。とりあえず下見で蓮見が起きない午前中皆で一度行こうかってなって……だって、だって、だって、蓮見絶対朝起こしても起きないと思ったから……言わなかったのに」
まるで天と地がひっくり返ったような態度を見せる美紀。
それは美紀だけではない。
蓮見がロビーに視線を飛ばすと、美紀に賛同するように頷いている。
つまり……蓮見が起きた事について皆が本気で驚いて言葉に困っているというわけだ。
全く持って失礼な人たちだと蓮見は思う。
今まで実の母親に起こしてもらうことでなんだかんだ大事な日はテストの日含め四割程度はギリギリセーフで事を終えているというのに。遅刻は六割あるかないか。そんな男がこのような大事な日に遅刻などするものか。否ッ――ありえない。
「ふっ。わかってないな。俺を舐めて貰っちゃ困るぜ」
「「「「「…………」」」」」
「とにかく事情はわかった。宿題前に一発この俺様が力を貸してやろうじゃないか! 朝の準備運動がてらフロアボスを倒すのなんて朝飯前だ! ただしフロアボスを俺が倒したら午後の勉強会は優しくご指導のほどよろしくお願いします!」
決め顔で渋く決める蓮見。
最後までドヤれる理由はきっと――。
「でも蓮見くん?」
――勝つ自信があるのだろう。
「なんですか、エリカさん」
「四層へ行く為に倒さないといけない相手知ってるの?」
「知りませんが今の俺に敵はいません!」
「蓮見さん一応言っておくと……」
瑠香は少し困り顔で、
「ボスは十六歳の可愛い女の子」
「ふっ、余裕だな!」
「の幽霊――」
「ぎゃあああああ! やっぱりおれちゃまお布団の世界にいるぅうううう!!!」
瑠香の言葉から何を言いたいのか、何故美紀たちが話しだけでもしてくれなかったのか全部を瞬時に理解した蓮見は毛布を手に取りお団子になる。
さっきまでの言葉は一体なんだったのか? と、問いたくなるのは皆一緒。
だけど誰も聞かない。
聞かなくてもわかるから。
「――かもと言われています。なんでもトッププレイヤーを対象に作られた彼女は実装前の試運転で強すぎた為に実装困難とずっと前から言われていました。なんでもトッププレイヤーやそれに近いプレイヤーを当初は楽しませるための敵でしたがそれだと良くて一割弱のプレイヤーしか四層へ駒を進めれないと判断され実装は見送り。なのはかなり有名な話しです」
「んなもん、おれちゃまちぃらないもん!」
声が震えているのは決して演技などではない。
前回のイベントで少しは幽霊耐性が付いたかもと思いたかったが、それはまた夢の話しなのかもしれない。やはりアドレナリンが分泌して頭のネジが一本や二本外れないと蓮見に幽霊相手は厳しいのかもしれない。
「相変わらず情報収集全くしてないんですか?」
「してるよ! エリカさんやエリカさんやエリカさん、後は美紀からたまに色々と聞いてるもん!」
「それは……聞いているというよりかは教えてもらってるですね」
苦笑いを隠せない瑠香。
「ごめんね、蓮見くん。実は少し前から実装の話しは噂であったのよ。それで昨日ね、イベント終わってすぐに通知が来たんだけど幽霊がね……敵かもしれないから黙ってたの」
「…………」
「でも結局フロアボスはなんなのか不明ってのが今の状況だからもしかしたら違うかもしれないしそうかもしれない。だから私達が先に色々と調べて来ようってなったんだけどせっかく早起きしたんだし一緒に行きましょうか、ダーリン♪」
「いいいいいいいやです!」
「私は行きたいわ♪ ってことで行きましょう。七瀬、瑠香、多少強引でもいいから連れて行くわよ」
「「は~い」」
こうして半強制的に蓮見はゲームにログインすることなった。
果たして、第四層への道を護るボスは幽霊かはたまた代用のボスなのか。
それは自分の目で確かめるしかない。
なぜならボス戦が可能になる時間まで後十五分ある。
そのため、誰もまだボスの情報は持っていない。
蓮見のログインを確認してすぐに美紀、七瀬、瑠香の順でログインする。
「朱音さんログインする前に一つ聞いてもいいですか?」
「なにかしら?」
「蓮見くんのことどう思ってるんですか?」
「それは……ひ・み・つ。エリカちゃんのご想像にお任せするわ♪」
そんな会話を少しして朱音とエリカもゲームにログイン。




