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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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神災教にお布施


 欲望と言う名の本性を見せた蓮見は速度を上げて真っ直ぐに突っ込む。

 目の前にいる三人が武器を構え、鋭い眼光を向けてくる。

 まるで獲物を見つけた肉食動物のように圧を感じる。

 いつもの蓮見ならその視線だけで身体を硬直させているだろう。

 だけど今は違う。

 脳内で「桃源郷、桃源郷、桃源郷」と連呼して自らのモチベーションを限界まで高めた蓮見の身体は最早その程度では委縮しない。


「スキル『咆哮』!」


 大きく息を吸いこんでスキルを使い三人の動きを制限する。

 そこから三人の隙間を縫うようにしてただ通り過ぎていく蓮見。


「……ッ!?」


「えっ?」


「うそっ? はっ?」


 驚く三人に蓮見は見向きもしない。

 どころか、


「えっ!? 紅君???」


 と驚くエリカの声にも蓮見は反応こそするが返事はしない。

 だけど蓮見はただ逃げたのではない。

 これは蓮見にとって最後の賭け。

 もしここで三人が乗って来なければ――蓮見は確実に負ける。

 そう思いながらさり気なく後ろを確認すると、どうやらその心配は無用だとすぐにわかった。


「やっぱり追いかけてきたか……」


 ニヤリと微笑む蓮見。


「そうだ、それでいい……後は――」


 今からやろうとしていることを頭の中で確認。

 そして最後の確認をエリカに……。


「最後申し訳ないことになると思うんですが……いいですか?」


 その言葉にエリカはため息一つ。


「えぇ……装備はまた作ればいいからね」


 と少し名残惜しさを感じさせる声で答える。

 だけど――。


「……と言うか、これ何処に向かってるの?」


「何処って屋敷の上空ですけど……」


「……まさかとは思うけど」


 エリカの不安を肯定するように蓮見が答える。


「え? どうせ負けるなら館全壊コースの全員巻き込み型で良くないですか?」


 その言葉にエリカは、


「そっかぁ……なら覚悟決めたからどうせやるなら派手にしなさい!」


 と、何かを吹っ切れたように親指を立てた。


「イエッサーボス! 全武装全安全装置解除! 行くぜ! これが俺の全力全開フルファイアー暴走だー!」


 その言葉をキッカケ(合図)に蓮見が装備していた武器が勝手に蓮見のMPゲージを吸収を始める。

 暴走――武器に所有者のMPを捧げることでATKと弾道速度を倍にする。ただしMPが切れると同時に効果が切れ武器が壊れる。

 

 館上空付近まで来た蓮見は目を見開いて館で戦いを見守っていた者達に銃口を向ける。


「へへっ♪ どうせ俺は負ける。だけどな、忘れるなよ! 上位入賞アイテムは――

エリカ様の者だってなー!!!」


 譲渡前提いや入賞前提の言葉を高らかに宣言した蓮見は突然のことに反応が遅れたプレイヤーに向けて撃鉄を起こし銃弾を放つ。


「しまっ――!?」


「嘘だっろぉ!?」


「んな、バカな!?」


 驚きに満ちた声は蓮見には聞こえない。


「あははっ! ――バーニング俺様。愛で砲弾が飛んでくるぅ~」


 突然歌い始める蓮見。


「俺のむぅ~ねに落ちてくるぅ~熱い心鎖でつないでも今は無駄だよ~邪魔する者(攻撃)はKillヒットさ~♪」


 凄い勢いで近づいてくる三人。

 美紀、朱音、綾香に背後を取られないように身体の向きを調整。

 反撃と言わんばかりに地上から容赦なく飛んでくる攻撃を華麗に躱す蓮見。

 だけどそれでいい、と蓮見は心の中で密かに思う。


「悪いがそう甘くはいかない! スキル『朱雀の陣』」


 興味本心でいつの間にか来ていたリュークの反撃。

 蓮見の視界の先には神々しく燃える炎で出来たかなり大きな鳥――朱雀がいる。

 羽を動かすたびに熱風が周囲を襲い、蓮見の超全力シリーズによって生成された氷が溶かされていく。

 だが完全には溶けない。

 氷は表面に水滴を作りじわじわと溶け始めている。


「鬼ごっこはもう終わりだよ!」


 同時――ついに蓮見の元に三人が到着。

 エフェクトが舞う上空が意味するは蓮見が今の一瞬で倒したプレイヤーの数に比例している。それでもニコニコと歌い続ける蓮見にエリカはひたすらMPポーションを使い続ける。これでなんとかMP消費を回復量が上回る。


 ――違う。

 これじゃない。

 蓮見とエリカは脳内で同じ事を思う。


 二人が欲しいスキル、それが最後の鍵となる。

 超全力シリーズそれは誰かの力が必要――言い方を変えれば他人の力を利用した先にある力――神災。

 その神災では三人には勝てないと悟った蓮見は賭けにでた。

 この無慈悲な攻撃によって、欲しているスキルを誰かが使ってくれるのではないかと、賭けにでた。確かにリュークが使った『朱雀の陣』は強力なスキル。だけど今は違う。もっと蓮見の想像に叶うスキルが今は欲しい。


「皆! もし紅君の信者というなら願いと言う名の希望の炎を天に向けて放つのよ!」


 エリカの突然の叫びに半壊の館や付近で逃げ回っていた者達は我に返ったように、


「そうか! 俺達がお布施をすればこの神の怒り(神災)は収まるのか!」


「んなわけあるか! 騙されるな! アイツは――」


「そうだ! お前達落ち着け! アレは【異次元の神災者】を強くするためのエリカの作戦だ! だから皆エリカの口車に乗るな!!!」 


 神災教のプレイヤーに取って神災は神による捌き。

 つまり止める者の声は神災教信者には響かない。

 なぜなら絶対は神だから。


「なるほど! 皆! 我らの神に今こそ忠誠を誓うときだ!」


「WAO~ビューティフルですぅ~♪ なら私達も!」


「だから止めろって言ってんだろうがぁああああ!!!」


「アイツの前で下手な行動こそが最悪の事象を引き起こす材料なんだよ!」


「でも面白そうなので私はこっちのミカタで~す♪」


「いいですねぇ~流石は【異次元の神災者】様。最後まで盛り上げてくれますね~」


 それぞれが持つスキルを天に向かって放ち始めた。

 それを見た蓮見はニコッと微笑む。

 欲しいスキルはなかったが、これなら代用が効くと判断したからだ。

 そして何処か沈んでいた神災教の信者たちの目にも光が戻りつつあった。


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