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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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舞台チェンジと第二ラウンド開戦


 少し先走ってもう勝ったと勘違い蓮見。

 そこにエリカが声をかける。


「ねぇ、紅君。見てあそこ!」


 そう言われてエリカが指さす先を見ると準備運動を終え、十分に身体を温め終わった美紀たちがいた。それにHPだけでなくMPもどうやら満タンとやる気十分。

 今までの敵とは違いこの程度では戦意喪失どころか逆効果のようだ。

 思わず笑みを引きずってしまう蓮見。

 俺様全力シリーズを超えた俺様超全力シリーズは破壊力は当然ながら効果範囲も俺様全力シリーズとはくらべものにならない。どころか一発逆転や今回のように力の差がある時には少なからず蓮見にとって有利な展開を作ってくれる。

 だけど今回は違った。

 嬉しそうに微笑む少女たちに初めて蓮見は切り札が通じないことに焦りを覚えた。


「へぇー、面白うそうな事してくれたじゃん。まさか竜巻の中に毒煙のカーテンを作ってその中で超新星爆発だっけ? それをするとはねー。当然これで終わりってわけじゃないわよね? もっと他にあるのよね?」


「……あっ、うそっ……里美様?」


「なぁーに、くれみぃ~」


 今まで聞いたことがない言葉に神災竜が一歩後退。

 それに合わせて美紀、朱音、綾香の三人が前進を始める。


「もしかしてさっきのじゃ物足りない感じですか?」


「だね~、ってことで第二ラウンド行こうか?」


「は、はい……」


 大きく息を吸いこんで吐き出す。

 焦り始めた心を深呼吸で強引に安定化させる。


「っしゃねぇ! こうなったらやってやるよ!」


 大きな羽を動かして再び空中へ行く蓮見。

 眼前には小走りになり徐々に近づいてくる美紀。

 右サイドからは朱音。

 左手サイドからは綾香。

 別に手を組んでいるわけではない。

 ただ狙う敵が同じだけ。

 それでも意思疎通はおろかアイコンタクトもなしに自分達の有利になるように連携を取り始めた三人を今は観察する蓮見。


「俺が超全力シリーズを使えるのは後一回。それをどこで使うかそれがこの勝敗の分け目になる」


 まるで自分に言い聞かせるようにして呟く蓮見。

 エリカは何も言わない。

 ただ頭の上で静かに今から始まるであろう戦いに備える。

 最早世界を壊す者と世界を護る者の戦いがこんな近くで見られる日が来るとは思ってもいなかった。

 だからこそ気になる。

 この勝負どちらに傾くのか。

 そして最後は誰が立っているのか。

 蓮見か美紀か朱音か綾香か。

 それとも第三者か。

 ニコッと微笑んではエリカはエリカでアイテムツリーを開き残りのアイテムの残数を素早く確認する。

 エリカの目的は蓮見のお嫁さ――じゃなくて蓮見と同じ時間を過ごすことにある。

 故にこの勝負どちらが勝とうが興味はない。

 勝とうが負けようがエリカだけは適当な理由を付けて混浴する気満々だからだ。


「さて、さて、超全力シリーズに耐えた三人が相手。そして三人同時に倒すとなるとやはりここで進化するしかない。異次元を超えた先に紅君がたどり着けるかそこが山場。だけどもしたどり着ければ紅君は恐らくトッププレイヤーの仲間入りに近づけるかもしれない。それも里美達とは全く別のアプローチで」


 何かを期待するように呟くエリカ。

 だけどその独り言は集中した蓮見には聞こえない。

 蓮見は三人の動きを抑制するため高度を上げて行く。

 当然それを追ってくる三人はある程度距離を開けつつも見据える先は同じ。

 ならばと蓮見。


「エリカさん竜巻使えますか?」


「うん」


「お願いします!」


「はーい。スキル『竜巻』!」


 地上付近の風がエリカのスキルで上昇気流を作りだす。

 上昇気流はそのまま蓮見を後押しするように吹きあがっていく。

 巨大な巨体が風の力を得て加速。


「俺様加速だー」


 それを聞いたエリカはそれなら加速系スキルを使えば良かったのではと思う。

 事実エリカが後ろを振り返ると蓮見の加速に合わせて美紀たちが加速系スキルを使い追いかけてきている。距離は開くどこか縮まっている。


「逃がさないから!」


「ふふっ、逃げ切れるといいわねダーリン」


「さぁ、どうする紅?」


 後方から聞こえる声。

 すると偶然か必然か――。

 竜巻に水平方向の強風が加わり渦巻状に回転を始めた。

 ばい煙や燃焼途中の残骸による煙が巻き上げらたことにより視界が悪くなる。

 簡単に定義してしまえば煙霧状態と言えばいいのだろうか。

 微粒子が月明かりを散乱してしまい視界がどんどん悪くなっていく。

 ある程度の高度の所まで来ると蓮見が逃げるのを止めて止まる。

 どうやら戦う場所が決まったようだ。

 舞台は視界が悪い上空となった。

 だが蓮見には関係。

 見た目が変わろうが赤い点と黄色い点が見えれば何とかなる。

 システムアシストの力が蓮見に力を与える。

 逆に過酷な環境は蓮見を取り囲む三人の少女達の視覚情報に影響を及ぼす。


「なるほど。ここなら障害はない。そして私達では紅の小細工を見破るには些か状況が悪いときたか」


 周囲の状況を確認しながら美紀が呟いた。


「それに私達は全ての攻撃に対していつも以上にシビアにならなければKillヒットされる可能性も出てくる。油断すればそれだけ危険に晒されるわけね」


 美紀に続き朱音が呟く。


「長期戦になれば人間の集中力なんてもって数分。判断が遅れドッカーンなんてことにもなる。なにより最悪なのは過去を見るに視界が悪い時に限って紅の調子がいいこと。でもまぁ、やるならそう来なくちゃね。私はずっとこの時を待っていたんだから!」


 綾香も綾香で呟く。

 それはまるで自分自身に警告するように。

 だけど微笑みは崩さず楽しそうに。

 それを聞いた蓮見は。


「行きます! スキル『猛毒の捌き』フルファイアー!」


 蓮見の後方に四つの紫色の魔法陣が出現する。

 一つの魔法陣で三十本の追尾性能を持った毒矢を放つ。

 それが四つ。

 蓮見は自身の攻撃とは別に毒矢による攻撃で三人に立ち向かうことにした。


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