ついに炸裂ビッグバン(大爆発)
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――澄んだ水が綺麗な青空を反射する海面。
まるで鏡のように反射して映しだすは太陽。
白く眩い砂浜に聞こえてくる音は波の音。
さらに鳥の鳴き声、楽しい笑い声……。
綺麗な素足を浅瀬に浸け戯れる一同は一つのビーチボールに集中していた。
「はい、蓮見君パスよ♪」
「任せてください! ほい、瑠香パス!」
エリカからのパスをトスして瑠香へと繋ぐ蓮見。
「はーい」
元気よく返事をして、それを七瀬へと繋ぐ瑠香。
微笑ましくも周りの男達から見たら美女たちと戯れる蓮見の目は優しい言葉と裏腹に真剣な表情をしていた。
「たまにはいいわねぇ。こうして皆でわいわいと楽しむのも」
「だね。お母さん」
「ってことで、ダーリンが勝ったら今夜は混浴、負けたら罰ゲームで私達皆の言う事をなんでも一つずつ聞くってどうかしら?」
そんな朱音の問いかけに、
「俺が負けるとでも? えろが掛かった俺は無敵ですよ?」
「ふふっ。なら良いわね?」
コクりと蓮見が頷いた。
その瞬間、周りで見ていた観衆たちは気付かない。
蓮見だけでなく朱音と美紀、そしてエリカの目が鋭く本気の目になったことを。
七瀬と瑠香のように皆が温厚な性格だったら平和な時間は続いたのかも知れない。
そっと、身を退いた二人。
違う、勘の良い二人だけは今だけは三人に譲ることにしたのだ。
だけど――罰ゲームが何かを明確にしなかった朱音に危機感を覚えた男は自分の欲求に素直になるだけでなく、本能に忠実になることにした。
(――悪いが女の子の裸体を見るまでは負けるわけにはいかないッ!!!)
さっきまでどこか緩やかな雰囲気だった空間が殺伐としたものへと変わっていく。
「ならダーリンからゲーム開始ってことで」
そう言って朱音が優しくボールをトスして回す。
それを合図に四人の戦いが始まる。
四人はそれぞれ自分の願望があり、それを叶える為全力で見えない剣を腰から抜き構える。蓮見からトスされたボールは潮風によってユラユラと揺れながらエリカの元へと飛んでいく。
「はい、美紀」
それはエリカの計算されたボール。蓮見の意地悪なボールを難なくレシーブしたエリカはボールを高くトスして美紀の頭上へと持っていく。
「――ッ!」
それは狂うことなく無回転を維持したまま美紀の頭上へと落ちて行く。
美紀が下半身に力を入れて膝を折り曲げ伸ばす。
そして全身のエネルギーを下半身から上半身へと余すことなく伝え放たれたジャンピングアタックはボールに回転を与え凄い勢いで蓮見の顔面へと向けられる。
だが、テンションが高い蓮見は一切動じない。
(なるほど、エリカさんと美紀が手を組みやがった、なら)
普段の倍以上集中した蓮見は鋭い観察眼を持ってして素早く微調整に入る。
そのままバックステップをしてボールの勢いを腕の中で殺し和らげていく。
曲げた腕を伸ばす手前、ボールを回す相手の位置を確認し腕の力を調整しそのまま低空飛行を意識して朱音へと回す。
――回すと言うよりかは美紀のアタックで得たパワーの方向転換だけをしただけ。
「…………」
手が痛い。
だけど相手はプロゲーマー。
プロのバレー選手ではない。が運動神経だけで言えば才に恵まれている方の人間。
向けられた欲望の一撃を正確無比にエリカへとパスし、
「エリカちゃん!」
と、再度自分にボールが来るようにする朱音。
「悪いわね! 私負けず嫌いだから!」
そう言って今度は朱音がジャンピングアタック。
それも美紀とは違い容赦なし。
蓮見が反応してギリギリ間に合うか間に合わないかの絶妙な位置へと放った。
辛うじて間に合ってもそれはもう致命傷。
「良し! 蓮見君の負けね!」
「やった! これで蓮見は――」
一足先に喜ぶエリカと美紀。
朱音もニコッと微笑み勝利を確信する。
だけど蓮見は不敵に笑い告げる。
「行くぜ、俺の全力シリーズ――」
聞き覚えのあるフレーズに女三人の表情から笑みが消える。
幾度となく向けられたソレは現実世界でも使えると認識したから。
「アルティメットインパクト!!!」
足の裏を爆発させ、条件反射でボールを追いかけた蓮見。
力強い踏み込みは朱音が想像した以上に力強くボールとの距離を縮めていく。
だが、間に合わない。
ボールの正面に回るには。
そう女三人が思い始めたタイミングで蓮見は右足に限界ギリギリまで力を溜めて一気に爆発させる。
得た推進力を左足へと伝え、更なる加速。
それから勢いよくボールに向かってジャンプし空中で身体を捻り腰を回し得た遠心力を伸ばした腕へと繋げボールを全力で殴る。
殴り飛ばされたボールは――無慈悲に乱回転しながらエリカへと飛んでいく。
(勝った! エリカさんじゃ反応できても返せない)
事実驚くエリカは飛んでくるボールを見てビビッていて身体を硬直させている。
だが、――。
「エリカ!」
「エリカちゃん!」
美紀と朱音最強コンビがボールより先にエリカを護るようにやって来る。
そして腕では蓮見の全力を受け止めれないと踏んだ”か弱い女子二人”はそれぞれその場で片足に力を入れて砂浜に足を固定しもう片方の足をあげる。
まるでサッカー選手のように。
勢いよく振り回された二本の足は――蓮見の全力を正面からねじ伏せ更なる力を得て返球された。
――ドンっ!!
「これで終わり! 蓮見覚悟!」
「悪いわね、ダーリン! 悪いようにはしないから大人しく私の玩具になりなさい♪」
ボールが空気を裂く音と一緒に蓮見の元へと飛んでくる。
位置的にはおへそよりした。ちょうど下半身あたりと勝負を決めにきている。
蓮見は深呼吸をして息を整える。
「俺も男……願望を叶えるまでは負けられないんだ! もういっちょ、俺の全力シリーズ神風旋風アターーーーーーーーック!!!」
諦めが悪い蓮見はそのままボールへと向かって突き進み飛び込む。
そして、ボールに向かって頭突き――ヘディング。
する予定。だったが、慎重になるばかりタイミングを見誤りボールが蓮見の玉座にクリーンヒット!
玉と玉の接触により起きたビッグバン(大爆発)により蓮見は耐え難い苦痛と痛みを受け敗北した……のだった。。。




