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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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興味深い噂話


 とある日のこと。

 人知れぬ場所で中年の男二人がゲーム内で密かに憩いの場所として人気がある泉の前で腰を降ろし会話をしていた。


「おい、聞いたか?」


「なにを?」


「紅さんに対抗する為また新しく作られたNPC(女性プレイヤー)が明日から試運転されるらしいぜ?」


「それって……小百合とは別にってこと?」


「あぁ。それに聞いて驚くな。噂ではそいつの討伐に成功すると限定アイテムが手に入るらしいぜ。ただし出現場所は第一層全てが行動範囲らしく運が良くないと遭遇すら難しい。それに出現期間は明日の朝から三日後の夜までとこれまた短い余興なんだなーこれが」


「マジかよ……。でもなんか面白そうだな」


「そうだろ? ちなみに小百合を火とするなら今回は毒らしいぜ」


「正に紅さんの象徴である火と毒ってわけか」


「でもこうして考えてみると時期的にもゲーム内の夏祭りイベントって感じがするな」


「ったりめぇよ。限定アイテムと聞いて噂では里美とエリカが目の色を変えたって言われてる。つまり――」


 無精ひげを生やした中年の男は悪い笑みを浮かべて、


「――そうゆうことだよ。あの紅さんも動くってことだ。なんたってあの人を唯一制御できると言われている里美と唯一あの人ですら最近頭が上がらないパトロンの役目を果たすエリカからの頼みとあっちゃ動くしかないだろうからな」


 と、嬉しそうに言った。


「そうだな。願い叶うなら見てみたいよな、運営の新しい神災対策が勝つかはたまたとんでもない神災を引き起こしてオリジナルがそれすら凌駕するかを」


「だよな! あー、早くライブ映像でねぇーかな~」


「バカ、まだ気が早ぇーよ」


「だな」


「「あはははは!!!」」


 楽しそうな会話が森奥の泉の方から聞こえる。

 そのような楽しそうな会話がここ数日ゲームの中のあちらこちらで聞こえていた。

 その頃、蓮見は夏の補習を受けており毎日学校に登校し夏休みの宿題とは別に毎日提出の宿題をひたすら解いており、事実としては美紀とエリカも目の色は変えている物のとても頼みずらい状況になっていることから蓮見には何も言っていないと言うのが現実の話しだった。

 だけど噂とは不思議で伝播していく過程の中でその者たちにとって都合が良い形に変わっていくのは事実だと言えよう。


 世の中不思議で偶然か必然か蓮見の補習登校日と特別夏休み宿題は今日までだったりするのもまた事実。



 ■■■


 夏休みに入ったと言うのに日頃の授業態度ならびにテストの結果が散々だった蓮見は担任の先生から「蓮見君は明日から私と一緒にしばらくワンツーマンで補習だから登校ね♡」と言われ、他の生徒が集団で補習を受ける中、他の追随を許さない点差で学年No,1(最下位)を手にした男は蓮見の担任兼学年生徒指導を務める女教師にコッテリ夏休みに入ってからの一週間絞られ強制的に勉強漬けの日々にさせられた。


 この男本当にバカなのだ。

 今では大暴れしニコニコ動画やyoutubeなどで有名人クラスで再生数を次々と勝手に編集され勝手に投稿されているのにも関わらず本人の知らない所で数百万PVをいとも簡単に取っているのだ。それにアップロードされて数時間で沢山の人のオススメに出てくる動画に蓮見が主役として映っていたら担任はどう思うだろうか?


 ――この子テスト前なのに何をしているのかしら?


 多分、普通の常識人ならそう思うのではなかろうか。

 現に一緒に映っていた美紀に関しては担任も「楽しそうでいいわね、美紀ちゃん♪」と微笑んで見ていられたのだから。


「……はぁ~」


 大きなため息ついては天井を見上げる男――蓮見。


「あのね~、ため息をつきたいのはこっちなんだけど?」


「……すみません」


「それで問題は?」


「はい……サッパリわかりません」


 担任は今度こそ大きなため息をついた。

 もうこの状況に怒りを通り越して呆れているからだ。


「なので一つお願いがあるんですけどいいですか?」


「なに?」


 蓮見は希望を目にのせて、真剣な表情と声で言う。


「美紀にテレフォンしていいですか? それかフィフティーフィフティー使わせて下さい!」


 何処かのクイズ番組の知識を使う蓮見に担任はもう一度ため息をついた。

 それから手を頭に当て「やれやれ」と小声で呟いた。

 高校二年生にもなって高校一年生の内容がまったく理解できていない。

 それだけならまだ担任も蓮見の言っている事がわかる。

 なのだが、蓮見は前回の小テストで美紀の家庭教師ありきで高得点を叩き出し、その後すぐに行われた中間テストでも高得点(平均七十九点)をたたき出しているのだ。なのにも関わらずテストが終わったと同時に全部忘れ、あろうことか期末テストは自分だけの力で挑みテストの平均点六点をたたき出してきた。一体人間はどう転べばそれだけの天と地が入れ替わるのだろうかと自問自答してみるが担任の中で答えは出なかった。なにせ教師生活一の不思議問題児が今目の前にいるのだから当然だと言えば当然だと言えよう。


「本当に仲がいいわね。でもだめ。美紀ちゃんに聞いてもそれは美紀ちゃんの力であって蓮見君の力じゃないでしょ? それだと留年が確定しちゃうから何度も言っているけど夏休みの宿題と特別課題も自分一人の力でしなさい。最悪お節介な幼馴染がどうしてもって言って来たら夏休みの宿題だけやり方を聞きなさい。特別課題は必ず自分一人ですること。先生蓮見君のだけは念入りに全部確認するから、わかった?」


「……はーい」


 落ち込みながらも担任の言葉は正論だと受け止め蓮見にとっては超難しい問題に再び立ち向かう。そんな蓮見を見て担任は心の中で『たぶん、この子やればできる子なのよね~』と密かに思う。その根拠は前回の中間テストにある。つまり誰かとやる、誰かの為に頑張る、自分の為に頑張る、そう言った目的意識を持った時の集中力こそが蓮見の長所で持ち味なのだと担任は思っていた。だからその気になるように今もこうして頑張っているのだが、なかなか難しい。


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