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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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【異次元の神災者】VS朱音 前哨戦


 強烈な爆風のため当然四人(蓮見三人と朱音)の身体も宙へと舞う。


 ただし今回は多くの観客もその身を空中に放りだされる結果となった。

 場所をわきまえずに使ったのだ。

 ダメージを受けないだけで神災は勝負に関係のない者達を容赦なく巻き込み、戦闘区域ではない為にHPが減らない、つまり言い方を変えれば地面に激突した痛みだけを味わう夢のプレゼントを与える事に成功した。

 ただし本人はそんな所まで気が回っていないので、沢山の悲鳴には一切耳を傾けることなく全てスルーしていた。


「だから、いつも私を巻き込むなーーーーー!!!」


「里美うるさーい!!!」


「てかアンタでしょ!!! こんな所でこんな大爆発するように言ったの?」


「違うわよ! 今回はコレじゃないわよ!!!」


 トッププレイヤーの美紀達は空中に放りだされた程度では無様な姿を見せることなく難なく地面へと着地する。ついでに七瀬と瑠香がエリカの身体を支え三人仲良く観客席へと続いて着地する。


「沢山の悲鳴が聞こえる……」


 七瀬は空を優雅に飛び回る多くのプレイヤー達に心の中で謝る。


「「「「「きゃーーーーーーーーーー」」」」」


 グキッッッ


「「「「「じ、じめんがぁーーーーしぬぅ~~~~」」」」」


 ドンッ!!!


「「「「「く、くれないさまぁーーーー!!!」」」」」


 ごきっ!!!





 そんな状況下でも蓮見は朱音だけに集中していた。


「「「スキル『猛毒の捌き』!」」」


 三人の蓮見がそれぞれスキルを使い、俺様戦闘機ごっこを開始すると同時に地面へと落ちて行く朱音の後を追い弓で攻撃していく。


「悪いが、ここで倒す!」


「ん~、この程度で?」


 空中で身動きが取れないはずの朱音が余裕の笑みで答えた。

 その事実に嫌な予感がする蓮見。


「とりあえず装備品で爆発と火はある程度軽減できたし、この空中でも別に私は困らないんだけど次はどうするの? 単純な小手先だけの技じゃ私には一切通用しないわよ、く・れ・な・い・く・ん♪」


 その言葉は誰が聞いてもわかるぐらいに余裕に満ちている。

 それは嘘なんかじゃない事も悔しいが見てなんとなくわかる蓮見。


「なら、これでどうだ! 俺様達も頼む!」


「「おう! 任せろ!」」


 通常攻撃とは別に三方向同時による猛毒の矢の追撃。

 猛毒の矢は動きを読まれないようにそれぞれの蓮見が操り不規則に二十本ずつ連射し残りは足場構築ともしもの時の防御手段として温存している。


 風を切る音を立てながら向かって行く猛毒の矢。

 その総数は六十。

 さらに通常攻撃で今も放ち続けている矢が現状で十五。

 この数を捌くなど到底不可能に思える。

 それが自由に動ける地上ならまだしもここは空中で朱音が七瀬と瑠香と同じスキルをメインで習得していると考えるなら空を飛ぶ方法を持っていないと思われる。

 そう考えればようやくチャンスが回ってきたと捉えられるはずなのだが、さっきから向けられる余裕の笑みと声が気になってしょうがない蓮見。


「次はどう出てくる?」


「そうね~葉子ちゃんがイベントで使った技を使ってもいいけどMP勿体ないし、その応用を見せてあげるわ」


 蓮見は分身達に合図を出し三人が散開する。


「勘はいいようだけど、一つ。私相手に散開程度では足りないわよ?」


 背後から迫る猛毒の矢がついに朱音の背中を射程圏内に収める。

 後数十センチ。


 ――次の瞬間。


 朱音が蓮見の視界から消えた。


「――ッ!?」


 慌てて視線を地上に移すがいない。


「嘘だろ? どこにいった?」


 驚きが隠せない。

 だけど幾ら探しても地上にはいない。

 空が飛べない朱音が何処かに行くと考えた場合、下にしか行けるはずがない。

 そう思うが、やはりいないのだ。

 悩む蓮見。

 朱音が瞬きをした瞬間に一体何をして、どういう手を使い、蓮見の視界から……いやこの闘技場から姿を消したのかがわからない。

 脳内回路限界ギリギリまで使い、今の状況を整理するがサッパリ。

 一瞬、逃げた?

 と考えるがそれにしては闘技場の空中にある朱音のHPゲージとMPゲージが消える前と何も変わっていないのが……。


「もしかして!?」


 まさかと思い、視線を上に向けると。


「逃げろ、ブルー! 上だ!」


「ッ!? ぅ……っそだろ!?」


 脳天からレイピアの切っ先がブッ刺さったブルー蓮見がKillヒット判定され死亡した。死体となったブルー蓮見が光の粒子になる前には朱音はもうそこにはいなかった。蓮見の視線が朱音の姿を追う。


「嘘だろ……マジかよ」


 朱音は蓮見の放った猛毒の矢を足場に空中を走り飛び回っていた。

 減少したMPゲージでまさかとは思ったが、まさか『加速』を使い、機動力をあげて対抗してくるとは思いにもよらなかった。それもただ機動力をあげただけじゃなかった。


「私の行動を予測して矢を放ってくるなら、それを逆にこっちが誘導すればそこに足場が出来る。原理はとても簡単。だから自分の技が相手に利用される事になる。これも経験の差ってやつよ」


 朱音の圧倒的な経験値がないとそんな人間離れしたことはできないだろう。

 まさか自分に向かって四方八方から不規則に飛んでくる猛毒の矢をギリギリで躱し、その矢の上に足を瞬時にのせ足場にする。そんな一秒でもタイミングがズレれればどうなるか考えただけでも恐ろしい事を何のためらいもなく笑顔でする朱音はやっぱり蓮見が勝てる相手ではないのかもしれない。


「へへっ」


「なにが可笑しいのかしら?」


「いんや。すげぇーなって思っただけですよ?」


 お互いに空中で不敵な笑みを溢した。

 それが何かの前兆なのかは誰もわからない。

 もしかしたら杞憂かもしれないし、そうじゃないかもしれない。

 だけどそれを見てしまった七瀬と瑠香は観客席でボソッと呟く。


「マズイ……お母さんさらにギアをあげる気だ」


「まだ小手調べ。だけどこのままじゃ紅さんが負けちゃう」


 そんな心配の声をあげる二人とは別にエリカが無意識に蓮見を見ながら呟く。


「まさか……もうアレをする気なの?」


 まだ両者が本気じゃないような発言をほぼ同時に聞いてしまった美紀は頭を掻きむしりながら表情を曇らせる。


「観客の約七割と少しが苦痛の声をあげて……まだ余力ありか……二人共……。相変わらずね。それにしても朱音さんは規格外に相変わらず強いけど気になるのは――」


 美紀の言葉は、近くにいるルフランと綾香の気持ちを代弁した物でもあった。


「――なんで紅もあんなに楽しそうな笑顔なのかってこと……」



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