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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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美紀の鬱憤



「はいはい。ってか私を連れて来た理由って……丸投げが理由だったのね」


「……さぁな」


 手を振りながら立ち去っていくルフランとフィールドの奥深くから遅れて姿を見せてきた美紀。


「何で里美がここに……?」


「ルフランに話しがあると誘われ、立ち話しもあれだからって適当にボスを狩りながら話そうってなったら、知ってか知らずか紅が私達の後を追いかけてきたからだけど?」


 フレンドリストとMAPを見ながら推測を述べた美紀に蓮見は納得する。


「なるほど」


「朱音さんに会ったんでしょ? んでどうするの?」


「それを今悩んでる……」


「逃げるの? 私達と違って相手がプロ。それでいて負けたら何かを失うってわかったら急にしょげて、ミズナ達は助けてって言ったの?」


「それは……」


「話しはもう聞いている。言ってないんでしょ? なのにそうゆう時だけ勘がいいのかすぐに自分で背負いこんで落ちていく。いい加減にして! ミズナもルナもそれがわかってたから素直に助けてって言えなかった。なんで一番肝心なそこには気付かないのよ、ばかぁ!!!」


 里美の声が震えた。

 それと身体も僅かに震えた。


「だからと言って勝負から逃げるのはゲーマーとして間違っている。だったらどうするの、紅!? 友達がゲームを通して色々と迷っている。だったら紅は紅でどうやってあの二人に希望を見せるの!? 紅は誰の為に、なんの為に、ゲームをしているの! 答えて!!! 紅は私の親友をどうしたいの!!!」


 その言葉は美紀の心の叫びだった。

 あれだけ、沈んでいた心がたったこれだけの言葉で迷いを断ち切っていく。

 それは錆びた鎖が次々とちぎれていくように。

 そこに封印されていたなにかを開放するように。

 死んだ魚のような目に再び闘志が舞い戻っていくのを実感する蓮見。



「そんなの決まってる」


 一息ついて。


「助ける! 今が無駄な時間じゃないって事を教えるに決まってるだろ!」


 その言葉に鼻で笑う美紀。


 口角が僅かに上がり、白い歯が少し顔を出す。


「その言葉信じていいの?」


「当然!」


 拳を握り親指だけを見せて、満面の笑みで答える蓮見。

 そんな蓮見に釣られて美紀も笑顔になる。

 それからゆっくりと近づいてくると、美紀の両腕が蓮見の腰に巻き付く。


「困ったらいつでも相談して。私にできる事なら力になるから」


「里美……」


 そのまま力を入れられて、身体が密着する。


「朱音さんは現役のプロ。それもかなり上位のランカー。だからね、これだけは伝えて置く。あの人は間違いなく私より強いの――だから無茶だけは――」


「任せろ。いつも通り俺は俺の全力を持って戦ってくるからよ。それに第四回イベント終わりに新しいスキルも手に入れた。きっとなんとなるからよ」


 震える手で美紀の頭を撫でる。

 言葉では強がっていてもやっぱり身体は正直。

 それでも、男として、ギルドリーダーとして、いやただの友達として、損得勘定なしで七瀬と瑠香には望む環境で自由にゲームをして欲しいと思える。ただそれだけの為に、蓮見は美紀に強がってみせる。本当に自分でもバカだなと思う。プロ相手に戦って勝てるわけがないのにと。でもルフランが言った通り何もせずに負けを認めて仲間が辛い思いをするのをただ黙って見ているだけなんてことは……できない。例えそれが実の母親相手でも。大切な誰かの幸せを願うのが親だけの特権だというなら、そのルールすら破壊し自分の意思を伝えるのみ。


「なぁ、里美から見て俺どんな存在か一応聞いておいていいか?」


 ここで自信をつけて、気合いを入れようとする蓮見だったが、


「うん。人様の都合や気持ちを上手く察してくれない最低野郎だよ♡」


 ――グハッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!?


 会心の一撃が決まった。

 せっかくいい雰囲気だと思った蓮見の心は今度こそ破壊された……。



 涙目になり、落ち込む蓮見は無意識に現実逃避先にと手でアイコンを操作しログアウトして現実世界へと逃げる。

 現実世界で七瀬と瑠香にやられ、ゲームの世界で朱音にやられ、最後は美紀にやられた蓮見の心は限界寸前。人が真面目な事を考えている時に限って、人の心を抉ってくる人達を(人として)好きになった代償はかなり大きかった。


 だけど女の子達の鬱憤も我慢の限界にタイミング悪く来たと思えば、自分で蒔いた種だと思うしかなかろう……。本人に悪気はなくても第四回イベントの行いを振り返れば当然。。。



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