【It's Fire Time!】のエリカ
二人の心配に答える美紀。
「スキル『巨大化』!」
すると槍が巨大化し蜘蛛の糸を強引に解いて大きくなる。
「少しダメージ受けたけど大丈夫」
わしゃわしゃと奥から聞こえる音。
「小さい蜘蛛……まだたくさんこの奥にいるわね……」
「なら私の出番かな。里美少し後ろにいて」
そのまま前に出るエリカ。
手に持っているのはなんだろうと思って見ていると、それを蜘蛛の集団に向かって思いきっり投げるエリカ。
蓮見の脳内ではある事が気になっていた。
それは。
――『何故だろう? 表面に「危険」と言う文字があったのは……』という疑問。
次の瞬間、どこか焦っているのか慌てた美紀の声が聞こえてくる。
「紅!」
慌てて腰を低くして耳を防ぐ美紀。
首を傾ける蓮見に飛び掛かってそのまま一緒に地面にダイブするエリカ。
巨大な蜘蛛が三人を襲うと近づいた時、後方から鼓膜が破れるかと思える轟音が聞こえ凄まじい衝撃波と一緒に灼熱の炎が三人のいる一本道に出現する。ちょっと掠っただけで蓮見、美紀、エリカのHPゲージを一瞬で3割近く奪った炎が消えるとそこには巨大蜘蛛と小さい蜘蛛は一匹もいなかった。全て燃え尽きたからだ。
エリカが額の汗を袖で拭きながら起き上がる。
蓮見は信じられない光景を見たかのように言葉を失っていた。
「ふぅ~、危なかったわね」
「ふぅ~じゃないわよ。ふぅ~じゃ。あんたが一番危ないわよ!!! 誰が見てもあれは火力が高過ぎるでしょうが!!!」
「仕方ないじゃない、昨日興奮して徹夜で武器作ってたら寝ぼけて爆薬の量通常の10倍にしちゃったんだから。そんな危険な物こんな時しか使えないじゃない?」
「今すぐ捨てなさい! 私はてっきりボス部屋を護るモンスターじゃなくてエリカに危うく殺されるかと思ったわよ!」
「嫌よ! 爆薬だってタダじゃないのよ?」
「……もういい。でも絶対にもうボス部屋まで使わないでよ」
「当然!」
美紀の指示で三人ともHPポーションを飲んでおく。
蓮見はこの時思った。
エリカは絶対に怒らせてはダメなお方であると。
その後少しでも出番を作りたいのか隙あらば一番前に行こうとするエリカと意地でも前に出したくない美紀の衝突が何度か起きた。しかし美紀の頑張りが実り三人は無事ボス部屋に到達する事ができた。
目の前にある黒い大扉を開けて中に入る。
天井が高く広い部屋は奥行きがあり、一番奥には恐らく二層に続くと思われる魔法陣がある。三人が部屋に入り数歩歩くと背後で扉が閉まる音が聞こえてくる。
そして。
魔法陣の前にプレイヤーが侵入できない結界が張り巡らされ、上空から黒龍が姿を見せる。名前はダークネス(ドラゴン)でLv.30。
ダークネスはその赤く光る瞳で三人を見下ろしながら地面に着地し、威嚇するように雄たけびをあげる。
「来るわ。紅は構えて私の援護。エリカは……エリカは私達が危なくなりそうだから下がってて」
一瞬美紀がエリカを見て迷ったが、今回は当初の予定通り後方で大人しくしてもらう方向で行くらしい。エリカが頷いて後退する。
「わかった。援護は任せろ!」
「えぇ! 私も全力で行く。しっかり付いてきなさい」
「当然だ! 逆について来れなくなるなよ」
「ふん。そのセリフはそのままお返しするわ」
ダークネスのHPバーが出現する。
いよいよ戦闘開始だ。




