余興と本気の切り替え
その頃。
飛んできた雷をどうにか対処しようとしていた美紀の身体が先回りしたミズナによって受け止められた。
「大丈夫?」
「ありがとう」
目の前に出現した直径五メートルの円形で薄い緑色をした盾とキリンの放った雷を受け止める。
それと同時に美紀のHPゲージが回復を始める。
だけど、止まらない雷。
七瀬はキリンを挟み反対サイドにいる蓮見を見て、相変わらずよくも簡単にこの攻撃を凌げたなと思った。
「なら、スキル『サンダーブレイク』!」
七瀬が展開した【導きの盾】を貫通した雷が今度は七瀬のスキルで作られた雷と衝突する。
二つの雷は眩しい光を放ちながらバチバチと音を鳴らし消滅していく。
「助かった」
「うん。てか私達はチームで今は動いている。もっと仲間である私達を頼って」
「そうね」
「確かに現状遠距離攻撃は殆ど意味がないのは認める。だけどキリンの注意を向けたり、動きを抑制したりは出来る。なにより里美とルナのサポートは出来る。だからもっと……」
「それ以上はいい」
「……里美」
七瀬の手をのけて立ち上がる美紀。
そんな美紀を心配そうに見守る七瀬。
「一つだけ聞いてもいいかな?」
「うん。どうしたの?」
七瀬は美紀の隣に行き、視線をキリンに向けて聞く。
「皆ついて来れるかな?」
その言葉に七瀬は大きなため息をついた。
それから一度深呼吸をして、心を落ち着かせてから答える。
昔ならそれを答えるのに迷いがあった。
だけど今は違う。
なぜなら……。
「神災と里美の本気。振り回されて大変な方はどっち? って考えたら答えは一つだと思うけど」
七瀬は心の中で確信していた。
【神眼の神災】を超えるじゃじゃ馬などそうそういるわけがない事に。
そして、誰よりも信じていた。
【神眼の神災】は仲間を蹴落としたり、裏切ったり、傷つけたりするやつじゃないと。
ただ、たまに火力を間違えて周囲を容赦なく巻き込んでしまうただの破天荒なのだと……。
「ふふっ。それもそうね。ならちょっくら本気で行くから紅とエリカと一緒に援護お願いね」
美紀は大きく息を吸い込む目を閉じる。
それからゆっくりと息を吐き出しながら目をあける。
「背中は任せる」
「えぇ。ただし神災には気を付けなさい」
「なにを今さら。愚問よ」
「そう……。なら行きなさい。だけど私もここからは全力で行くから遅れたら里美を見捨てる。それが嫌なら私についてきなさい」
「ならその言葉そのまま返すわ」
二人は不気味な笑みを浮かべて同時にキリンへと向かって走り始めた。
それに気付いたエリカはキリンの攻撃を躱して全力で走り距離を取る事に集中した。背中を向けるのは少し怖かったが、蓮見の援護射撃がキリンの注意を惹いてくれて比較的に余裕を持って逃げる事が出来た。




