スイッチ
蓮見が囮としてアルティメットを引き付けてくれている間に、美紀とエリカは急いでHP、MP、毒の異常状態を回復する事にした。
覚醒により全ステータスが倍になった蓮見は身体が軽くなった感じに襲われていた。
「おぉ! これは凄い! だけど……」
走り回りながら矢を放ち、自身もまたさっき『爆焔:炎帝の業火』で使用したMP回復に努める。だが一人で請け負うにはかなりの強敵だったらしく、かなり苦戦している。
手榴弾を飲み込みダメージを受け怯んだ首が復活し、三方向から襲ってくるためだ。
だが反撃をしたくても矢は全て遠距離攻撃用の障壁に弾かれてしまう。
障壁をKillした部分なら攻撃が通るのだが、なにせ相手も動く事から少しでも場所がずれるとダメージが入らないのだ。
「そうなるともう《《あれ》》しかないが……全力シリーズを使う余裕が……」
ステータスが倍になった状態でもアルティメットの猛攻は躱すだけで精一杯。
こう考えると改めて、瑠香と七瀬がどれだけ凄いのかがよくわかってしまう。
そうは言っても二人はまだ息を切らしている。
助けを呼びたくても、不可能。
致命傷を避けながら、許容できる攻撃は無視し、こちらも攻撃をしていく。
でなければまだ回復途中の美紀とエリカの方にアルティメットが向かってしまうかもしれない。それ以前に瑠香と七瀬の方に行けばそれこそ面倒な事になるからだ。
その時。
アルティメットが大きくジャンプし、空中で身体を回転させる。
そのまま『ポイズンテール』を蓮見にお見舞いしてきた。
「うそ!? その巨体で飛べるの!?」
予想外の行動に蓮見が真横に飛び攻撃を躱そうとするが、衝撃波に巻き込まれ吹き飛ばされてしまう。
「スキル『虚像の発火』!」
すぐに反撃するが、アルティメットの咆哮がそれをかき消す。
HPゲージが一定以上減った事によりアルティメットのスキルが増えたのだ。
咆哮――遠距離攻撃の無力化。ただし一度に無力化できる量には限度があり、インターバル三十秒必要。
「ちっ……覚醒がきれたか」
急に身体が重くなった。
これは確かに男の俺でも反動がキツイなと実感する。
「はああああああああああああああ!」
雄たけびをあげ、美紀がアルティメットの後方から突撃してくる。
どうやら回復が終わったみたいだ。
「ウォォォォォ!!!」
アルティメットが鳴くと三つ首が蓮見、美紀、エリカにそれぞれ向けられる。
それから大きく息を吸い込み、吐き出す。
攻撃性のブレスとなった。
蓮見とエリカは反応が遅れ、その攻撃を諸に受ける。
だが、美紀だけは姿勢を低くすることでそれを躱していた。
「甘い! スキル『パワーアタック』『連撃の舞』!」
ダメージを与えたことで怯むアルティメット。
「スキル『ライトニング』!」
電撃を囮としてアルティメットの足元まで行き、さらに連続攻撃をしていく。
その光景を見た蓮見は美紀を信じて、一旦攻撃の手を休めエリカの元に行く。
「――――なんですけど、手伝ってくれませんか?」
「任せて!」
蓮見が美紀の援護射撃をして注意をエリカに向かないようにする。
「里美頼む! 今から俺と二人で少しだけエリカさんを自由にさせたい。力を貸してくれ」
「わかった!」
ここから久しぶりの最強夫婦での戦闘へと切り替わる。




