最恐VS最強 試合 開始
美紀と別れ控室にやってきた蓮見。
両手にはチョコバナナとたこ焼きを持っており、どこかお気楽な雰囲気があった。
それから美紀に買ってもらったチョコバナナを食べながら控室の椅子に座る。
そのまま蓮見は昨日の夜考えた事を頭の中で再度確認していく。
「昨日わかったことは正面から戦っても勝てないと言う事だ。里美とルナには昨日近づかれてボロボロにされてミズナさんには距離を取ったままボロボロにされた。スキルなしとは言え実力差は雲泥の差だった……」
口に物を含んでいるせいか真面目な顔をしていてもどこか格好がつかない蓮見。
だけど控室には今蓮見以外誰もいない。
「それから昨日里美から聞いた話しではルフランはスキルも多彩で強いと言う事だ。なら俺も最初から出し惜しみなしでいくしかないよな」
蓮見の最大の武器は超短期的なスキル使用回数の限界が来る前にその破壊力によるごり押し戦法に似た所にある。制限がかかれば掛かる程蓮見の瞬間火力は凄い勢いで減少する。もしそうなったら、PS以外にもスキル面でもハンデを抱える事となる。そうなっては蓮見に万に一つの可能性も勝ち目がないのだ。
「ん~たこ焼きも美味しい――じゃなくて水爆やっぱりこれが今日の鍵だよな」
蓮見は今日の試合ではまだ誰にも見せていない新しいスキルを使うつもりはない。
これはあくまで今後の事を考えての保険でもあるからだ。
「となると、俺自身も被害を受ける。HPゲージのコントロールこれができなくなった時点で俺の負けなんだよな……。そう簡単にKillヒットやテクニカルヒットなんて絶対させてくれないよな……」
蓮見は昨日の模擬戦闘で美紀だけでなく七瀬と瑠香にも本気の本気で挑んだが一度もKillヒットやテクニカルヒットは起こらなかった。と言うよりかは全部簡単に躱されてしまったのだ。何でも視線と矢を放つ前の身体の向きでおおよそ何処を狙っているかわかるから対処が簡単だと三人にサラッと言われた時は正直ショックしかなかった。それから三人から言われたことはそこにスキルが加わるから対処が難しくなると言う事だ。純粋なPSが低いならばそれをスキルでカバーするしかないわけだが、正直美紀より強い相手に勝つことは無理だと蓮見は思っている。ただやるからには勝ちたいなーとも思っているのだ。そう半分諦めているからこそ蓮見はいつも通りのままなのだ。
「ならやっぱりあれやるきゃねぇな!」
そう言って美紀に買ってもらった物を食べ終えた蓮見が気合いを入れて立ち上がる。
そして控室を出て闘技場へと向かった。
時刻はちょうど十三時。
遂に最恐VS最強の戦いが実現する時がやって来た。
普段無人に近い闘技場に集まった沢山のプレイヤー達。
本来は戦闘の練習をする為の場所で、あまり人気がないのだが、今だけは違った。
今まで見た事がない新規のプレイヤーを含めてゲーム開始から名を轟かせる猛者たちまでと増設された観客席だけでは既に入り切れない人達で溢れていた。通路は満員電車のように埋まり自由に動く事すらできない。これだけで二人合わせた知名度がどれだけ高いかがすぐにわかる。闘技場外にも昨日急遽取り付けられた大型ディスプレイに二人の試合が見れるようにと多くの人達が集まっている。日曜日のお昼と言う事がわざわいしかなりのプレイヤーが押し寄せる事となったのだ。
さらに少し耳を澄ませば。
「おい。これどうなるんだ?」
「知るか。でも【神眼の神災】と呼ばれる紅さんならルフランさんにも勝っちまうんじゃないか?」
「いやいやあの紅さんでもルフランさんには勝てないだろう」
「でも【神眼の神災】の異名は伊達じゃないって昨日綾香さんが提示板で言っていたぜ?」
「確かにな。マジでやべー何か見ているこっちが緊張してきた……」
「あー私はどっちを応援したら……」
とあちらこちらから聞こえてくる期待の声に美紀達は観客席の最前列で苦笑いをしていた。
まさか【神眼の神災】が自分達が思っている以上に世間の目は強く感じているらしいと思ったから。少なくともルフランの想像を超えなければ蓮見の勝ち目はないと美紀、七瀬、瑠香は思っている。そう二人にはそれだけの実力差がまだあるのだから。だけど万に一つ勝ち目があるとすれば蓮見が限界を超えれるかにあるわけだ。
蓮見とルフランが武器を手に持ち向き合う。
ルフランは剣を持っており、剣使いである。
防具はガチガチに纏っていながらどこか動きやすそうに見えるルフラン。
「一応ルールはさっき話した通りだけど問題はないか?」
「はい」
「スキルとアイテムはどうする?」
「ならスキルもアイテムもありでお願いします。ただしHPやMPの回復アイテムはなしで」
「わかった」
気持ちが昂り、微笑む二人。
すると、上空にカウントダウンの数字が出現する。
それと同時に二人のHPゲージとMPゲージも空中に出現する。
戦闘準備態勢となり自動発動のスキルが発動する。
やはりトッププレイヤー。
この瞬間ルフランから放たれる殺意に似たオーラについゾクッとしてしまった蓮見。間合いは五メートルあるが、それでもこの圧。多くの者ならこれだけでビビり身体が動かなくなるが蓮見は逆だった。ワクワクしてしょうがなかった。これでまた目標の相手である小百合に近づけるのだと思うと、嬉しくてしょうがなかった。
「面白れぇー。見せてやるよ俺の全力シリーズを」
ボソッと呟く蓮見。
それを見たルフランは微笑む。
気を抜けばやられると目には見えないオーラを蓮見から感じ取ったからである。
「本気で行くに申し分ない相手だ」
ルフランが最初から本気で行くことを心の中で決める。
―― 三
遂に多くの者が待ち望んていた。
―― 二
二人の戦いの幕が。
―― 一
きって落とされる日が。
―― 零!!!
やってきた。
上空に出現した数字がゼロになった瞬間、ルフランが正面から突撃してくる。




