水爆実験 1
――悪夢当日。
蓮見、美紀、エリカの三人は一緒にログインした。
それから七瀬と瑠香と連絡を取り五人が合流する。
「それで里美どうしたのよー?」
「そうですよ……急に来いなんてなにかあったんですか?」
せっかく経験値稼ぎに行こうと思っていた矢先副ギルド長権限の元美紀に強制的に徴集を受けた二人――七瀬と瑠香。
「なにも起きていないわよ。い・ま・は」
「つまり?」
興味なさげに答える七瀬。
その視界の端では蓮見が準備運動をしている。
まさか――あれ?
七瀬の思考が何かを感じ取る。
「今から起きると思われるから呼んだの」
「ん?」
「あれ?」
そう言って美紀が指をさす。
その先には蓮見がいる。
「どうゆうことですか?」
「朝ね、急に紅に見せたい新技があるからって言われたの。なんでもミズナとルナを含めて私達から成長していないと思われているようだから一発大きく俺の成長した姿を見せたいって言ってきたのよ」
「……あー、なら私急用思い出したから帰るわ」
そう言って一人逃げだそうとする七瀬に美紀が言う。
「いいの、それで? もし次個人イベントかギルド対抗イベント来た時紅の手の内知らないと最悪巻き沿い喰らって死ぬわよ?」
「……ッ!?」
その言葉に七瀬の身体がピタリと止まる。
「た、たしかに……」
「ってことで皆で見ましょ。まぁ今回は大丈夫でしょ、まだ三層攻略から時間が経ってないし変な事は多分起きないわよ」
「えー本当にー?」
「私は起きると思いますよ……」
「例えば?」
「大爆発とか!」
瑠香が冗談半分で言う。
それを聞いた美紀、エリカ、七瀬が大笑いする。
「あはははは……大爆発って」
そんな楽しい会話に入るようにして、
「さーてと、水爆実験開始しますか!」
と蓮見が大きく背伸びをしながら言ったもんだから全員が一瞬で沈黙してしまった。
そして我先に助かろうと草原フィールドに全員が伏せて両手で頭を守る。
「スキル『導きの盾』」
七瀬が念には念を入れて自分達の身を自分達で護ることにした。
相手は味方で自分達のギルド長で仲良し。
喧嘩もしていなければ、信頼もしている。なのに身の危険を感じてしまったからだ。
「なにやってんだ? 別にそんな大したことしないけど……」
困り顔の蓮見。
だけど四人は心の中で『前科持ちが何を言うか! 粉塵爆発の一件忘れていないから!』と強く思った。
「まぁ、いいや。とりあえず《《まずは肩慣ら》》しで一本!」
そう言って蓮見が鏡面の短剣を矢の形状に変化させる。その時にフックの部分を作り手榴弾のピンをひっかける。単純な仕掛けだが放たれた矢は鏡面の短剣による水属性のダメージと手榴弾による爆発のダメージを与えると言うわけだ。
――シュパ!
あてもなく放たれた矢はある程度進んだ所で大きな岩にぶつかり爆発した。
「ん~やっぱりこれだとこんなものか」
意外に威力がしょぼいことから女四人が安堵のため息をついた。
「なんだ~脅かさないでよ」
「そうよ。お姉さん今度は何をするかと思って変に警戒しちゃたじゃない」
「てか今回の手榴弾を矢で飛ばせるようにしただけじゃん。水爆と言うよりかは手榴弾飛ばしの矢って感じね」
「紅さん、発想は百点満点だと思います。それにしてもこれは妙案ですね!」
そう言って各々が感想を言いながら近づいて来た。
特に美紀とミズナは異常にホッとしていた。
なんたって粉塵爆発に比べたら規模が小さすぎて逆に良かったとまで思っているからだ。
「それで紅さんどうしますか? まだ続けますか?」
「おう! ちなみに次のはちょっとだけ自信あるぜ!」
テンションの高い蓮見が言い切った。
「なら早く見せてみなさい」
さっきの後では変に期待するだけ無駄だろうと思い七瀬がほほ笑みながら言う。
蓮見なら凄い事をすると過剰に期待していたからこそ、今回は正直期待外れと言う感じがした。これが本来であれば普通なのだが、やっぱり今まで【神眼の神災】の近くにいた人間からしたら手榴弾飛ばしの矢は発想こそ面白かったが所詮その程度かと思ってしまう程破壊力――特に見た目に派手さがなかった。【神眼の神災】と言えば派手に誰もが思いもしないことをしてくれる。少なからずここにいる四人は常に思っているのだ。
すると目の前に雷撃の閃光のギルドメンバーが十人程の団体で武器を構え歩いてきた。




