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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説
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怠け者と元気な女の子



 ――五分後。


 教室の扉が開く音がしたので蓮見は窓の外にある雲から視線を移す。

 話しが終わったのか美紀が小走りで自分の席に戻って来る。

 蓮見と同じくクラスに残っていた皆も結局なんだったのだろうかと思い美紀に視線を向ける。

 鼻歌を歌っている所から見ると、わるい話ではなかったのだろう。

 むしろ良かったような気がする。


「ほら、なにしてるの? 帰るわよ」


 美紀はいつまで経っても動こうとしない蓮見を見て首を傾げる。


「あ……うん」


 蓮見は急いで自分の荷物を持ち、美紀と一緒に教室を出て行く。

 その時、クラスの視線が蓮見と美紀に向けられるが美紀は気にしていないのかいつも通り教室を出て行った。




 蓮見としてはやっぱり気になったので帰り道二人きりなったタイミングで美紀に聞いてみる事にした。


「やっぱり告白されたのか?」


 その一言に美紀が隣を歩く、蓮見を見て笑顔で答える。


「うん」


「そっかぁ」


「え? 結果聞かないの?」


 予想外の言葉に蓮見が考える。

 まさか自分から聞いて欲しいと言う事はそのまさかがあるかもしれないからだ。

 内心はまぁお似合いちゃお似合いだしなと半ば諦めつつも本人が聞いて欲しいと言うので聞く事にした。


「それで、どうしたんだ?」


「好きな人がいるからゴメンね。って言って断ったよ」


 蓮見の顔を見て、笑顔で答える美紀。

 そして。


「それでも誰? とか絶対に好きにさせて見せる! とか絶対に幸せにして見せる! とかしつこかったから逃げて来ちゃった。でもまぁた…けだ君だっけあの子に告白されて自分の好きな人が誰なのか改めてハッキリしたからまぁ告白されて良かったかなって思ってるよ」


「なるほど」


「それにしても良かったね」


「え? なにが?」


「だって私が付き合っていたら絶望的だったけど、まだ蓮見にチャンスが残って良かったねって意味だよ。今から私のポイント稼ぐ事ができたら万に一つ私が蓮見の彼女になるかもしれない可能性が残るんだよ。そしたらほらはすみぃ~が私に求めたキス沢山できるかもじゃん?」


「ちょ! だからあれはその場のノリだって!」


「おーおー、そんなに顔に真っ赤にしてお顔は素直ですな~はすみぃくん」


 とても楽しそうにからかい笑う美紀。

 そんな美紀の口を手でふさごうと必死な蓮見。


「きゃ~はすみぃに襲われる~」


「だからさっきから人様に誤解される事を次から次へと言うな!」


「あはは~。ほらほら私捕まえないとはすみぃの恥ずかしい暴露大会が始まっちゃうよ~」


 小悪魔と化した美紀をこのまま放置しておけば蓮見の恥ずかしい過去がご近所さんにバレるのは時間の問題だと蓮見はこの時判断した。

 そしてこうなった以上、蓮見としても本気を出すしかなかった。

 靴ひもをしっかりと結び、気合いを入れて逃げる美紀を追いかける。


「こうなったら俺の全力シリーズ。全力で全速ダッシュ!」


「あっ、ずるい~。なに女の子相手に本気になってるのよ」


「ずるいもなにもあるか! てかそれなら大人しく捕まれ、美紀!」


「やぁ~だよ」


 そう言って逃げる美紀を蓮見が全力で追いかける。

 一体いつぶりだろうか蓮見がこうして現実世界で真面目に全力で走ったのは。

 全身の力が足の裏に伝わり力強く一歩、また一歩と踏み出す。

 全身をバネの様にして、普段めんどくさいの一言で抑えていた力を発揮する。

 身体が風を切る感覚を忘れていた為に、懐かしい記憶が頭の中を駆け巡る。

 小学生の頃はこうして走っていた日もあったなと。

 そう思えるぐらい久しぶりの事に長年怠ける事しかしてこなかった身体がついてこれるわけがなく……。


 わき腹が痛くなり、酸欠状態に早くも陥る。

 そして徐々に落ちて行くスピード。


「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……もう駄目だ……」


 僅か百メートル前後走っただけで蓮見は息切れを起こし両腕を両膝について止まってしまった。

 ゲームの中ではとても元気な蓮見も現実世界ではとことんダメ人間である。

 日頃から身体を動かしていたら幾ら足が速い美紀でも捕まえる事が出来る。所詮は女の子。本気の蓮見の敵ではないのだが……今の蓮見からはそんな見る影もなく。


「あれ? 大丈夫?」


「はぁ、はぁ、だ……だい……じょう……ぶ……に見えるか?」


「普段から現実世界では怠けてるからだよ。全くからかった私も悪いし荷物持ってあげるから一緒に歩いて帰ろ」


「あ……あぁ。た……す……かる」


 流石にこれには美紀も心の中で反省した。

 まさか現実世界での蓮見の身体がここまで怠け者となっているとは予想外だったのだ。

 美紀は自分と蓮見の鞄を持って、さり気なく蓮見の歩幅に合わせ、心配して顔を覗き込むついでに身体を寄せて見る。二人の距離が恋人関係に見えなくもない距離感は少しドキドキしたけど美紀にとっては幸せを感じる空間だった。


 ――えへへ、幸せ。



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