幼馴染はどこか似た者同士?
あれからご飯を食べ、満腹になった所で人生ゲームをして蓮見が不幸の連発を喰らいそれを見て皆が笑いと楽しい時間を過ごした一同。
ちなみに蓮見は人生ゲームでは弱く、四回中四回とも五位だった。
そして人生のパートナーに四回とも裏切られ離婚、教育費を支払うとこれなんとも不運の人生を送っていた。逆に美紀達は全員が恵まれた結婚をして子供を授かりと蓮見からご祝儀を巻き上げた結果となった。
そんなこんながあり、珍しく蓮見がぐったりとしている。
「それにしても楽しかったね! 私二回も一位になっちゃった!」
蓮見とは対照的にとても元気なのはエリカだった。
「流石ですね。あ~疲れた~」
そう言って大きく背伸びをするのは瑠香。
瑠香はエリカの次に結果が良くかなり満足な様子。
その証拠に『蓮見さん元気出してください』とさっきまで落ち込む蓮見を励ましていた。
「ぐぅぅ~。まさか三位とは……」
どうも納得がいかないのは美紀。
美紀はエリカと瑠香の幸運に巻き込まれ、後一歩届かなかった。
「あはは~、美紀がいじけてる。きゃぁ~可愛い~」
続いて下から二番目と言う決して良くない順位ではあるが、美紀のプクゥと膨れた頬っぺたを指先で突いてからかっているのは七瀬。
七瀬は紅こと【神眼の天災】に勝ったという事実だけで大満足だったのだ。
いつもゲーム内で振り回されているからこそ、こうゆう時にしっかりと勝ってやり返せればそれはもう大満足というわけだ。
「ほらほら、お姉さんの胸で悔し涙流していいわよ」
七瀬は美紀の顔を自分の胸に持っていく。
その顔はとても楽しそうだった。
「ってなんで、あんたに慰められないといけないのよ。順位は私の方が上なのにぃ!」
「まぁまぁ、悔しいんでしょ。ヨシヨシ」
「く、悔しくなんか……ううぅ~ななせぇーー」
美紀の強がりを無視して七瀬が美紀を慰める。
「あらあら、可愛い所あるじゃない」
「ですね~。いつもは刺々しいですもんね」
そんな美紀を見てエリカと瑠香がクスクス笑う。
だが、蓮見だけはそんな気力はなかった。
運が絡むこのゲームでは蓮見の機転等何一つ通用しない。となれば、運に任せて勝負するわけだが、この運の悪さはなんだろうと自問しうなだれている。
「もう蓮見さんいい加減元気に出してください」
そう言ってテーブルに顔をつけて、落ち込んだ蓮見の顔を瑠香が覗き込む。
そして。
「このまま私が蓮見さんにキスしたら元気でますか?」
と蓮見だけに聞こえるように小声で瑠香が呟く。
――ハッ!
直後。
死んだ魚の目に光が戻り、何かを期待した眼差しで蓮見が素早く背筋を伸ばして起き上がった。
「マジで!? やったー!」
「ふふっ。本当に単純ですね。蓮見さん可愛い」
その言葉に蓮見。
ため息をついて。
「って瑠香。無駄に期待させること言うなよ……。ようやくこの俺にも春が来たって期待してしまったじゃないか……」
そう言って再びテーブルに顔を付けて落ち込む蓮見。
この時、蓮見は気付いてしまった。
美紀とエリカだけでなく、とうとう瑠香まで蓮見をからかってくるようになっていたことを。人を期待させてからかうのはモテる女がモテない男子高校生で遊んでいる証拠だ。
「なんでこう俺の周りは綺麗な人とか可愛い人がいるのに、性格が悪いんだ……」
「あら、そんな事ないわよ。私は蓮見君の事素敵な人だと思っているわよ?」
「ならエリカさん……俺の……俺に……一回ぐらい勝ちを譲ってくれても良かったじゃないですかぁ。あぁぁぁぁぁ~」
頭を抱え、発狂する蓮見。
「あらあら、悔しいのね。ほらこっちにいらっしゃい」
そう言って悔しがる蓮見を引き寄せて、寄り添ってあげるエリカ。
「最強夫婦見事撃沈ね。ってか二人共悔しさもう少し隠したら?」
「…………一位のエリカさんが言うな!」
「…………一位のエリカが言うな!」
これはまた息ぴったりと蓮見と美紀の声が木霊する。
「まぁ。羨ましい事に息ぴったりね」
エリカが口を手で隠し驚く。
「瑠香とりあえず蓮見は瑠香が慰めてあげて。エリカさん今は心の傷抉ったらダメですよ」
「わかった、お姉ちゃん」
「は~い。それにしても悔しがる蓮見君はとても新鮮ね。いつもは元気が良過ぎるのに。これはこれで好感度アップね」
エリカはスマートフォンのカメラで今度は瑠香に慰められる蓮見を連写で撮影する。
――それから、長い夜は更けていった。




