美紀とエリカの恋心
突然の事に戸惑うエリカ達ではあったが、美紀の助け船を借り何とか状況の整理が追いついてきたようだ。
そしてご馳走が置かれたテーブルを五人で囲むようにして座る。
「では【深紅の美】ギルド上位入賞を祝いカンパーイ!」
「「「「かんぱーい!」」」」
五人がそれぞれに料理を楽しみながら、時間を過ごしていると美紀が大型のタブレット端末を取り出して皆に見えるようにして置く。
そこには運営からの新しい告知が書かれていた。
【近日第三層開放のご案内】
と言う内容だった。
美紀がここで皆に提案する。
その顔は早くもワクワクを隠し切れておらずソワソワしているようにも見える。
「今度のボス部屋はこのメンバーで攻略しましょ!」
その言葉に蓮見、エリカ、七瀬、瑠香それぞれがお互いの顔を見合わせて微笑む。
どうやら皆の意見は同じらしく、代表として蓮見が答える。
「そうだな!」
「それに今回のボス部屋は前衛と後衛のバランスの良いパーティーもしくは特化型のパーティー推薦って運営が書いているの。正に私達にピッタリじゃない?」
その言葉に七瀬が頷く。
「そうね。前衛の美紀と瑠香、後衛の私と蓮見、そして前衛兼サポーターのエリカさん。メンバーバランスとしては最適ね。それで第三層の行く手を阻むボスに関する情報は?」
「詳しい事は後日発表だって。でも結構強いみたいよ。運営からもしっかりとレベルアップもしくはボス用のスキル取得をオススメって書いてあったから」
「それは美紀さんクラスでもレベルアップ……ですか?」
「う~ん、どうだろう?」
「なら美紀を含めてしばらくは個々のレベルアップがメインになりそうね」
「そうね」
「そうだな~さてどうしたものかなぁ」
美紀、エリカ、七瀬、瑠香の四人は早速一人どうやって強くなろうかと考え始めた蓮見をチラッと見てこれは負けていられないと強く心の中で思った。
この男はまだ成長している途中に過ぎない。
だからこそ仲間でも油断できない。油断すれば個人で戦うイベントが来た時に負けてしまう可能性があるからだ。となればやる事は一つ。
――神眼の天災以上に強くなるしかない
純粋な実力という面では蓮見は決して強くはない。
現に第三回イベントの最後の局面で仮に七瀬が猛毒の捌きを扱っていたらタイムアップの瞬間まで矢を操れたかもしれない。そう考えると付け入る隙はかなりあるのだが、蓮見の場合実力差以上に遥か高見まで来ている。
正直いつこの力関係が逆転するかわからない。
それにこのまま蓮見が成長を続ければいずれプレイヤーランキング暫定一位のルフランともぶつかる事になるだろう。
となれば、美紀達は美紀達で今よりももっともっともっと強くなる必要があった。
内心美紀達はこう思っている。
ルフラン率いる【ラグナロク】は今回のイベントを通して間違いなく蓮見に対して何かしらの警戒心を抱いただろうと。そして何故かまだ【雷撃の閃光】ギルドに仮とは言え所属している綾香は綾香で蓮見とのしっかりとした決着を付けたいと考えていると。最近提示版ではルフランと綾香がレベルアップに励んでいて更に強くなっていると噂になっているのだ。
「てか蓮見?」
「うん?」
「蓮見は変な事考える前にまずはコレでも食べてなさい」
美紀は近くにあったフライドチキンを手に取りそれを強引に蓮見の口の中に詰め込んだ。
「むぅぅぅぅ!?」
「ほら遠慮しなくていいから」
じゃれ合うようにして美紀が蓮見に近づく。
それを見たエリカがクスクスと笑っていたかと思いきや。
「ん~、モグモグ、モグモグ」
料理を食べる蓮見の隣にいる美紀を引き剝がして、
――サッ!
――ドスッ!
「は~い。さり気なくイチャイチャするのは禁止よ~」
強引に隣の席をゲットするエリカ。
「ち、ちょっとなにするのよ!?」
「蓮見君の隣は私の場所だからよ! 蓮見君も童顔巨乳しか取り柄のない幼馴染より綺麗で程よく大きくて柔らかい胸を持ち何より包容力のあるお姉さんに隣にいて欲しいわよね?」
「ち、ちょっと! 私の方が包容力あるわよ! それに蓮見はエリカより私の方が好きなの! そ、そうよね、蓮見?」
慌てて助けを求める美紀の言葉に蓮見はフライドチキンを食べながらチラッと視線を二人から外し、クスクスと笑いこの状況を楽しんでいる七瀬にアイコンタクトで助けを求める。
蓮見はこの時、どちらかを選べばどちらかに殺され、二人を選べば怒られ、曖昧に誤魔化そうとすれば更なる発展が待っているとなんとなく想像がついていた。だからこそここは年上の力を借りたいと思ったのだ。




