嵐前の静けさ
蓮見達が優勢となっている頃。
美紀と七瀬は協力して綾香と戦っていた。
「流石に強いわね」
「そう言う里美も中々やるねぇ」
「それはどうも！」
二人は真剣な表情で相手の隙を見逃さないように集中している。
こちらは七瀬との二人。
それでも油断ならない相手――綾香。
一瞬でも気を抜けば幾ら二人掛かりとは言え間違いなくやられる。
こちらは【灰燼の焔】ギルドを利用して【雷撃の閃光】ギルドの戦力をかなり削っているがそれでも彼女達は臆することなく【深紅の美】ギルドを狙って来た。
つまり向こうには私達を倒す勝算が間違いなくあるのだろう。
【深紅の美】ギルドの二人は美紀を前衛に七瀬が気持ち少し離れた間合いからの中距離攻撃をメインとした戦い方をしている。
美紀に何かあってもすぐに七瀬が助けに入れるようにだ。
「スキル『サンダーブレイク』！」
美紀が不利になりそうなタイミングでの援護。
「甘い！ スキル『連撃の舞』！」
かと言って援護に対してイライラし七瀬を狙おうとすれば美紀の容赦ない攻撃が綾香を襲う。
「チッ……めんどくさいわね……」
綾香はすぐに身体の向きを変え、舌打ちをしながら呟く。
「スキル『フレア』！」
炎の塊を出現させて爆発させる。そして自爆攻撃を利用したやり方で美紀の連撃を強引に躱す。爆風に飛ばされた綾香を狙い美紀が突撃。そして綾香の注意が美紀に向いたタイミングで背後からは七瀬が攻撃を仕掛ける。
「……なっ！？」
驚く綾香。
「こうなったら、スキル『烈風』！」
綾香が得意としているパターンの一つである。
竜巻で攻撃するのではなく、相手の動きを封じ自らの手で攻撃しダメージを与えていく攻撃手段の一つである。
だが美紀はこれを利用し、竜巻の風に身を任せながら器用に動く。
先日蓮見とのエキシビションマッチを見ていた二人はしっかりと対策済みな事からあまり影響を受けなかった。
「スキル『パワーアタック』『連撃』！」
七瀬は風と綾香の動きを読んでから攻撃のルートを決める。
「スキル『水手裏剣』『サンダーブレイク』！」
美紀と七瀬はアイコンタクトのみで意思疎通をしてお互いにヒットアンドアウェイに徹していた。決して踏み込んだ攻撃をすることはなく、綾香が疲れ動きが鈍るのを待っているのである。
強いプレイヤー程、力技で相手を倒す事を多くの者がイメージするが実際は違う。
実力者と実力者がぶつかればたった一つのミスで勝敗が決することだってゼロではない。
その為、美紀とエリカは今あるこの状況と人数差を利用する為、蓮見達が合流をするのを静かに待っていた。
この時、綾香の息は乱れ始めていた。
