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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説
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シンプルな考え


 美紀と七瀬は今森の茂みに姿を消し、あるギルドの本拠点となっているであろう場所を蓮見達にメッセージで報告と同時に敵の守備状況なども報告していた。


 今までのギルドとは違い、統制のとれた守備。

 これには美紀だけでなく七瀬の顔も険しくなっていた。


「流石にこの布陣は突破できないわね」


「そうね。紅ならこの布陣でも矢一本で拠点を護る障壁、そしてもう一本で拠点を破壊とかもワンチャンできそうだけどね……」


 七瀬の願望の入った言葉に美紀の表情が引きずる。


「あはは……」


 そう周りには完璧に見えても、あの男にはその法則が通用しない。

 これは残念ながらよくある話しなのだ。

 それは今更語る必要もなく、第三回イベントの状況だけでも説明が足りる。なんせあのリュークを撤退に追い込んだのだから。それだけでも成果としては十分だろう。だけどまだ止まるわけにはいかないのだ。そこに蓮見や美紀達が求める物はないのだから。


「とりあえずどうやってギルド長か綾香を引きずりだそうかしらね……」


 美紀がチラッと拠点から視線を外し、隣にいる七瀬に言う。


「そうね~」


 簡単に言うが、こっちは二人。

 敵は数えるのが嫌になるぐらいにいる。それに見えていないだけで拠点の中にも少なくともトッププレイヤーが二人。そうなると使える手は限られて来る。


「ならとりあえずこれでも投げて見る?」


 そう言って七瀬が自動音響装置を取り出して、美紀の前に差し出す。


「あのね……こんなバカみたいな罠にソフィと綾香が引っかかるわけないでしょ?」


「そうかな?」


「当たり前よ」


「でも――」


「でも、じゃない。普通に考えてこんなのに引っかかるのなんてただのアホでしょ」


 ムぅ~と頬を膨らませる七瀬。

 そして口を尖らせながら。


「里美だって最初は引っかかったし、何よりあの子は紅には目がないと思うんだけどなぁ~」


 その言葉に美紀の顔が赤くなる。


「ちょ……あれは――」


「なによ、あれは演技だったって言うの?」


「あ、ああああ当たり前でしょょょ!!!!!」


「ふ~ん」


 慌てる美紀に対して七瀬が冷たい視線を向けて答える。


 七瀬は手の上で自動音響装置を軽く真上に投げては掴んでを繰り返す。


 そして拠点と美紀を交互に見て考える。


「なら聞くけど、これ使わないの?」


 ゴホン!


 美紀が一度咳払いをして。


「どうゆう意味よ?」


 と念を押すようにして確認する。


「どうゆう意味って……そのままの意味だけど?」


 すると七瀬は二個目、三個目……と全部で六個の自動音響装置を取り出し、そのうち三つを美紀に渡す。


「これだけあれば流石のソフィも何事かと思い中から出てくると思うけど?」


「あんたね……紅じゃないんだからもっとこう利巧に上手くしようとかないの?」


「ないわよ? だってあの人型人造破壊殲滅兵器はなにをするか全然わからないもん! 私がどれだけ心配してあげようが、いつもケロッとしてるし! 死んだ!? と思ったら致命傷となる攻撃は見えますとか言うし本当によくわからないんだもん!」


 何処か小声ながらもかなり熱く語る七瀬。


「ん?」


「だから思ったの! もしかして紅みたいにシンプルな考えの方が良い時もあるのかなって?」


 ここで美紀もやっと七瀬の言いたい事を理解する。


「あぁ……そうゆうことね」


 それを聞いて美紀は思った。

 蓮見の行動は全てが初心者が思いつく簡単な物ばかりだ。

 だからこそ皆が思ってもしない、からこそその耐性に限りなく弱いことが多いのかもしれないと。そこに蓮見の遊び心とエリカの何か裏がありそうな心が生んだ物となれば、それこそ私達のようなプレイヤー程引っかかりやすく、変に警戒してしまうのではないかと。

 ならばここは試す価値があるのかもしれない。


「わかったわ。ならこれを使いましょう」


「良し、そう言うと思ったわ」


 すると七瀬は個別にタイマーセットして近くの茂みに持っていた自動音響装置を投げ捨てる。

 そして更に美紀に持ってもらっていた三つも個別にタイマーをセットし、一つを足元に置いて残りの二つは思いっきり遠くに向かって投げる。


 その時に自動音響装置が森の木々の葉に不自然に当たり音が鳴った。


 ――ガサガサッ!?


 風もない中での小さな異変に早速周囲を見張っていたギルドメンバーが確認に来る。


「気を付けろ。敵かもしれない」


「わかっている」


 美紀と七瀬は息を殺しこれを木の上から一旦やり過ごす。


「この後どうするの?」


「フフッ。そんなの決まってるじゃない?」


 そして、七瀬。

 静かに立ち上がると、美紀の腕を掴んで地面に向かって飛びおりた。


 先程通り過ぎていった男二人はそんな女二人には気付かずにどんどん森の奥へと進んでいった。




「あれ? もう見つかった? だったら話しが早い! その拠点は人型人造殲滅兵器率いる【深紅の美】ギルドが頂くわ!」


「「「「「ん? 人型人造……深紅……【神眼の天災】か!!!!!!」」」」」


「マズイ……警戒レベル最大! 全員緊急防衛体勢!!!!!」


 その声に反応し、次々と【雷撃の閃光】ギルドプレイヤー達が二人の前にやって来る。


「う~ん、ミズナ少し頭が弱くなったのかな……」


 美紀は呟きながら、七瀬の正面に立ち敵を威嚇する。


 当然弱くなったと言っても、それは何も本気で思っているわけではない。

 どちらかと言うと、蓮見――【紅】よりにと言う意味である。


 それすなわち、一見愚行に見えるこの行動も何か意図があると言う信頼しての言葉。


 そもそも【深紅の美】ギルドにいる以上、蓮見の影響を受けるなと言う方が最早無理なのかもしれない。



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