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とりあえずカッコいいのとモテそうなので弓使いでスタートしたいと思います  作者: 光影
一章 神災者爆誕と俺様全力シリーズ伝説

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相手の想像を超えろ!!


「紅さんこっちの世界では初めてお会いしますね。私は里美と言います。以後お見知りおきを、それと今から本気で行きますので紅さんも本気で来てもらって構いませんよ」


 槍が美紀の手の中に吸い込まれるようにして手元に戻っていく。

 そのまま槍の矛先を蓮見に向ける。


「落ち着け! こんなか弱いプレイヤーを狙うなんて正気か!?」

「か弱い? はて私には何のことかわかりませんが」


 一度大きく深呼吸する。

「チッ、シラを切るなら仕方がない。やるしかないようだな」

 弓を構える蓮見。


「紅? 後ろ大丈夫?」


 声が聞こえた。

 それも前からではなく。

 え?

 そう思い意識を集中させると背後から伸びる影。


「うっそ……だろ!?」

 咄嗟に美紀から距離を取る。

 後0.1秒遅かったら槍が前髪ではなく顔を引き裂いていただろう。


 あまりの驚きに苦笑いしかできなかった。

 意識を集中させて、美紀だけをみる。

「速すぎる。これは強いわけだ」


「あれ躱すの。弓使いにしては速すぎる……スキル?」

 余裕の笑みで何かをブツブツと言う美紀。


 二人が同時に動く。

 蓮見はAGI補助スキルのおかげで何とかついていける。

 だが、攻撃に移る余裕がなかった。

 槍が空を切る度に聞こえる音が教えてくれる。

 一度でも喰らえば仮にHPが満タンでも危ないと。


 待ちに待ってようやく来た攻撃のチャンス。



 ――スパッ!!

 ――スパッ!!

 ――スパッ!!



 蓮見の三連続攻撃。

 二本の矢は心臓、一本の矢は頭部を正確に狙い飛んでいく。

 しかしスキルを使わず己の身体能力だけで躱す美紀。


『残り時間10分です』

 戦場に聞こえてくるアナウンス。


「里美さん一ついいか?」

「えぇ」

「本気で行く。どうなっても恨みっこなしだぜ」

「えぇ、それで構いません」


 蓮見は持てる力の全てを使い、美紀を倒す事にする。

 すぐ近くにあった廃墟に向かって走る。

 そして廃棄の中を移動し姿を暗ましながら後を追ってきた美紀に攻撃する。

 廃墟の中は太陽の光がほとんど差し込まず薄暗かった。

 視界が悪くても美紀にはさほど影響がないらしく動きに無駄がなかった。


「逃げてばかりじゃ勝てないけど?」

「うるせぇ。こっちにはこれしか方法がねぇんだ」


 徐々に上の階層に行き逃げ道がなくなっていく蓮見。

 そして徐々に蓮見を追い詰める美紀。


 余裕がないのは蓮見。

 余裕があるのは美紀。


 お互いのMPゲージは既に満タン。

 どちらが先に仕掛けるかの勝負。


 ついに最上階まで来てしまった蓮見。

 その表情は険しい。

「ふふっ。さぁ次はどうするのかしら?」

 余裕を見せつけるかのように階段を上り最上階に来る美紀。


「スキル『連続射撃3』。我が命ずる。秩序を乱す者達に裁きを与えよ。弓は心、弦は心を矢に伝えるバイパス。矢は裁き。裁きの象徴として悪を貫く今こそその真価を発揮しろ『レクイエム』」

 蓮見の右手で矢が赤いエフェクトを放ち始める。

 矢はまだ手に持っているだけ。


 そして姿を見せた美紀。


 ゆっくりと歩きながら言う。

「紅さんならもう少し私の相手をしてくれると思ったけど残念だったわ」

「そう言われてもなぁ……ちなみにここ何階か知ってます?」

「さぁ、25階ぐらいかな? 途中から数えてすらないけど」

「だよなぁ。まぁ25階ぐらいなら多少はダメージ与えられると思うんですよってことで」


 不敵な笑みで蓮見が矢を地面に向けて構える。

 驚く美紀。


「悪いな。こっちもただで負けたくねぇんだよ! 『レクイエム』!!!」



『詠唱』と『連続射撃3』によって威力が極限まで上昇した『レクイエム』が『絶対貫通』の効果を付与して25階フロアの床を撃ち抜く。

 矢は一瞬で25枚の床を撃ち抜き地面と接触して大爆発を起こす。


「これだけの高さからの落下。瓦礫を足場にするにしても上からも降ってくるコンクリートと下からは俺の矢。地面には燃え盛る炎。この全てに対処できるならしてみろよ里美!!!!」


 想像以上に慌てる美紀。


 二人が落下しながら、


 ―― 一人は笑みを浮かべ


 ―― 一人は焦りで顔がこわばる


 蓮見だからこそ出来た最後の攻撃。

 空中で器用に蓮見の矢を撃ち落とすが上から一緒に落ちてくるコンクリートの塊が美紀の身体に当たり思うように動けないらしくそのまま落下する。


「しまった。でもこれじゃ紅も……」

「あぁ。俺のHPは既に1割を切っている。どうせ死ぬよ。だが里美はこれでも死なないだろうな。でもこの落下後身体に受けたダメージのままさっきから外で俺達が弱った所を狙っているプレイヤーに対処できる手はあるのか?」


 負けず嫌いが考えた美紀を追い詰め倒す方法。

 それは自分が追い詰め、最後の最後で他の誰かに倒してもらうことだった。

 これで美紀に負けても蓮見の入賞は確実。

 ならば美紀が求めていたスリルを最後に提供するのは優しさではないか。



 こわばった美紀の表情が変化する。



「紅……あんたやっぱり最高ね! だから見せてあげる」

「えっ……うそ……?」

「スキル『ライトニング』!」


 槍がバチバチと音を立て、次の瞬間、美紀に降り注ぐコンクリートの塊が一瞬で焦げて灰になった。


「悪いけど私が目指すのは紅に対する完璧な勝利。だから今から全部のシナリオを書き換えてあげるわ」

 空中で態勢を立て直して近づいてくる美紀。


「一人じゃ勝てなくても二人なら後2分時間稼ぎできるよね?」

「えっ?」

「スキル『二段ジャンプ』!」

 そのまま蓮見を軽々と持ち上げて空中で見えない空気の壁を踏み場としてもう一度ジャンプして炎の外まで移動する。


「いてっ」

「惜しかったね。でも私相手には後一歩足らずよ」

「いてて」

「さぁラスト1分30秒、今度は私の為に敵をひきつけなさい」

「…………仕方がない。敗者は勝者に従うとしますかね」


 首をポキポキとならしお互いが背中合わせになって挟撃してくるプレイヤーを倒していく。



『そこまで! 今回第1位から第3位までに順位変動はなく、第4位~第30位には順位変動がありましたがプレイヤーの変更はありませんでした。ではそのまま表彰式に移ります」


 全プレイヤーがギルド前にある憩いの場に一瞬で移動する。

 そして表彰台に立つ、第三位の綾香にマイクが渡される。

「では一言どうぞ」


 蓮見を見て綾香が言う。

「そうだね~特にないけど……ん、なら。いつか君と戦える日を楽しみにしてる。最強の弓使いさん」


「では一言どうぞ」


 美紀が落ち着いた声で言う。

「まさかここまで追い込まれるとは思ってもいませんでしたが、今回のイベントを通していい掘り出し物が見つかって良かったと思っています」


「では一言どうぞ」


 ルフランが言う。

「次は上位入賞者達とも戦いたいと思ってる。俺は誰の挑戦でも受ける」


 全員が入賞した事に対する喜びの言葉ではない事を言う表彰式は何処か異様だった。

 が何はともあれ無事に終わり、上位30名にはイベント限定アイテムが渡された。


 その後蓮見を含めたイベント参加者は疲労困憊のためすぐログアウトした。

 表彰式で綾香と美紀の一言が蓮見を更なる人気者にしたことなどは当然本人が知る事はなかった。蓮見の頭には提示板を見るという概念は未だに定着していなかった。




 17 名前:綾香

 それにしても【神眼の弓兵】強かったね

 あの里美をあそこまで本気にさせるなんて


 18 名前:???

 あれは異常w


 19 名前:???

 てかAGIいくつ

 剣士に囲まれて全部攻撃躱してた


 20 名前:???

 それより

 何で歌うの?

 何故毎回当たればキラーヒット?


 21 名前:???

 わからん

 もしかしたらあの歌に秘密があるかもしれん


 22 名前:???

 なる


 23 名前:???

 表彰式の里美の掘り出し物って【神眼の弓兵】だよな?


 24 名前:???

 多分


 25 名前:綾香

 もしあの二人が手組んだら……?


 26 名前:???

 やめろw

 フラグたてるなww


 俺達じゃ勝てなくなる


 27 名前:???

 でも来週のアプデで


 ギルド機能追加→正式に大規模でもパーティー組めるようになる

 新しい階層の追加


 28 名前:エリカ

 ギルドマジ?


 29 名前:???

 うん


 30 名前:エリカ

 面白そう


 31 名前:綾香

 おお!!!

 いいじゃん、ギルド!

 【神眼の弓兵】は何処のギルドに行くんだろうね

 多分彼ならどこでも受け入れてくれそうだけど


 30 名前:エリカ

 そうね

 おもしろそうだしわたしついていこうかな?


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