水色のオーラと爆炎を纏いし者
ここは多少のリスクを背負ってでも、蓮見を倒す事に重点を置く事したスイレン。
「第一前衛部隊と弓隊は私と一緒に紅、残りはミズナとルナを倒して!」
ここから部隊は二手に分かれる。
だけどそれが蓮見によるパレードの始まりになるとは知らずに。
「スキル『虚像の発火』!」
今出来る最大火力で蓮見を迎撃に向かうスイレン。
トッププレイヤーの二人相手に残りの部隊がどこまで通用するのかは試してみないと正直わからない。だけどあの人数を相手に蓮見の援護となると距離的にも難しいと思われる。
蓮見の動きがまた一段早くなる。
味方部隊の弓による遠距離攻撃が掠った。
そして本来であれば徐々に追い詰めているはずなのに、そこに強い違和感が生まれた。
スイレンはそのまま蓮見に向かって突撃、弓部隊は遠距離攻撃でスイレンの援護。
だが攻撃は当たらない。
蓮見は攻撃を見てから躱している。それに躱しながらもスイレンが一直線に向かって来れないように攻撃し、更にはスキルによる遠距離攻撃を撃ち落としていた。
「スキル『連続射撃3』『虚像の発火』!」
決して最強とは程遠い火力での『虚像の発火』。だけど蓮見が使う『虚像の発火』はある意味必殺の威力を持っている。
ただこれは敵の攻撃の核となるポイントが見え、なおかつそこに当てなければ意味がない。だけど当てる事が出来れば大いに意味を成す。
故に、単純な攻撃は蓮見の前では意味をなさない。
だけど蓮見が仲間の攻撃に気を取られている間にスイレンが更に近づく事に成功する。
二人の距離は推定十メートルもない。
大きく踏み込めば数歩で相手の懐に入れる。
「悪いわね、これで終わりよ。スキル『乱れ斬り』!」
『乱れ斬り』は短刀専用スキル。相手に五連撃のダメージを与える。
「うん? おっ早いな……」
だけど蓮見はそれをギリギリで躱し距離を取る。
領域加速による回避率が更に上がった蓮見には意味をなさなかった。
スイレンはまだ美紀や綾香のように相手が自分の想像を大きく上回ってきた時の対処が上手くない。そもそもそのような相手と戦うことがこのゲームでは少なく経験が浅いとも言える。
「なら今度はこっちの番だ」
そう言って蓮見が矢を四本放つ。
一見ただの矢ではあるが、これが多くの者を倒して来たことは提示版の噂で聞いている。
スイレンは一撃でも喰らえばKillヒットもしくはテクニカルヒットとなり危険な状態になると判断し全て持っていた短刀で撃ち落とす。
「へぇ~やるわね。だったら私も本気になるわ」
スイレンがバク転をしながら蓮見と十分な距離を取る。
そして鋭い目つきで蓮見を見る。
「スキル『霧隠れ』!」
スイレンの声に合わせて、霧が出現しスイレンの姿が見えなくなる。
更には視界が悪くなり二、三メートル先を視認がするのがやっとな状況となる。
敵の目を欺き、小柄な機動力を活かした戦い方が【クノイチ】のスタイルである。
「スキル『投擲分身』!」
スイレンが投げた一本のクナイが蓮見に向かって分身しながら飛んでくる。
視界の悪さに仲間からの援護射撃がなくなるが、それは大した問題ではなかった。
蓮見の強さは目に見えなければ意味がないとスイレンは思っていたからだ。
だけど蓮見に視界の悪さはあまり関係ない。
仮に今回あるとすれば足元が見えずらくむやみに動けないと言う点だろう。
下手に動いて敵陣のド真ん中に気付いたらいました、とかになってはシャレにならないからだ。
「スキル『虚像の発火』!」
全ての攻撃を躱し、スイレンが反撃に移ろうとしたタイミングだった。
炎を纏った矢が勢いよく飛んできた。
ギリギリのタイミングで攻撃に気付いたスイレンが短刀で矢を弾こうとするが、失敗に終わり矢が爆発した。
痛手を負いながらもすぐに立ち上がり、短刀を構える。
「間違いないわね……あいつ見えているんだわ。でもどうして……。この霧の中では私ですら見えない。ただ相手の気配を感じ取るだけで……」
その時スイレンは気付く。
蓮見もまた自分と同じ事をしているのだと。
蓮見のスキルについて詳しくないスイレンは勘違いをしていたが、あながち間違ってもいなかった。そう相手もまた視界の悪さは関係ないと言う一点においては。
更に追い打ちをかけるようにして飛んでくる矢の数々にスイレンは苦笑いをする。
さっきから瑠香と七瀬がいる方向からの音が静かになり始めている。つまりどちらかが後手に回り始めたと考えるべきなのだろうが、この状況ではどちらが防戦一方なのかは考えるまでもなかった。
「……仕方ない。こうなったら私一人で全部するしかないわね」
スイレンは今後の事を考える事を止めた。
今後の事はギルド長を中心とした別の幹部達に任せて自分はこの戦闘に全ての力を回す事を決意した。
スキル『霧隠れ』を解除しまずは仲間の視界を回復させる。
「全員もういいわ。現時刻を持ち第七支部を破棄するわ。今からこの先にある第三支部に全員行きなさい!」
スイレンが大声で叫ぶ。
これは彼女なりの覚悟の表れだった。
「誰がそんな無茶をしろと言った?」
だが突然聞こえてきた声に全員が振り返る。
爆炎を全身に纏い戦闘態勢となって姿を見せたのはそう、リュークである。




