第一回イベント
――――。
――2日後。いよいよイベント当日。
準備は念入りに終わらせた蓮見。
ステータス画面を開き、自身のステータスとスキルの最終確認をする。
紅
Lv.22
Hp.69(+24)
MP47(+21)
【STR30(+17)】
【VIT17(+37)】
【DEX67(+55)】
【AGI39(+17)】
【INT22(+13)】
【MND9(+4)】
【CRI54(+55)】
装備
頭【紅のヘアピン】
体【紅の鎧】
右手【深紅の矢】
左手【深紅の弓:『領域加速』】
足【紅の脚】
脚【紅の靴】
装備品【紅の指輪】
【空欄】
【空欄】
スキル
『イーグルアイ』『イーグル』『火事場の速射』『矢の自動生成』『火事場の俊足』『レクイエム』『連続射撃3』『弓兵の観察眼』『見えないふり』
自動発動スキル
『絶対貫通』
『詠唱』
『歌の魔力変換』
『領域加速』
正直ここまでしても勝てる自信はあまりなかった。
周りを見れば蓮見と同じくいやそれ以上に入念に準備してきましたと言わんばかりの人達で溢れていたからだ。
「全く勝てる気がしねぇ……」
早くも弱気になる蓮見。
今までは勢いとその場の発想力で何とかしてきたが今回はモンスターが相手ではない。
相手は初の対人、つまりプレイヤーである。
緊張で全身に汗をかきながらもイベントの開始時間を待つ。
空中にはいくつもの巨大スクリーンがあり、イベント開始までの時刻を表示していた。
イベントが始まればあちこちで行われる戦闘をLIVE中継するのに使われる。
「そう言えば……美紀もこの集団の何処かにいるのか……どうか神様、仏様、美紀様……か弱い《《わたくし》》をお見逃しください」
両手を握り祈る蓮見。
今もチラホラと聞こえる声に耳を澄ませばトッププレイヤーのレベルは推定で30~35らしい。
蓮見が勝つ自信を持てない理由はここにも合った。
最初はスキルでレベル差を何とかしようとしたがそう甘くないらしい。
『メッセージを受信しました』
「んっ?」
早速パネルを操作してメッセージを確認する。
『私は参加しないから今回は観客席で応援するわ
頑張って紅君!
目指すは入賞よ! byエリカ 』
「ありがとうございます。俺頑張ります!っと返信内容はこれでいいか」
少し年上のエリカから応援された蓮見のモチベーションが一気に上がる。
何とも単純な思考回路であった。
だがそのおかげで緊張と不安で一杯だった気持ちが少し楽になる。
スクリーンに映ったイベント開始までの時間が0秒になる。
同時にラッパのファンファーレと一緒に聞こえてきた声に皆が一斉に注目する。
マイクを持った中年の男性が声を張る。
「さぁ、皆さんお待たせしました。今から第一回バトルロワイアルイベントを開催します。ルールは簡単。参加者全員が戦い、他のプレイヤーを倒した数・死亡回数で争い、連続で他のプレイヤーを倒すとボーナスポイントが付与です」
「「「「「「「うおおおおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」」
会場の熱気が一気にヒートアップする。
勿論蓮見もノリノリで便乗している。
さっきまでの緊張と不安は一体どこに?
と言いたくなるぐらいの豹変ぶりだった。
「なお参加者1487名中、上位30名に入るとイベント限定アイテムをもらえますのでどうか皆さん頑張ってください。では皆さんの活躍を期待しています。イベント専用マップに移動したと同時にゲームスタートです。それでは五時間後にまた会いましょう。see you!」
参加者の視界が一斉に眩しい光に覆われる。
蓮見が次に目を開けると、視界に入って来たのは人が住むのを止め廃墟となった住宅街だった。
「なんだ……ここは?」
初めてのイベントに戸惑う蓮見。
そんな初心者はおいてか早速あちらこちらから悲鳴や魔法攻撃による爆発音、雄叫びが聞こえてくる。プレイヤーkillをして今の内にポイントを手に入れようと皆が必死らしい。
「ん~これは無理だな……。相手を探すスキルもないかと言ってモンスターみたいに特定の場所でしかでないわけでもない。まずは五時間あるし慣れる為にも様子見だな」
と早くも冷静に状況を整理し半ば半分諦める蓮見。
とりあえず廃墟となっている高層ビルの屋上まで移動する。
「スキル『イーグル』「見えないふり』」
そのまま屋上から地上で戦うプレイヤ―達を眺める。
「なるほど。対人でも黄色い点は出現する。人間だと丁度心臓の位置と頭の二か所か。それで魔法攻撃に対しても魔法の中心部となっている核らしき場所に黄色い点つまりクリティカルヒットゾーンが設定されているのか……」
落ち着いて状況を整理していく蓮見。
イベントステージはとても広く高層ビルの屋上からでも全てを一望できなかった。
「……よく考えたら五時間もあるんだ。後半になれば皆バテて動きが鈍くなるだろうしそれまで待つか」
そのまま屋上で座り、両足をぶらぶらして皆が疲れるのを静かに待つ蓮見。
十五分後。
先ほどまであちらこちらから聞こえていた騒音が急に静かになり始める。
耳をすませば廃墟となった高層ビルの非常階段の方から聞こえる複数の足音。
「見つかったか……」
そう思って武器を手に取り戦闘態勢に入る。
蓮見がにやける。
「悪いな。先制攻撃だ!」
そう言って非常階段から来たプレイヤーに攻撃の隙を与えずにクリティカルヒット一撃で倒す。
しかし、後ろにまだ四人いた。
四人は蓮見が次射を打つ前に素早く包囲する。
「悪いが兄ちゃん死んでもらうぜ」
「あんちゃんを倒せば俺達も有名人だからな」
男二人が言った言葉に蓮見の頭がパンクする。
(コイツら何言ってるんだ。俺……有名人じゃねぇぞ……あっなるほど。誰かと勘違いしてるのか)
そして出てきた答えに納得する。
相手の武器は斧が二人、剣とハンマーが一人ずつだった。
「行くぞ、お前ら!」
その声に合わせて四人が雄たけびをあげて突撃してくる。
ブンブン、ブンブブーン
斧が剣がハンマーが空を切り音を立てる。
蓮見は四人の攻撃を難なく躱しMPゲージをMAXまで貯める。
「は? お前弓使いだろ?」
「何でそんなに身軽に動ける?」
「ありえねぇ」
――スパッ!!
「間隙の隙で出来た僅かな時間で攻撃……それもクリティカルヒットだと……?」
そして戦闘開始から一分後、全員をクリティカルヒットの一撃で倒す。
「あれ? 思ったより俺動けるな……」
スキル『領域加速』で近接戦闘での蓮見は能力が大幅に強化されていた。それも本人の予想を超える程に。
「なら俺も動く……必要はないか」
地上に視線を向けると次は三人の杖を持った女性パーティーが来ていた。
蓮見のいる高層マンションはエレベーターが止まっており屋上に来るには非常階段を使うしかない。なので敵を迎え撃つにはもってこいだった。
「よし! 来い!」
集団で効率よくポイントを稼ぐ、何て効率がいい手段なのだろう。
蓮見も仲間がいればそうしたかったと内心思いながら再び武器を構える。
今度は魔法を使い攻撃しながら三人が姿を見せる。
慌てて横へ飛んで躱す。
「スキル『レクイエム』!」
MPゲージが全てなくなり、矢に赤いエフェクトが出現し矢を放つ。
クリティカルヒットという文字が出現し心臓を撃ち抜かれた一人の女性が光の粒子となって消える。
戸惑う二人の女性。
「アズの仇よ! スキル『竜の息吹き』!」
「スキル『暴風』!」
一人の女性が持っている杖から炎が出現する。
もう一人の女性が持っている杖から杖を中心として風が吹き荒れる。
風上は蓮見。
炎が風の力を受けて相乗効果で威力が上昇した魔法が蓮見を襲う。
が、落ち着いて魔法の中心部を狙い矢を放つ蓮見。
すると魔法が消滅……はしなかったが核にダメージを受け威力が大幅に低下した。
そのまま驚く二人の女性の心臓部に矢を放つ。
クリティカルヒットという文字二つの出現と同時に二人の女性は光の粒子となって消えた。
「ふむ。クリティカルヒットさえだせれば状況によっては魔法でも相殺できそうだな……」
何かに関心したように一人頷く。
「あぁ~HP二割減ったしMPはゼロ。とりあえず歌でも歌ってMP回復だな!」
今度は歌を歌い始める弓使い。
――その一部がこちらである。
【 タイトル:君の瞳
歴史が教えてくれた 人は儚く弱い存在であると
いずれ知るだろう 限界と言う言葉に挫折し悩むだろう
人が人である以上避けては通れない道に君はいた
いと美しき瞳で黙って前だけを見つめ
過去の因果を一つ一つ確認してはをただ繰り返していたね
………………
…………………………
】
場違い感満載でありながら悲しくも敵の目を引き付ける美声が戦場に流れ始めた瞬間だった。
本人は当然楽しんで歌っているのでそのことに気付いていない……。
――――
――――同時刻観客席にて。
観客「おい見ろ! 一位はルフラン、二位はVRMMOでは毎回上位に入ってくる里美、三位は安定の綾香だ! どうやらこの三人が直接戦う事はなさそうだが圧倒的だぞ!」
観客「そうだな。てかルフラン、里美、綾香は無双し過ぎだろ。誰かあの三人以外でアイツら止めれる奴いねぇのか?」
観客「無理だろww 人を超えてる。動きが」
観客「流石はトッププレイヤー様って所だな」
観客「おい4番スクリーン見ろ!」
観客「は?」
観客「えっ? 何で歌ってるの?」
観客「さぁ?」
観客「てか歌上手いwww」
観客「なんて歌?」
観客「知らん」
観客「『古き英雄の新たな物語』に出てくる優莉が歌ってた歌だな」
観客「あっ、ライブ映像でた」
観客「あいつ……確かクリティカルヒット連発して宝くじ当てた奴だよな?」
観客「…………あいつだな」
観客「……あいつだ」
観客「そもそもあいつの行動原理ってなんだ……?」
観客「…………」
観客「…………」
観客「…………」




