久しぶりのデート
窓から入ってくる、まだ肌寒い風に起こされる。
起きると隣に美紀はいなかった。
「あれ……美紀?」
そして、部屋の窓に視線を向けると、窓が開いている事に気が付く。
急いでベッドから起き上がり、リビングにあるパンを食べ、洗顔、歯磨き、寝ぐせ直し、着替えとバタバタ終わらせていく。このままでは色々と準備を済ませた美紀が家に来てしまうのだ。もし、その時に何も準備が終わっていなかったら、美紀がいじける。そんな気がした蓮見は最速で出かける準備をしていたのだ。
「どうせなら朝一緒に起こしてくれよ」
ブツブツ文句を言いながら、ズボンを履く蓮見。
ただ内心は久しぶりの美紀とのお出掛けに気持ちが高ぶっている事もまた事実。
今まで幼馴染としてしか見てなかった美紀。
だけどこの前。
今はただの幼馴染ではなく異性として見ている事に気が付いた。
だからこそとても新鮮だった。
だから楽しみだった。
だから、……――
――――急いで用意をしたのだ。
するとタイミング良く玄関のチャイムが鳴る。
ピンポーン!
慌てて部屋にあるスマートフォンをズボンのポケットに入れて、今はまだ寝ている母親が起きないうちに家の階段を降りて、家の廊下を小走りで走って……ドアの覗き穴から、外を見た。
するとそこには――やっぱり。
「おっ!」
――美紀が立っていた。
純白の白シャツ。水色をベースとしスカートと黒のヒール。
よく見れば、薄っすらとお化粧をしており、前髪をせっせと直している。
いつも以上に綺麗で可愛いなと思っていると今度は胸に手をあて深呼吸を始めた。
どうやら向こうも少し緊張しているのかもしれない。
――ガチャ
ドアを開けると、美紀は笑顔を向けてくれる。
そして、
「偉い! 女の子を待たせなかったね。なら久しぶりに二人きりでお出掛けしよ」
と嬉しそうに言ってきた。
「そうだな。それでどこ行く?」
「私のお買い物って事で近くにある大型ショッピングセンター!」
「わかった」
隣町にある大型ショッピングセンターに行くために蓮見と美紀は近所のバス停からバスに乗り移動する。
バスに乗り十五分後。
「今日は何を買うの?」
「洋服と勉強用具とかかな」
ショッピングセンターの中はグランドオープンして一年が経過した今でも沢山の人混みで賑わっていた。メガホンを片手に持ちハッピやコスプレをした各店舗の店員さんが大声で集客をしていた。時にはダンスや風船配りをして人の注意を集める店員さんと各店舗の各々のやり方で頑張っていた。
そんな光景を見渡していると。
「ほら、早く行くわよ」
「あぁ」
「ならまずは洋服からね!」
早速美紀がお店に向かって走っていく。
蓮見は美紀に置いて行かれないようにしっかりと後を付いていく。
バスの中ではお互いに緊張して、一言も話さなかったが今はそんな事もなく二人の楽しいお買い物の時間は始まった。
「ねぇ、ここのお店入らない?」
「いいよ」
美紀はそのままお店の中に入っていく。
蓮見も美紀の後ろを追いかけるようにしてすぐにお店の中へと入っていく。
ファンションにそこまで詳しくない蓮見では合ったがあちらこちらにある沢山のマネキンに着せられた服を見て、これがオシャレなのかと感心しながら今は隣で真剣に服を選んでいる美紀の隣にいる。
「う~ん、どっちにしよ……」
美紀は二つの服を手に取り迷っている。
自分の身体に二種類の服を身体にあて、すぐ近くにあった鏡を見てと。
「ねぇ、どっちが良いと思う?」
蓮見は美紀が持つ服を見て、交互に見比べる。
とは言ってもどっちが良いのかなんて正直分からないので、自分の好みの方を選ぶ事にする。
「個人的には、美紀が右手で持ってる方が好きかな」
「こっち?」
「うん」
「ならこっちにしようかな」
そう言って右手に持っていた服を買い物かごに入れて、左手に持っていた服を元の場所に戻す。そして服が入った買い物かごをさり気なく持たされ美紀の買い物を手伝わされる蓮見。この際だから言っておくと、美紀はゲームの大会賞金を懐にかなり溜め込んでいるので蓮見とは比べ物にならない程お金を持っている。何が言いたいかと言うと、美紀の頭の中には予算と言う物があってないのだ。でも昔から無駄遣いはしないしっかりとした女の子である。
「ちょっと、早くきてよ~」
「あぁ~」
「ねぇ、この帽子どうかな?」
「うん、良く似合ってると思うぞ」
「ホント?」
「うん」
「なら、これも買っちゃおうと」
とても楽しそうに美紀は満面の笑みでそう言うと買い物かごに帽子を入れる。
その後も美紀の楽しい楽しい楽しい買い物はしばらく続いた。
「うぅ~、いっぱい買っちゃった!」
今はショッピングセンターの中を二人並んで歩いてる。
当然美紀は手ぶらで、蓮見は美紀が先程買った服が入った紙袋を2つ持っている。
何となくこうなる気がしていた蓮見は別に文句を言う事もなく美紀に付き合ってあげる。
「楽しそうだな」
「うん、だって蓮見と一緒だからね」
その言葉に喜んでいると、美紀が何かを見つけたように指をさす。