幼馴染の強さ
「んっ? ……まぁわかった、またな」
蓮見が返事をすると、美紀は笑顔で窓からジャンプして自分の部屋に戻っていった。
またすぐに甘えに来る? 今日だけの特別?
一体何の事だろうと思いながら蓮見は部屋を出てリビングに向かう。
移動途中少し考えて見たがその答えはすぐに出なかったのでいずれ分かるだろうと思ったので深くは考えない事にした。
それよりも今はお腹が空いたので美味しいご飯とお風呂で頭が一杯になっていた。
夜ご飯を食べて部屋に戻ってベッドでくつろいでいると、部屋の扉からではなく窓からヒョイと身軽な美紀が姿を見せる。
「だから、当たり前のように入って来るな。心臓に悪いんだけど?」
「えー、だって声出して呼ぶのめんどくさいだもん」
「んで、今度はどうしたの?」
「そうそう、今日は一緒に寝よ?」
服装は寝間着なのだが、何か違和感があるなと感じる。
確証はない。
だが、何かある気しかないのは何故だろうか……。
探りを入れて見るか考えたがここで面倒事はゴメンなので気付かない振りをする。
「うん。それはいいけど」
「ありがとう」
そう言って美紀が蓮見の隣に来る。
そもままベッドに腰を降ろす。
「ちなみに明日暇だったりする?」
「まぁ用事と言う用事は特にないけど?」
するとモジモジして蓮見の顔をチラチラと見て言う美紀。
「なら明日……その……久しぶりに二人で何処かに遊びに行かない?」
「急にどうしたんだ?」
「まぁ、その何て言うか。ゲームも大事だけどたまには二人でリアルでの思い出も作りたいなって」
蓮見は第三回イベントに向けて明日はレベル上げをしようかと思っていたが、久しぶりの美紀からのお誘いを優先する事にする。
最近はなんだかんだ二人で外にお出かけする機会がなかったので丁度いいと思った。
「あぁ……そうゆう事なら全然構わないけど、どこ行くの?」
「それは明日になってからのお楽しみ」
「わかった」
「よしよし。まぁ夜はまだ長いしって事でマッサージ宜しくね~」
さっき感じた違和感はこれかと蓮見の頭が理解する。
とは言っても、これが日常化されると正直面倒くさいので。
「今日はする、でも明日はしないからな!」
と牽制をいれる蓮見。
「あぁ~そんな事言うんだ。私優しくしてくれる男の人が好きなんだけどな……。もう蓮見とは縁切って好きな人にしてもらおうかなぁ~」
美紀はチラチラと蓮見の顔を見ながら、ベッドに行きうつ伏せて寝る。
今の美紀は明日蓮見とお出かけを名目としたデートができるとわかったので、心に余裕がある。そしてお出かけつまりデートをしている間はエリカの邪魔は入らないわけで。第三回イベントは【深紅の美】ギルドにとっては大事なのだが、やはり美紀とエリカにとっては蓮見をかけた恋愛バトル――ッ否! 【恋愛戦争】もかなり大事なわけで。
「…………」
そんな戦争の景品となっている事を知らない蓮見は美紀に嫌われたくない、だけど毎日は嫌だ……と心の中で葛藤している。
「んで、してくれるの? してくれないの?」
「……だれが……してやる~あぁ~もぉ~わかったよ! します。してあげますとも!」
美紀の言葉に思い悩みながらもやはり幼馴染であり好きになった人の頼みには勝てなかった。
「よろしい。優しい蓮見大好きだよ」
そう言って美紀は微笑んで、枕に顔を埋める。
流石は幼馴染である。
蓮見の行動原理、今の心理状態の殆どを知り尽くしているような気がする。
もはや、小悪魔美紀じゃないノーマル美紀にまで蓮見は逆らうが出来なくなっていた。
そのまま蓮見は美紀の腰にまたがってマッサージを始める。




