窓枠の猫
朝、始発の音で目が覚める。
寝ぼけ眼で台所に行き、朝食を食べる。
食べ終わると、主人を見送りに玄関に行く。
主人が外へ出ると、部屋に戻り、出窓に飛び乗る。
私に手を振り、線路際の小道を歩く主人を窓から眺める。
私は、この窓枠からの風景が好きだ。
外とカーテンに挟まれたこの場所は、朝の日差しで気持ちがいい。
主人が見えなくなったあと、人や犬がこの小道を通っていく。
同じ服を着た若い人達、首に紐を繋がれた犬、のんびり歩く老人。
主人と同じようにこちらに手をふる人が何人かいる。
目があうので挨拶をし、笑顔を眺める。
いつもどおり窓枠のキャンパスを楽しみながら、私は水色の光を浴びながら目を閉じる。
今日は、主人に撫でられ目が覚める。
外から雨の音が響いている。
こんな日は主人はいつもより早く外に出る。
窓枠から見える主人は黒い傘ですぐに隠れてしまう。
水が窓を打つ音を聞きながら私は窓枠から下りる。
始発の音で目が覚めると、主人はまだベットの上にいた。
こんな日は、主人は1日家にいる。
私はベットの上に飛び乗り、布団の中に潜り込む。
主人が起きると窓際の椅子に座り、窓枠の私をなでながら外を眺める。
私にとって、外の世界はこの窓枠の景色が全てだ。