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辛い記憶を消します!

作者: 竹生

【辛い記憶消します!一回一万円】

 ポスターの中央にはゴシック体そうでかでかと書いてあった。

 赤や黄色がふんだんに使われたそのポスターは見る者の目を引き付ける色合いをしていた。

 普段なら見向きもしないそのうさんくさい大手スーパーの広告チラシのようなポスターに男は釘付けになった。

 男には消したい記憶がある。

 つい三か月前男は初めての彼女で一目ぼれだった最愛の彼女に振られた。

 お互いの仕事が忙しくなり、会えない日々が続いたことによる気持ちのすれ違いが原因だった。

 男は彼女のことを忘れられないでいる。

 彼女との幸せな記憶は今や男を過去に縛る鎖でしかなかった。

 前に進むためには彼女のことを忘れるしかないが、どうしても自分ではそれができず、仕事にも支障が出始めていた。

 男はすぐにそのポスターを写真に撮り、ポスターの下に記載された住所へと向かった。


                   #


 「どうぞどうぞおかけになってください」

 住所の場所には五階建てのビルがあった。

 ポスターの施設は三階にあり、そこへ行くと白衣を着ていて腰の曲がった六十代くらいの男性に迎え入れられた。施設はそこそこ広さがあるものの物は机を挟んで向かい合う椅子とその奥にベッドがあるだけだった。男は老人に言われた通りに椅子に腰かけた。

 「して、今日はどのようなご用件で?」

 男は老人へとポスターを見てきたこと、彼女との記憶のことなど自分がここへ来た経緯を話した。

 老人は穏やかな顔で男の話を聴き、男が話終わると「彼女さんの外見の特徴を教えてくれませんか」と男に尋ねた。

 男はなぜそんなことを尋ねるのかと不審に思いながらも、髪の毛はストレートで長さが肩くらいまであること、目の下に黒子があること、とても優しそうな目をしていることを話した。

 老人は男の話を興味深そうに聴き、「なるほど……」と呟き、一人でうんうんと頷き、そして「それではそこのベッドで寝てください」と男に指示した。

 男は釈然としなかったが、老人の指示に従いベッドで仰向けになった。

 老人が男の頭に手を触れると、男は強い眠気に襲われ、あっという間に眠ってしまった。

 

                    #


 気が付くと男は電車の中にいた。

 その日一日の記憶がなかったが、なぜだか気分はよかった。

 家に帰ると財布から一万円抜き取られていることに気づいた。

 しかし、なぜだか損した気分にはならなかった男は記憶がない間何か有意義なことに使ったのだろうと思うことにした。

 翌日、男はいつものように会社へと行く途中に一人の女性に目を奪われた。

 それは目の下にある黒子と肩くらいまであるストレートの髪の毛が印象的な女性だった。

 



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