南の島の悲しい恋の話。
思い出はどこまでも美しく、いつまでも綺麗。
与那国島は晴れの日は少ない。
稀な晴れ日の夜空は星粒が隙間なく散りばめられた満点の星空。
その星空に更に希なるスターダストが疾る。
島の中央に座する巨岩ティンダバナ。
その回廊入口のマングローブのアーチの下で昆虫倶楽部の仲間を待つ。
僕らは大学の昆虫サークル、虫好きの完全無欠の草食系男子の集まり。
与那国島は虫の宝庫。
昆虫倶楽部総勢12名で昆虫採取兼合宿で与那国島を訪れた。
昨晩の真夜中、星屑が降り注ぐ満点の星空の下、昆虫誘き寄せの蜂蜜バケツを
森の中に仕掛けた。
翌朝の5時に12名4班に分かれてバケツ回収を実行中。
レンタカー4台に3人ずつ分乗し与那国島の虫ポイントを走り回る。
僕の班は昆虫倶楽部の副部長の小早川さん、留学生の金さん、僕、伊吹涼太
の構成。
昆虫オタクの僕らは人との会話は苦手なのでそれぞれに思い描く昆虫との出逢
いへの妄想と捕獲時の感動を思い独り言モードで車の中は静寂な空間。
与那国島の真ん中に島のシンボル的にそそり立つ巨大な岩棚ティンバナダの森に
2人が入ってもう20分経過、採種道具等々の見張り番で留守番となった僕はウズ
ウズしながらも2人の帰りを待つしかない。
2人が森に消えて暫くすると小鳥達の囀りが沢山聴こえ始める。
人が居なくなったと思ったのだろうか。
〈チチチチ〉、〈チューンチューン〉、〈キィキィ〉
試しに僕も口で〈チチチチ〉、〈チューンチューン〉と鳴き真似する。
すると答えるように囀りが返ってくる。
頭上を覆うマングローブの木のアーチに色んな種類の小鳥達が集まって来た。
びっくりだ。
小鳥の花でアーチが色艶やかに飾られる。
南国の熱風もこの森の樹々で涼やかな風となり汗だくの身体を心地良く冷やし
てくれる。
待つ事を楽しもうと決めると、森の癒しの中で心が和む。
ふとホテルの飛行機の機内冊子に載っていたこの島の始まり人の伝説を思い出す。
嵐で難破して漂着した男数名と女性1人の物語。
この島に元々住んでいた大きな犬が男達を噛み殺し1人残った女性を伴侶として
過ごす。
数年後に島に立ち寄った漁師に犬は退治され漁師は女性と夫婦となる。
犬の埋葬先を女性は聞き続けるが漁師は教えてくれず年月が経過。
ある日漁師が酔っている時についに埋葬先を聞き出す。
翌日、家から居なくなった女性を漁師が見つけたのは犬を埋葬した場所。
女性はその場所で幸せそうに事切れていた。
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