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落ちこぼれは平和を願う  作者: 黄田 望
2/3

一話 落ちこぼれ冒険者

この度も読みに来てくださりありがとうございます!

どうか最後までお付き合いください。


 大昔、世界は戦いに明け暮れた【地獄ヘル】と呼ばれた最悪の時代があったという。

 1人の男、勇者によって魔王は打ち倒され世界は平和となり今の時代を人は【天国ヘルス】と呼ぶようになり人間は不自由なく暮らせる時代が続いている。

 しかし、世界には当時ヘルの時代から存在している魔物とダンジョンと呼ばれるものが存在しており完全に平和になったという訳ではなかった。

 勇者はすべてのダンジョンと魔物を滅ぼすことは1人では無理だと判断して人間に武術・剣術、そして魔法を教え伝えた。 そうする事によって勇者がいなくなった時代でも世界に再びヘルのような時代が訪れない様に知識を与えた。


 そして時代が過ぎヘルスと呼ばれた平和な時代になっても、魔物とダンジョンは存在している。

 だからダンジョンを攻略する【冒険者】、魔物を討伐する【戦士】という職業がある。

 この二つの職業はクエストのランクによって報酬に差があるのだが、世界に貢献出来ているという事で他のどの職業よりも給料(報酬)を貰える額は他とはケタが違う。


 (まぁ自分の命を張ってるわけだしな。)


 二つの職業は絶対に死なないという保障がない。

 ダンジョンで迷えば救出も脱出も難しい。 強い魔物と出会えば逆に喰われることだってある。

 それでも、昔からこの職業が存在しているという事には誰もが憧れる勇者という人物の影響だろう。

 「俺もいつかはあんな風に」・・そんな風に憧れる人には考えてしまうものだ。


 薄汚れたフードを深く被り、俺はクエストボードに隠れて貼られていた一枚の紙を受付に渡した。


 「はい! 確かに承りました! クエストランクEの薬草採取のクエストですね!」


 眼鏡をかけた受付の女性が明るい声で俺が渡したクエストを呼びあげると周りからクスクスと笑う声が聞こえる。 まぁ無視だが。

 受付の女性はクエストの紙に【承諾】のハンコを押すと名義欄に名前を書くようにペンを渡してきた。

 俺はそれを適当に書き上げクエスト発注所から早足で出た。 後ろから受付の女性が「ご安全に~」と俺に手を振って見送る姿を見て周りで大きな笑い声が響いた。

 ここは世界で誰も知らない人はいない平和の始まりの国【ブレイブダウン】。 世界を救った勇者が築き上げた世界最大都市。 ここには冒険者、戦士、魔法使いなど世界を救う為の力を学び実践する職業が多く存在する国だ。

 この国では物理的な力がすべて。

 弱ければ貧困な生活を過ごす事しか出来ず、強ければより裕福な生活を過ごす事が出来る。

 冒険者、戦士などの力を職業とする仕事には個人にあったランクが付けられる。 A~Eランクがあり、その上がSクラス、更に上に行けばトリプルS、そしてさらに上に行けば名称称号と呼ばれるランクを寄付される。 ランクが低ければ報酬(給料)は少なくなりまともな武器も薬も買う事は出来ず貧しい生活しか過ごす事が出来ない。

 だが、貧しいだけなら人は頑張って生活していける。 金がなければ他の働き口を探せばいいし、衣食住で困っているなら色々な工夫で生活が出来ないこともない。 ただ、最近のこういった職業にはランクでの差別が生まれていた。

 Eランクの人間は冒険者、戦士、魔法使いのどれにも慣れない半端者。 つまり落ちこぼれ扱いされるのだ。 只ダンジョンを探検できないわけでもなく、魔物と戦えない事もなく、魔法を扱えないわけでもない。 ひたすらに簡単なクエストだけしか成功できないと判断されているのだ。

 だからさっきの受付場にいた周りの冒険者や戦士達は俺がほとんど誰も受けない低ランクEのクエストを受けて馬鹿にしたんだ。 「あいつは落ちこぼれだ」とね。


 (まぁ仕事は楽だから別にいいんだけど。)


 国の外は森が広がっており沢山の魔物が生息している。 スライム・ゴブリン・ウルフ、何処にでもいる低レベルの魔物だ。ランクC以上の冒険者や戦士なら簡単に倒す事が出来る。

 森の奥に進み国から離れると大きな大樹が姿を現す。 そこがダンジョンだ。 ダンジョンに近づくにつれて魔物は強くなっていき、ダンジョンの中に入るにはランクA以上でなければ生きて戻れない。


 俺は国からすぐ目の前の森の入口付近でクエスト発注で受けた薬草の採取をしていた。

 採取した薬草は魔法道具【アイテムボックス】の中に入れて保存しておく。 小さい腰につけるポーチではあるが最大20種類の道具を10個ずつしまう事が出来る。 金をかけて買えば最大500以上のアイテムを収納する事ができるボックスがあるのだが、そうなるとランクC以上の給料三年分くらいは覚悟しなくてはならない。


 「うん? うんんんん?」


 今回の薬草は何処にでも生える薬草なのですぐに見つかるはずなのだが、クエストに書かれてあった数を取る前に周りの薬草が無くなってしまっていた。 少し森の中を入ると何か動物の足跡の様なものが残っている。 恐らく腹を空かした猛獣か魔獣辺りが害のない薬草と判断して食べたのだろう。


 「仕方ない。 少し森の中を探索するか。」


 普段なら絶対森の中にまでは入らないだが、一晩の飯代くらいは欲しい。 汚いフードをさらに深く被り直して俺は溜息を吐きながら森の中へ入っていった。

 もう一度言うが森の中にはゴブリンやスライムといった魔物が生息している。 ランクC以上の冒険者や戦士なら簡単に倒せるが俺はランクEの冒険者だ。 森は魔物の庭といってもいい。 自分達のテリトリーに獲物が侵入すればそれを狙うのは自然では必然の出来事。

 

 「・・・・・」

 「グゲゲゲッ!」


 こうやって森に探索に入ってものの数分でゴブリンの群れに襲われる事など珍しくもない。

 さて、どうやって逃げ切ろうか。 完全に周りを囲まれ逃げ道を塞がれ、木の上には矢を構える二体のゴブリン、下で囲っているは剣を構えた五匹のゴブリン。 ゴブリン達も俺の事を様子見しているようだがこのまま待っていても新しい仲間を呼ばれてさらにピンチになりかねない。

 あれこれと逃げる方法を考えていると気が付けばゴブリン達の体がやけに震えている事に気が付いた。

 鋭い口の牙はカチカチと噛み震え、中には腰が抜けたように地面に尻を着けている奴もいる。

 一体何にそんな怯えているのかと思っていると森の奥からガサガサと何かが近づいてくるのがわかった。

 ゴブリン達が怯えている元凶は一定のリズムの足ふみでこちらに近づいてきて徐々に姿が見えてくる。 まず最初に見えたのは黒い長髪、次に綺麗な紅い目がこっちを力強く睨みつける少女の姿だった。

 少女は一定のリズムのままゴブリンを横通り俺と腕を伸ばせば届く辺りまで近づいてきた。


 「去れ」


 一瞬俺が言われたと思ったこの言葉はゴブリン達が脱兎の如く逃げる姿を見て少女が言った言葉がゴブリン達に放った一言だと理解する。

 俺はポカンッとゴブリン達が逃げ出した様子を見ている間も少女は俺の顔をジッと睨んでいた。 見つめているのではなく睨んでいた。


 「あの・・・何か用でしょうか?」


 あまりの気迫につい敬語を使ってしまった。

 少女は顔、胴体、足、そして顔と順番に見ていきようやく一言目を話してくれた。


 「何処にいますか?」

 「・・・はい?」

 

 質問の意図が分からず間抜けな返事を返す。 それが気に入らなかったのか少女はさらに目つきを鋭くして同じ質問を繰り返した。


 「何処にいるかって・・・なにが、ですか?」

 「・・・チッ。 はずれか。」


 少女は期待外れと言わんばかりに溜息を吐くと、体を包む薄黒いマントから剣を抜いて俺の首を狙って斬りつけて来た。 俺は咄嗟に頭を屈めようとした時、剣を抜いた際に一歩少女が近づいた為か少し膨らんだ少女の胸部に顔を埋める形にぶつかってしまった。

 決してワザとではない。 これは不可抗力だ。 だが、男が女性の胸部に顔を埋めるという事は色々とよこしまな誤解を生んでしまう事になるのは必然であり、少女は一瞬何が起きたか分からないといった顔で惚けていたが、自分が今どんな状況なのか理解したのか徐々に顔を赤く染めていく。


 「死ねぇええええええ!」


 案の定、少女は剣を縦に振り下ろしてきた。 それはもう殺意が籠った声を上げて。

 俺は横に飛びギリギリその剣を避ける事が出来たが、少女が振り下ろした先の森の木は空へと飛んでいき道が出来た。 幸か不幸か少女の振り下ろした力で砂煙が舞い俺の姿は少女から隠れている。 その好機を見逃さず、俺はその森からさっきのゴブリン達のように脱兎の如く離脱した。 

 

 何とか逃げ切った俺は国の入口付近でランクB以上の冒険者と戦士が集まって騒いでいる。 何でもいきなり木が空から降って来て怪我人が出たらしい。 しかもその木があったであろう場所には何者かが暴れていた痕跡までありそれが異常であるという話をしていた。

 十中八九で俺が関わっているのは明白ではあるが、話は段々大きな噂へと変わっていっておりダンジョンの魔獣が襲い掛かって来た。 ヘルの再来の予兆など俺が関わっており、しかも森の形を変えたのは1人の少女だと誰も信じてくれなさそうだし、もし信じても面倒な事になりそうだったので俺は何も知らない他人を装って国に戻った。


 「おかえりなさい! 今日もご無事でなによりです!」


 クエスト発注所に戻ると今朝受付していた同じ受付の女性が笑顔で出迎えてくれた。


 「仕事は順調に達成できましたか?」

 「・・・いんや。 ちょっと達成できなかった。」

 

 周りに何人か俺が今朝クエストランクEを受けていたのを見ていた奴がいたのかゲラゲラと笑い罵倒を罵ってきているのが聞こえるが俺は無視してアイテムボックスに入れていた薬草を渡す。


 「ふむふむ、ひーふーみー・・確かに発注に書かれた数と会いませんね。 貴方が依頼されたクエストをこなせないのは珍しいと思うのですが何かありました?」

 「いや、別に。 ただ今日はちょっと厄介ごとに巻き込まれただけだ。」

 「厄介ごと?」


 受付の女性は興味深々といった感じで首を傾げるが、俺もあまりここに居たくないので今手渡す薬草分の報酬だけでも頂けないか話を進める。


 「はい。 それは問題なくできますので少々おまちください! すぐに報酬をご用意してきます!」


 そういって受付の女性は預けた薬草を依頼保管専用のアイテムボックスにしまい込んで報酬金額を持ってくる為奥に戻って行った。 すると、受付の女性がいなくなる途端に周りにいた冒険者の一人がニヤニヤと笑いながら近づいてきた。 さっきもゲラゲラと大笑いしていた大柄の男だ。 背中には歩く度に重さで床がギシギシとなるほど重い斧を背負い、後ろにも斧男ほどではないがそれなりにガタイが大きい男が三人ついている。


 「よぉ~落ちこぼれ。 お前まさかランクEのクエストを達成できなかったのか?」

 「あぁ。 そのまさかさ。」

 「・・・・ブッ、ブハハハハハ!!」


 男は大きな口を盛大に開けて笑い、後ろにいた三人もゲラゲラと大声で笑う。


 「おいおいマジかよ! ランクEのクエストなんて一時間もしない内に達成できて当たり前なんだぞ? それを薬草採集さえできないとかどんだけ役立たずなんだよ! ブハハハ!!」


 斧男はさらに大きな声で笑うが、俺が何も反応しない事に腹が立ったのか大きな足で蹴り飛ばしてきた。 もろに脇を蹴られ床に転がりこんだせいで少し息がつまる。


 「ブハハハ! なんだその無様な姿は! ちょっと強く蹴っただけでそのざまでよくもまぁ冒険者なんて名乗れるよなぁ? 落ちこぼれ野郎。」


 斧男は俺の頭を片手で掴み持ち上げ顔を近づける。


 「よ~く聞け落ちこぼれ。 俺は優しいからお前に良い事を言ってやる。 すぐに冒険者を辞めろ。 お前みたいな役立たずが俺と同じ冒険者だと思われると迷惑で仕方がねぇんだよ。 分かったか?」


 周りの人間はニヤニヤと笑う人、可哀そうだと見る人と等多種多様の眼差しを俺に向けてくるが誰も助けようとはしてこない。 

 俺が周りに視線を向けているのがさらに気に食わなかったのか斧男は俺の頭を掴んだまま床に叩きつけた。 さっきよりもさらに強い力で頭を掴みミシミシと言っているのが分かる。


 「人の親切心を踏みにじるのはよくねぇなおい。 今ここで決めろ。 冒険者を辞めるか。 このまま俺に握り潰されて死ぬか!」


 斧男がさらに掴む力を強めようとした時、さっき報酬を取りに戻った受付の女性が俺と斧男の間に入ってきた。


 「何をしているんですか! ここはクエスト依頼を受け付け報酬を払う受付場です! 喧嘩をする場所ではありません! もしこのまま騒動を起こすのなら称号者に報告しますよ!」


 受付の女性が自分よりも大きな斧男に一歩も引かない姿勢で言うと、斧男は掴んだ手をゆっくりと放した。


 「ブハハハ。 分かった分かった。 悪かったよ。 ちょっとじゃれ合っただけさ。 すぐ出てくよ。 ・・・おい行くぞお前ら。」


 そうして斧男は仲間三人を連れてクエスト発注所を出て行った。 


 「大丈夫ですか!?」

 「はい。 助かりました。」


 受付の女性は手を差し伸べてくれたが俺はそれを首を横に振って断り自分の足で立ち上がる。 

 

 「珍しいですよね。 俺みたいな落ちこぼれにあれほどの上級者がちょっかい出してくるなんて。」


 普段ランクが上の人間は下の人間に陰口を言うだけで話しかけたりするほどの事は興味を持たない者がほとんどだ。 稀にちょっかいを出して自慢したがる者はいるがここまで感情むき出しで向かわれたのは初めての事だ。


 「彼はBランク冒険者の方です。 ただちょっと最近あの試験に落ちてしまい気が荒れているという報告を受けているので恐らくそのせいかと。」

 「なるほど。」


 受付の女性が持っていた報酬が入った袋を受け取ると俺は受付の女性に一礼して受付場を後にした。


 ◆◆◆


 夜のブレイブタウンの中央にある街には沢山の飲食店がある。 ダンジョンから戻って来た冒険者や魔物狩りで疲れた戦士たちが集い騒ぐ飲食街であり居酒屋などもある為色々な職業の大人たちが夜遅くになっても飲み歩きをしている。

 その中で有名・・とは言わないが知る人には知る人気の居酒屋が裏通りに一件店を開いている。 表で開いている店とは少し暗く不気味なのが印象的な木造建築であるが店の目の前に立つと食欲をそそる匂いが漂う。 ガラッと押し引きではなく横にスライドさせる扉を開くとこの店の給仕をしている女性が笑顔で「いらっしゃいませ!」と挨拶をしてくる。

 給仕に席まで案内されるとカウンターと呼ばれる一人席に案内してくれた。


 「ご注文はお決まりですか?」

 「えっと、一番安い定食1つ。」


 給仕はこれまた笑顔で「承りました!」というとカウンターの目の前にあるキッチンで1人モクモクと料理を作っているこの店の店主に今注文したメニューを連絡する。

 店の中は建物から出る不気味な印象とは違い満席近い客が賑わい明るい印象だ。 この店の名前は何処かの遠い国の文字らしく俺には読めないがここに通う客は【おいなり】と呼んでいる。

 注文したものを待っている間、給仕が用意してくれた温かいお茶をすすっていると後ろのテーブル席に座っている冒険者であろう男三人の会話が耳に入って来た。 最初は何処にでもダンジョン内の出来事を話してもりあがっていたのだが、1人の若い冒険者の話が少し気になり耳を澄まして聞く。

 何でもダンジョンの奥、まだ誰も捜索していないエリアからランクA以上の魔獣がダンジョンの外に出たという話だ。 その魔獣の正体はフェンリル。 その昔、魔王が従えた最強の魔獣の一匹で伝えられた伝説の魔獣である。 若い冒険者の仲間二人はその話を聞いて大爆笑した。


 「そんなわけないだろうバカ! そんな恐ろしい魔獣がダンジョンの外にでたなら今頃このブレイブタウンは無事では済まないさ!」

 「いや、確かにそうなんだけどよ。 俺見ちまったんだよ。」

 「? 見たって、まさかフェンリルをか? んなまさか! どうせウルフと見間違えたんだろう!」


 若い冒険者は大きく首を横に振って否定する。


 「違う。 俺が見たのはこれだよ。」


 若い冒険者がポーチ型のアイテムボックスから取り出したのは今朝の朝刊に一面で張られた記事だった。

そこには【ヘルの再来。 紅目の魔人現る!?】と言った内容だった。 だがこれは一つのパーティが目撃しただけで本当にそれが魔人だったのかは未だ確証を得る情報は入っていない。

 若い冒険者の仲間はまた笑って一蹴するが若い冒険者は少し悩んだ様子でコップに残った酒を飲み干す。


 「いや、あれは確かに紅い目だった。 薄黒いフードを体全身に被ってしっかりと顔は見えなかったけど木の影から見えたの二つの紅く光る目。 やっぱりあの噂は本当だったんだ!」


 若い冒険者は給仕に酒を注文してすぐに来た酒を空にする。 仲間の男達は「酔い過ぎだ」と若い冒険者をなだめながら店を後にした。


 「お待たせしました~! こちら豚の肉を油で揚げた料理、トンカツ定食です!」


 俺は目の前に置かれた食欲をそそる定食に手をつけながら男達が言っていた紅目の魔人について1人の少女が頭から離れなかった。 それはゴブリン達を言葉で一蹴して剣を一振りして森の形を変えたあの紅い目をした少女の事だ。 この事を今のうちに受付場で報告するかどうかと悩んでいると普段話す事のない店の店主が包丁を研ぎながら「どう思う?」と話しかけて来た。

 

 「どうとは?」

 「お前さん。 さっきのお客さん達の内容聞いてただろ? お前さんは伝説の魔獣と魔人の話をどう思うんだ?」


 いきなりそんな事を聞かれても困る。 どう思うなんて言われてもれが思う気持ちなど「へぇそうなんだ」くらいしか思わない。 俺には関係のない事で低ランク冒険者には口も出せない話だ。

 店主は研いだ包丁の切れ目具合を確認しながら研いだり見たりを繰り返しながらチラッと俺の返答を待っている。 俺は定食を食べながら自分が男達の話を聞いたうえでの話を渋々する事にした。


 「おそらくフェンリルも魔人も何かを探しにこの国の近くに来たものだと思います。」

 「ほぉ。 そりゃまたどうして。」


 俺が返答の答えを返したと同時に店主は包丁を研ぐのを辞めて料理に戻った。 しかし耳はしっかりと俺の話を聞いていることだけは何となく伝わってくる。


 「もしも今噂されてるヘルの再来で魔物が襲いかかってくるのなら魔人1人、魔獣一匹なのはおかしい話だ。 再来をするのなら魔物の大群を押し寄せてくるとおもうので。 それに――」


 一口、熱々のトンカツを口に入れ噛みながら言おうといた時に1つ引っかかる事を思い出した。

 あの魔人の少女は俺に「何処にいますか?」と聞いてきた。 それは一体何を?  フェンリルを? いや、それなら探す理由がない。 フェンリルがブレイブタウンを潰す為にダンジョンから出たのなら魔人にとって都合がいい話の筈だ。 そのまま放っておけば伝説の魔獣が今のブレイブタウンにいる人間の五割以上を殲滅する事は出来るだろう。 だが、魔人の少女は自分の身に危険にさらしても何かを探している。 なら一体何を探しているのか?


 「・・・あぁ、面倒くさい。」

 

 俺は落ちこぼれの冒険者だ。 魔法も剣術も体術も人並みか少し上達したぐらいしか扱えない低ランク冒険者だ。 そんな人間の予想など当てにはならないが、俺はどうしても1つ確認しておこうと思う事が出来た。 残ったトンカツ定食を急いで食べ上げ代金をカウンターの上に置いて店を出た。

 店を出る際に給仕と店長が「まいど!」という声が聞こえた。

最後まで読んで頂きありがとうございます!

それでは次回もよろしくお願い致します。

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