クリームソーダは、青春の味?
あなたと出会ったのは偶然か、必然か、運命か−−−。
* * *
印象に残る思い出っていうのは、ほんのささいなことから始まると思う。事実、私も普通に歩いていた時に、ある出来事から始まったのだから。
桜舞い散る四月、私は運命的な出会いをした。
相手の名前は、三条 彼方。
入学式の日、突然後ろから勢い良くこっちに向かってくる自転車と衝突して、ケガをして途方に暮れていた私を見てクリームソーダを買ってくれた、その人。なんでクリームソーダ?って疑問に思うかもしれないけど、まあそれは成り行きで(笑)
でも、それ以来私の心には、三条彼方という人が強烈に存在するようになったんだ。
今は5月。
そろそろ高校生活にも慣れて、部活も決まるであろうこの頃…
「よっ、愛香!」
と、話しかけてくるのは、《クリームソーダ》の君、三条彼方である。
偶然にも同じクラスになり、これまた偶然にも隣の席で仲良くなって、今に至るわけで。
「よっ、彼方。どうしたの?」
彼方のテンションが高いのは日常茶飯事でわかりきってるけど、今日は特に高い。
「あのさあ、頼みがあるんだけど」
「彼方が頼みなんて珍しいね。」
「うん、実はさ、今男バスのマネージャー募集中してるんだけど愛香やらねえ?」
…マネージャーって。
そうそう、言い忘れてたけど、彼方はバスケ部所属。中学の時からずっとバスケ部に入っていたらしく、一年生ながら実力はなかなかのもので、顧問の先生や先輩からかなり注目されている。レギュラー入りの可能性も、という声もある。
だから当然のこと、女子からモテるわけで。
少しばかり私はもやもやした気持ちになる。
…ん?まてよ。
マネージャーになれば、仕事は忙しいかもしれないけど、彼方と一緒にいる時間が増えるんじゃないか!
彼方がまた何かを話そうとする前に、私が遮った。
「やるっ!!私、マネージャーするよ!」
即答した私を見て、彼方はぱっと顔を輝かせた。どうやらあんまり期待してなかったみたい。
「マジか〜!助かるよ!」
と言って私の両手をとった。仲が良ければごく普通の動作なのに、いきなりドキッとしてしまう。うう、心臓の音聞こえちゃうよ!
「私で良かったら…」
「大丈夫だって!じゃあ行こうぜ!」
と言って、私を引っ張って行った。
手続きを終わらせ、体育館にみんなが集合する。
すると後ろに一人、女の子が立っているのを見つけた。
「それじゃあ始める前に新しいマネージャーを紹介する。」
その言葉に続き、私は頭を下げた。
「これからマネージャーとして頑張りたいと思います。よろしくお願いします!」
幸いな事に、部員の人達は歓迎してくれたようだった。
あちこちでよろしく、とか、頑張れよ、とか、友好的な声が聞こえてくる。
「じゃあ…茉莉!こいつに色々教えてやれ。」
「ま…り?」
さっき見た女の子が前に出てきた。ここでやっと私はこの人もマネージャーなんだ、と気付いた。
「じゃ〜今度の試合に向けて練習を始める!」
部長の一声で、部員がそれぞれ練習を始める。
茉莉ちゃんと(どうやら同じ一年生みたい)二人この場に取り残された。わずかの間だけど、沈黙が流れた。
「あの…よろしくね」
私は茉莉ちゃんに声をかけた。
茉莉ちゃんは、こっちをちらっと見ただけですぐ顔をそらしてしまった。
「…足手まといにならないでよね」
こうして、忙しい高校生活の日々が始まったのだった。
これは、まだ青春の一ページの始まりに過ぎない。
もとはと言えば、クリームソーダから私の思い出が始まったんだ。
クリームソーダは、青春の味?