風前の灯火
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急に覆いかぶさる様に抱きしめられ、目を白黒させる。
(な、なんで!? 抱きしめられる意味がわからん!
どこかでフラグでも立てたか!?
い、いや、そんな記憶ねぇし...)
これほど、息がかかるほどの距離に女性が近づいてきた経験がなかったためか、顔を真っ赤に染め、頭から湯気が出そうなほど緊張する。
そのまま為す術なく、身動きが取れないまま数十秒が経過する。
すると女の子が何かに納得のあった様子で、うんうんと頷き、ブツブツと何事かをつぶやき始める。
「なるほど、やはりそうか...。いや、まず私のことが見えていた時点で可能性は非常に高かったのだ。
.....うむ、やはり適性が異常に高い。
今回はもしかしたら成功するかもしれん。
試すしかないな。
これ以上失敗したら奴らに示しがつかんし。」
意味のわからないことを語る美少女に戸惑う
「それはそうと。おぬし!名はなんという」
「な、名前? えっと、中城健ですけど...」
「そうか、そうか、なかじょう けん と言うのか。
うむ、良い名前だ!
それでは早速だが始めるとしよう」
「ちょっ、!ちょ待って、
あんたは誰なんだ!? それに、始めるって何を?」
「まあまあ、落ち着け、いまは私の名前なんてどうでもいいだろう?
それに、何を始めるのかって?
ふふっ、そんなの決まっておろう。
転移じゃよ。転移。
お主らでいうとこの異世界転移ってやつじゃ。」
「い、異世界...転移....?」
「そうだ、聞いたことぐらいはあるじゃろ?
なあに、心配することはない。
転移に成功した場合、ある程度のサポートはわたしがしてやる。
まあ、あくまで成功すればだがな。
....じゃがまあ、おぬしならば耐えられると信じておるぞ。」
「な、何をいって、」
「それじゃあ、いくぞ? ほいっと、」
..........グサッ..
「..............え?」
一瞬何が起きたのかわからなかった。
が、次の瞬間
腹部に強烈な痛みが走ったのが分かった。
今まで感じたことのない様な強烈な痛みに意識が飛びそうになる。
突然の死の予感に体が硬直し、次第に体の節々が痙攣し始める。
脳が理解に追いつけない。
だが、ただただ痛いことだけは鮮明に理解できる
(いたい、いたい、いたいいたいいたいいたい痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いたいいたいいたいいたい)
なにかの間違いではないか?
夢であってほしいと願うほどの猛烈な痛みだ。
痛みの正体を確かめるべく腹部を恐る恐る見る。
土手っ腹に、この世のものとは思えない、
どす黒く、煌びやかな、数々の宝石を施したナイフが、背中まで貫通している。
驚愕、恐怖、理解できない感情が溢れ、脳の処理能力がパンクしそうになる。
だが、それだけではない不可解な出来事が起っていることに気がつく。
少しずつ体が透けているのだ。
驚くことに、これだけ深くナイフを腹部に貫かれながら、血は一滴たりとも出ていない。
「すまない、痛いとは思うが、少しの我慢じゃ。
時機にその痛みも消える。
並の人間ならショック死するところなのだが........
まあ、問題はない様だな。
順調に転移が始まっている。」
視界がぼやける。 体に力が入らない。 薄れゆく意識の中で見たものは、何かをやり遂げた様に達成感に満ち溢れている顔をした、美少女であった。
(ちくしょう、なんなんだよ....これ)
次の瞬間、一人の男が日本から忽然と姿を消した。
読んでくれてありがとうございます!
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